季節はすっかり春。桜も終わった。東京の気温は日によっては25度を超え半袖で過ごす日もある。
多分、心地よい春の期間は短くて、あっという間に初夏の陽気に移り変わっていくのだろう。
そんな中、僕の雪山シーズンはまだ終わらない。
もともとウインタースポーツとは無縁の人生なので、登山をしていなければ、桜が終わった時期に雪山に行くなんて発想はなかった。
それが、今では春めいた気候の中で雪解けが進んでいくことを残念に思う自分がいる。
八ヶ岳あたりは随分と雪がなくなってきたようだ。そこで目をつけたのが北アルプス。
北アルプスの南端に位置する乗鞍岳。残雪期であるこの時期に初心者である僕がトライする3,000m峰としてはうってつけの山である。
乗鞍岳を訪れるのは初めてではない。実は思い出深い場所だ。
もう10年ちょっと前になるが、登山に何の興味もなかった時期に、ロードレースに参加するために訪れた。
「乗鞍天空マラソン」という30kmのロードレース。Googleカレンダーをみると、2012年と2014年の2回出場している。開催は6月下旬。
標高1,500m付近をスタートして、乗鞍エコーラインという舗装路をひたすら走って登る。トレイルランニングの要素はゼロで100%ロードを走るという大会だ。
標高2,700mくらいまで登ったら、今度は一気に駆け下りて、標高1,800mの三本滝駐車場がゴールだったと記憶している。
登り1,200m、下り900m、距離30kmというなかなかハードなコース。当時は2時間30分ほどでゴールしたはずだ。1キロ5分の計算。
登りはひたすら心肺機能に負荷をかけ続け、心が折れそうになりながらも何とか走り、下りはもの凄いスピードに恐怖を感じながら、ハムストリングスに大ダメージを与えつつ走ったのを覚えている。
素晴らしいのは、ある程度の標高まで行くと道路の両側が数メートルの雪の壁になっていて、これには感動した。行ったことはないけど、有名な立山の雪の大谷と同じ感じだ。
そんな思い出が残る乗鞍高原。当時のロードレースはあくまで舗装路を標高2,700mあたりまで走っただけで、登山をしたわけでもなければ、当然ピークハントもしていない。
というか、その当時は山に登るというのは自分には無縁のことだったし、乗鞍高原まで行っておきながら、乗鞍岳が3,000m峰であることも知らなかった。
そもそも、特別に鍛えた冒険登山家みたいな人だけでなく、普通の一般人が北アルプスの3,000m峰に当たり前のように登っている事実すら認識していなかった。
そんな僕が10年の時を経て、残雪期の乗鞍岳に登ろうとしているわけだから、時の移ろいには驚かされるばかりである。
というわけで、残雪期の乗鞍岳に三本滝駐車場を起点にして登ることにした。
乗鞍高原にて前泊。スタート地点の三本滝駐車場までわずか10分程度の休暇村というホテルに宿泊。
夕方、到着してチェックイン。部屋からは明日登る予定の乗鞍岳を望むことができる。
最近、日本の3,000m峰を全て登り切るという目標を立てたので、その記念としてのバッジを忘れないよう前日のうちに購入。
3,000m峰は全部で21座。僕が登ったのはまだ富士山、奥穂高岳、涸沢岳の3座のみ。残り18座が楽しみだ。
夕食のブュッフェでは翌日に備えて炭水化物を中心にエネルギー補給。
明日はお昼過ぎまでは晴れ予報。ただし、早朝のうちは風が強いということで、登り始める時間の判断が難しいところだ。
初めて登る残雪期の乗鞍岳。どんな山行になるだろうか。
(次回へ続く)