メディア・リテラシーの授業と「盲導犬の訓練」という教材を扱っています。扱っている内容は今日的です。いろいろな文章に出会わせたいものです。

新聞記事や「盲導犬の訓練」等を通して福祉を考える
                                                            船橋市立T小学校      山岡 寛樹
一 教材について
(1)教材選択の視点
 現行の指導要領の実施に伴い『総合的な学習の時間』の授業例として、福祉に関する実践や障害者との共生に関わる実践が多く出されています。自分のことで精一杯な三年生の子どもたちには、体の不自由な人に対する配慮がきちんとできない現状があります。他の人の立場からものをみたり考えたりできれば、子どもたち同士のトラブルを回避したり自主的に解決できたりできるはずです。ただ「他の人の立場を尊重しなさい」と言っても、無理があります。いろいろな文学作品や説明文・新聞記事などを読み、みんなと話し合いをすることを通して、徐々に他の立場から考えることができていくのです。話し合いを通してじっくりと考える中で、情報を鵜呑みにしない子ども・情報にだまされ振り回されることのない子どもをどう育てるか、説明文の読みの授業と連携しながら文字情報を中心とするメディア・リテラシーの教育に力を入れるべき時です。福祉に関わる分野では、国家が責任を負うべき部分を、ボランティアに任せる傾向も強くなっているようで気になります。
 目の不自由な人の目代わりになり、自立を保障する盲導犬に対する理解は徐々に深まっています。しかし、どこでも自由に盲導犬を連れて歩ける状況ではまだないようです。もっと理解が必要なようです。介助犬に至っては、評価はバラバラです。ペット・愛玩物としての犬とは違った人のために働いている犬への理解が急がれます。盲導犬など人を介助する動物に対する理解を深め、接し方を含めたコンセンサスが今社会全体に求められています。障害が今の自分の生活と分離した問題ではないことを新聞記事などをきっかけとして考えてもらうことを考えに入れながら、生の資料として新聞記事を採り入れた「福祉の授業」を考えてみました。
(2)題材としての価値ー現実認識に関わって
 主教材『盲導犬の訓練』(東京書籍三年)は、盲導犬がどのようにして作られるのか、盲導犬にするための訓練はどういうものかを説明しています。残念ながら盲導犬を使って生活する人の思いは書かれていません。ですから、利用者の視点から、福祉を考えて行くのは無理があります。それでも、苦労して作られる盲導犬のことを理解する過程で目の不自由な人のことを考えることはできます。多様な視点から物事を見たり考えたりする方法を知らせることが大切ですので、関連する新聞記事を扱いながら、実践を進めることにしました。
 初めに「千葉県民だより」(282号)『バリアフリーで、安心して暮らせるまちに』を読み、障害のある人やお年寄りにとっての便利な生活について考えました。次に、朝日新聞天声人語(2001.9.4)を読み、テレビに出てくるテロプ・字幕について考えました。障害が外から見えにくい耳が不自由な人に対する誤解は、いろいろな場面にあると聞きます。目の不自由な人は、杖を使ったり、強めのサングラスをしていて傍目からみて分かります。また分かりやすくして、安全を保障しようともしています。しかし、聴覚障害にはそうしたわかりやすさがないのです。電車の車中やビルのエスカレーターの所で、繰り返し流されるテープでの安全の案内など、気になることがあります。それらについても、考えていきたいと思います。
 物語の読み聞かせをしながら、障害を持つ子どもたちについて考えさせる方法もあります。先天性四肢障害児の父母の会との共同制作の『さっちゃんのまほうのて』(たばたせいいち・偕成社)や重度の障害児の豊かな心の世界を描いた『だれもしらない』(灰谷健二郎)などを通して考えさせることも可能です。心情に訴える文学作品を扱い、子どもたちの理解や感情を高めたり深めたりすることができます。いろいろな人と自然なコミュニケーションをとれるようにしていくことが大切です。そうしたことを考える契機を多方面に作りたいものです。

二 教材化にあたって
どう教材化するか
 初めから『盲導犬の訓練』の説明文を読み始めるのではなく、障害があるとどういう点で不便で日常生活に困るのかを広い視点から考えることから始めることにしました。「情報化社会」が叫ばれ、子どもたちは大人たちとほぼ同時に世界中の情報に晒されています。情報の洪水の中で、分からないことによる不安・理解不能による不安を感じています。論理の筋道をつけて考える方法を学び、話し合っていければ、子どもたちの不安は少しずつ解かれていくものと考えらます。そのために新聞などいろいろな文章を教材化し、話し合い読み合っていくことにしました。
(1)この教材で育てるメディア・リテラシー
  ・新聞のコラム欄を読むと、いろいろな視点から考えが出せることを学ぶ。
 ・新聞記事を自分の問題として考える習慣を身につける。
 ・友達と話し合う中で、多様な視点から考えることが可能だということに気づく。
(2)子どもの活動の予想・留意点など
 ・漢字や用語が難しいために、そこで止まってしまうことが考えられるので、分かる範囲で話し合いをしてい  くこと・友達の発言を聞きながら考えることの大切さを学ぶように促す。
 ・コラム欄の記事は、書き手の主張がはっきりしていることが多いので、その考え方に対して自分はどう思う  のかを常に考えさせるようにする。
(3)教科書との関係
 障害者の問題やそれに関わる説明文が教科書に載るようになってきました。『盲導犬の訓練』(吉原順平・東京書籍三年)の他、『手と心で読む』(大橋健甫・光村図書四年)、『手話の世界』(清水康行・日本書籍六年)などです。点字や手話に関する紹介記事はいろいろな新聞や雑誌によく出ています。

三 指導計画
○指導のねらい
 新聞記事やコラム欄の記事四つと教科書教材一つの組み合わせです。一見すると、無関係の記事や説明文のようですが、障害者に対する福祉という事ではつながりがあります。(2001年小室小学校の三年生での実践です)
①『バリアフリーで、安心して暮らせるまちに』「ちば県民だより」9月号(282号)
②「天声人語」9月4日(テレビの字幕のこと)
③「ひと 薬害・SJS患者として薬害根絶を訴える 野内良美さん」(コスモシンの副作用で途中失明した少女)
④『盲導犬の訓練』
⑤養護学校児童との交流
⑥「盲導犬ロボット産声」(朝日新聞10月9日)