しまんとジャーナル × はたも~ら Vol.11 | しまんとジャーナル by 山沖興産

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しまんとジャーナルでは四万十市で見つけた素敵だと感じたヒト・モノ・コトを中心にアップしていきます。次はアナタのところへ取材させて頂くかもしれません。

 

―プロボクサーを夢見た、時計技師の終わりのない物語。

四万十市の天神橋アーケードにはチャレンジショップという高知県のサポートシステムがあります。大きなリスクを抱えることなく、月額1万円以内で自分のお店を持つことが出来る画期的な取り組みです。田中啓(たなか けい)さんは昨年の7月より以前からの念願であった地元での”腕時計の修理・オーバーホール専門店”をオープンさせました。「アンティークウォッチを愛する人々にとって、機械式時計とは格好の嗜好品です。時計の裏蓋に耳を澄ますと、デジタルには持ちえない味わいやロマンがあります。」プロボクサーを夢見た時計師”ケイ タナカ”さんは照れながら話してくれます。アンティークウォッチの魅力を伝える伝道師として田中さんのチャレンジはまだ始まったばかりです。

 

▼一級時計技能士の資格を持つ田中啓(たなか けい)さん。

 

チャレンジショップで起こった、想定外のメリット。

 

―田中さんはアンティークウォッチの修理をご専門でやってるんですか。
 

「そうですね、修理専門です。もともと母が古津賀でカラオケ喫茶やってたんで、そこの2階でちょっとやってたんですけど、なかなか自分一人では無理だったんです。

そこで“はたも~ら”の上野君と話してて、それやったらチャレンジショップやってみん?みたいな話になって、これええかもと思ってチャレンジしたんです。チャレンジショップは高知新聞の記事に掲載してくれるんですよ、それが1年前なんですけど南国とか高知市内から今でも反響があるんです。僕らの仕事は地元だけで食べるわけではなくて、幅広く取れるような仕事なので。それに”はたも~ら”年4回がボディーブローの様にジワジワ効いてくる感じです。この2つはチャレンジショップの大きなメリットだと思いますね。」

 

―チャレンジショップという事で高知新聞が取り上げてくれるんですか。

 

「それは太田さんが高知新聞社に言ってくれてるみたいです() チャレンジショップは県が運営しているので、県を盛り上げるために新しいヒトが来たら高知新聞も取り上げてくれて、歴代のヒトはみんな出てると思いますね。やっぱり部数が多いので見て頂く機会も多いんだと思います。」

 

▼1950年代の手巻き時計スミス、本物は次世代へと受け継がれていく。

 

 中学時代からプロボクサーになる事を夢見ていた。

 

―田中さんはどんな学生だったんですか。

 

「僕は昔からプロボクサーになりたかったんです。中学校の頃に田舎でボクシングやりたいとかいうたらバカにされるっていうかね、何言ってんだみたいな感じやったがです。今でも覚えてるけど中学の担任にチラッとそんな事を言ったら、すごいバカにされるみたいな感じになって。これは言ってはダメだなと考えて、もう言わないで勝手になんとかしようと思って、基本就職するつもりだったから高校も工業高校に行きました。」

 

ブロデビューを目前に控えて、まさかの網膜剥離。

 

―それで高校を卒業してから、ボクサーの道にそのまま進んだんですか。

 

「まずは就職したんですけど、ボクシングに専念するために働いていた職場をそのあと退職しました。協栄ジムに所属していて当時、既にスター選手だった鬼塚さんや新人王の竹原さんも在籍していて協栄ジムの黄金時代なんですよ。ものすごい勢いのある時期で、その後ロシアから後の世界チャンピオンになる勇利アルバチャコフとかも来て、ものすごい盛り上がってる時でしたね。その時期の協栄ジムに携われた時間というのは今となってはすごい思い出ですけどね。

そこで気にかけてもらって1年後にライセンス取ってデビュー戦が決まってたんですけど、目の故障で網膜剥離になって断念せざるを得なくなったんです。それはもうほんと当時のことを思い出しても悔しくて、うーん...。なんか心にぽっかり穴が空いたような状態でしたね。」

 

 

挫折を乗り越えて、機械時計の世界に魅了される。

 

―時計との出会いはその後の話ですか。

 

「そうです。それで心のキズが癒えたぐらいに、はじめて時計の仕事を始めました。全然その時は時計が好きとかではなくて、ジュエリーを売ってるようなところに就職したんですよ。入った会社で修理の方に行かせてもらったという感じですね。そしたら時計というか機械にハマっていって面白いなあって思うようになっていきました。」

 

―時計にハマっていった理由は何だったんですか。

 

「世の中には色んな時計がありますよね、それはもう庶民には手の届かない高級時計がいっぱいなんですよ。だけど時計が好きで、その人達よりも時計に詳しくなりたいと思ったんです。その人達は、お金があって時計を眺めることは出来るけど、機械に触れることは出来ない。時計の魅力って機械なんですよ。スイスで作られたキレイな時計を自分の手でこうね、修理やオーバーホールが出来るようになるっていうのは、この仕事の醍醐味ですね。」

