5月に登った金時山で山の楽しさを知った僕と息子の2人。初心者向けの登山本をいくつか買い込んで次に登る山を探す。

そこで知った言葉が稜線歩きや森林限界。なるほど、山というのは、一定の高度を越えてくると、樹林帯ではなくなるのかということを知り、開けた稜線歩きをしてみたいと思うようになる。

そうして次に登る山として選ばれたのが那須岳だ。登山雑誌に載っていた景色にグッときたのと、都心からのアクセスが良いし、息子の体力でも何とかいけるかなと思ったのが選んだ理由だ。



登山ルートとしてはこんな感じ。峠の茶屋駐車場からスタートして避難小屋を経由してから朝日岳を目指す。途中のトラバース路を抜けて朝日の肩、そして朝日岳の頂上へ。朝日岳登頂後は、再び避難小屋まで戻り、今度は茶臼岳を目指す。茶臼岳に登ってから、帰りはゴールとなるロープウェイ駅まで。あとは楽々、ロープウェイに乗って山を降りるという流れだ。

前回、金時山の時に、思った以上に下りで苦労したことが頭に残っていて、最後の下りにロープウェイを使うことで、できるだけ登りよりも下りの時間を短くしたいという意図でこういうコースにした。

朝早く家を出て東北道を走り那須に到着。ここでびっくりしたのが駐車場の混雑だ。僕としては、それなりに早めに家を出たつもりだし、渋滞にも巻き込まれずに早めに到着したつもりだったが、7時50分の時点で峠の茶屋駐車場はほぼ満車の状態。運よくあと2台くらい残っていたところに滑り込めた感じだったが、この時に、世の中こんなにも山を登っている人がいるんだなということを初めて知った気がする。

後々、インターネットで調べたら、深夜に駐車場に到着して車中泊をしてから登山するのが決して珍しくないことを知り本当にびっくりしたが、その数ヶ月後には自分も当たり前のように車中泊をするようになるとは、この時は思いもよらなかった。





そんなことで用意を済ませてから8時半前に登山スタート。最初の方は樹林帯を歩くが、那須岳の場合はこの時間が非常に短くて、あっという間に森林限界となるのが大きな特徴だ。息子にも、同じような樹林帯が続くよりは、朝日岳や茶臼岳が目の前に広がる開けた感じが好評だったようで、良い感じのテンションで元気に歩を進めていく。



この日はTHE快晴!といった天気で非常に見晴らしが良い反面、暑さもなかなかのもので大量にポケットに忍ばせておいた塩分タブレットをちょこちょこ舐めさせたり、こまめに水分補給をすることにとにかく気をつけながら歩いたので、かなりの回数の小休憩を取りながらの山行となった。

 



避難小屋で少しおやつを食べてから朝日岳方面に向かう。ここからは、5歳の幼児にとってはそれなりに大変な岩場なども待ち受けているので少し不安な部分もあったのだが、行ってみたら杞憂に終わり、息子にとっては手を使って岩を登っていく箇所が一番の楽しみということで、元気にサクサクと登ったり降りたりを繰り返しながら、あっという間に崖沿いのトラバース路まで着いてしまった。



実はこの朝日の肩の少し手前の崖沿いのトラバース路が事前にリサーチした中では、僕たち親子にとっての那須岳の核心部であった。ちなみに、核心部という言葉もこの時に知った。最初は『核心』というからには、何やら地中奥深い話をしているのかななどと、トンチンカンなことを考えたりしたが、、、意味を知ってからは、この何ともいえない響きが気に入っている。

話を戻すと、このトラバース路は、インターネットに転がっている写真や動画などを見ると、かなり道幅が狭くて、崖沿いギリギリを歩いているような感じに見えたので、登山経験がほとんどない僕としては実はかなりビビってしまっていた。実際に行ってみたら、写真で見たほどの恐怖感があるような場所ではなかったのだが。

そんなこともあり、万が一のことがあってはいけないし、息子が恐怖心で先に進めなくなってはいけないということで、事前に考えて準備したのがロープだ。親子登山について調べまくっていたら、子供の恐怖心を和らげる意味でも、ロープで親子をつなぐのが効果的との記事を見つけて、ロープの結び方を動画で丁寧に解説してくれていたので、その動画を何回も見てロープの結び方を幾度となく練習してから当日を迎えたのだ。