 

有名ブランドの研修で、貴重な経験を得る。

 

―どうやって技術を習得していったんですか。

 

「夜間の時計学校がその頃発足して、夜間の部に1年間通って、そっから時計修理の方に入っていくような感じですね。それまでは下働きなんで時計修理よりも、電池交換とか簡単なことばっかりだったんです。学校に通ってからは、専門にやるようになりました。段々とカルティエとか有名ブランドの研修に行かしてもらって、時計の勉強にどんどんのめり込んでいきました。

 

▼つい先日も高知市内のお客様から修理の依頼があったパテックフィリップ。

 

 

パテックフィリップはどうして”最上の時計”と呼ばれるのか。

 

―機械の一番すごいブランドはどこですか?

 

パテックフィリップというブランドがあるんですけど、ここはもう名実共におそらく頂点ですね。時計界のピラミッドがあって、歴史とか商品とかトータルで考えても頂点です。

 

ちょっと時計を知ってくると、高い時計はいっぱいあるんですよ。パテックよりも高い時計、それに匹敵する時計はいくらでもあるんです。だけどそれは、資金源があって単発的に、高価な物を作ってるだけなんです。それはあくまでも資金があるから作ってるだけで、それは歴史じゃないんです。時計っていうのは歴史なんで、パテックは今の時計の理念を最近やり出したんじゃないんです。1839年から現在まで創業当時から王侯貴族の為に作っている時計ブランドなんです。それを今でも継承出来てるのはパテックだけなんです。」

 

時計の3大ブランドがあって、パテック、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ・ピゲ。スイスの3大時計なんですけど、この3つは時計界の中でも名実共にまずトップ。そこは技術力も、商品力も、歴史もパテックに匹敵するようなブランドですね。」

 

▼セレクトショップを中心に人気再燃中のカルティエ/マストタンク。

 

 

カルティエは時計ブランドとしても一流なのか。

 

―時計好きからすると”ジュエリーウォッチ”というのは、どうなんですか。

 

勘違いしている方が多いんですけど“宝飾メーカーだから良くない”っていうのは間違いですね。例えば、カルティエは時計ブランドとしても一流です。所説ありますが、腕時計を最初に作ったのがカルティエなんですね。それまでは懐中時計にベルトを着けたような感じだったんです。それ以降に腕時計っていう概念が定着していくんです。時計の機械自体は少し前までは他社が製造したクオリティの高いものを使ってたんですけど、現在では機械も自社開発作してますから。」

 

▼現行のサブマリーナ、そこに在るだけで力強い存在感がある。

 

 

不動の人気ブランド、ロレックスの魅力とは。

 

―人気ブラントの代名詞と言えば何といってもロレックスですよね、機械はどうですか。

 

「ロレックスはスイスのジュネーブで1905年に創業なんで歴史的にはまだ新しいんです。だけど、市場の人気を背景にどこにも頼らなくてもやっていけるブランドなんで優れてますね。実際に機械も物凄くいいですし、技術力もそれこそトップです。時計の特許をスイスで発表するみたいですけど、特許の数が一番多いのがロレックスらしいです。

ロレックスとパテックフィリップはよその資金源に頼らなくても独自にやっていけてるブランドなんで、やっぱりこの二大ブランドはすごいと思います。」

 

 8月に天神橋商店街の“ラーメンハウス神戸”跡地にオープン予定。

 

―最後に田中さんのこれからの目標を聞かせて下さい。

 

将来の目標は、いわゆるアンティークショップ専門店なんですよ。アンティークの世界は、メーカーも及ばないような世界になってきて、本当に腕の立つ時計師しか足を踏み入れないような領域になってくるんです。というのは1800年代の時計、いわゆる懐中時計がメインになってくるんです。それを修理出来るのは、ほんとに限られた数少ない店舗しかありません。厳密に言うと、ある程度の部品も作れないとダメというレベルになってくるんですよね。

 

だから、その歯車を作ってもらえるようなとこも手配している最中で先述の上野君が一緒になって企画を見守って頂いてるんですけど。

いろんなハードルがあるんで一緒になって進めているような状態ですね。いわゆる時計の修理の要の巻き芯とか、天真(てんしん)ていうのは自分で作れるようになってるんで、その機材も入れて懐中時計をやっていくには必須になってくるんです。新店舗が8月に出来たときには懐中時計でコレはと思うのを並べて売っていきたいと思ってます。

僕は時計のフェイスよりも時計の機械から入っていくんで、この機械はえいなぁ、これは抜群だなと思うのを、販売出来るように準備してるような状態ですね。

なかなかお金が無いんでそこは大変なんですけどね(笑)」

 

 

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