山に行く前に息子にも、『危ないところは、ちゃんとパパとロープで繋ぐから安心してね。』という話をして、家で僕と息子を実際にロープで繋いで、歩く練習をしておいたのも良かった。当日も、避難小屋を出てからしばらくして、岩場の手前のところでロープを繋ぎ、2人とも安心して僕らにとっての核心部をクリアすることができた。

ここを抜ければ、すぐに朝日の肩、そしてそこから10分ちょっとで朝日岳の頂上だ。朝日の肩で一休みしたのだが、この日の那須岳はとにかくトンボが多かった。特に朝日の肩付近のトンボは凄まじくて、一度にこんなに大量のトンボを見たのはおそらく初めてだろう。虫好きの息子は、気持ちをトンボに持っていかれて、トンボを捕まえたいとワガママを言い始めたが、今日は虫網もないからねとうまく言い聞かせて朝日岳の頂上を目指す。







朝日岳の頂上からは絶景を拝むことができ、僕も息子も大満足。山頂はそんなに広くないので、記念写真を撮って早めに降りたのだが、5歳くらいの子供を連れていると、色んな人が声をかけてくれる。歳を聞かれて5歳と答えるとびっくり!みたいなパターン。息子も、色んな人から『すごいねー!』と言われて、悪い気分ではない様子。確かに、登山道でも同い年くらいの子供に出会うことは非常に稀だ。そう考えると、よくこの小さな身体で頑張って登っているなぁと改めて感激してしまうし、そんな息子が誇らしく思える。



朝日岳を後にしてからは、来た道を引き返して再び避難小屋へ。ここでランチをとってから次は茶臼岳を目指す。茶臼岳へ登る登山道は足元の岩に気をつけて歩けば特に難しい場所などもなく比較的スムーズに登ることができたと思う。

 





茶臼岳は所々で煙が上がっていたり、歩いていると何とも言えない硫黄臭がしてきたりして、火山というものを身近に感じることができる。息子にとっても、ここまで近くに『火山』というものを意識したのは、おそらく初めてだと思うので、そういう視点でも良い経験になったのではなかろうか。そうして、無事に茶臼岳の頂上に到着し、あとはロープウェイの駅を目指すだけとなる。

茶臼岳からロープウェイまでは正直大したことはないと思っていたが、ここが意外と落とし穴だった。後でザレ場という言葉を知ってから、なるほどあそこがザレ場だったのかと納得したが、この時はまだザレ場という言葉すら知らなかった。



歩いていると、何やら砂混じりの道で非常に滑りやすい。ちゃんとした登山靴を履いていても、気を抜くと滑ってしまいそうになる道に難儀しながら、2人で慎重にロープウェイ駅までを下る。前を歩いていた人が見事に尻もちをつく姿を見たこともあって、2人ともかなり気を引き締めて歩き、何とか転けたりすることもなく無事にロープウェイ駅に到着。

こうして大きなトラブルに見舞われることもなく無事に那須岳登山を終えることができた。今回はとにかく事前に必死にリサーチをしておいたことが功を奏して、安心して登ることができたかなと思う。

今の時代、色んな方が登山道の様子をYouTubeにアップしてくれていたりするので、安全管理責任を負っている僕としては、事前にそういった動画で確実に予習をして臨むことで、事前にイメージをある程度持つこともできるし、どこを気をつけなければならないかなども頭に入れることができる。

僕がこうやってある程度スムーズに登山できているのも、インターネットの情報によるところが本当に大きいなと感じる。僕はYAMAP を使っているが、YAMAPの様々な登山レポートも貴重な情報源。自分が登山する前々日、前日の登山道の状況などを写真で把握することができるし、安全な親子登山を担保するには、やっぱりこういった事前準備は欠かせないなと強く感じる。

今回の那須岳登山は、僕たち2人の経験値からすれば、ちょっと早いかなという感じもしたが、事前準備がしっかりできていたので、結果としてはスムーズだったし、とても充実した時間となった。一つ教訓があるとすれば、駐車場の争奪戦は甘くみてはいけないということだ。登山を始める前は、山に登る人の気持ちが全く理解できないタイプの人間だった僕にとっては、自分が山を登るようになったとはいえ、ここまで多くの人が山に集まるものなのかという素直な驚きがあったのも事実だ。すっかり山にハマってしまった今は、色んなことが理解できるようになったが、この時はただただ驚くばかりという状況であった。