入門期の読みの指導では、主部・述部を意識的に指導することが求められます。それぞれの学年はじめにも、主部・述部の指導をしておくと良いでしょう。主部・述部というと分りにくいので、主部(文の「頭」)・述部(文の「体」)ト比喩的に指導しておくのが便利です。主部は、判断の対象・述部は判断の内容とおさえるることができます。

  『なにがかくれているのでしょう』の実践を通して
 写真を中心とする説明文の練習的文章です。入門期の文章ですので、全て平仮名の分かち書きです。「バラの木に、何かいます。何が隠れているのでしょう。/シャクトリ虫が、隠れているのです。/枯れ葉の中に、何かいます。何が隠れているのでしょう。/コノハチョウが、隠れているのです。/羽根を閉じると、枯れ葉とそっくりになります。/上手に隠れることのできる虫は、他にもいろいろいます」という説明文です。主語省略があります。何についてどう説明しているかを確実に読み取らせるためには、省略された主語を意識して補うことが大切になります。
 「バラの木に、何かいます」の文分析は難しいので、避けました。バラの木について知っていることやバラの木で見かけたものについてどんどん発表してもらいました。

「刺がある」

「葉っぱがアサガオの芽みたい」

「茎の下の方に毛が生えている」

とか出てきました。

見たものとしては「チョウチョ」

「毛虫」

「バッタ」

「アリ」

「はち」

「スズメバチ」

「テントウムシ」

「アブラムシ」などが出てきました。

そこから、「アリがアブラムシの体をちょんちょんすると甘い蜜が出て、アリがもらう」

「テントウムシはアブラムシを食べる」

「アリはテントウムシをやっつける」

などという食う食われるの関係を言いはじめる男子が数人出てきました。「なにが、かくれているのでしょう」の部分を教科書の写真を使いながら話し合った後に、これは問題の文だと言うことが出てきました。

答えは「しゃくとりむしが、かくれているのです」とすぐ出てきました。

問題は「ばらのきに、なにかいます」の文です。

「ヒント」だという意見が出てきました。

問題の文と一緒にしたいのだけれどもと聞くと、

おとなしい女の子が「バラの木になにがかくれているのでしょう」とつなげました。

意識していなくても、『けむりのきしゃ』の学習の中で「煙突から」という場所を表す言葉が結構自由に文の中に入ったり出たりすることが記憶に残っていたのでしょう。
 話し合った後で、「はねをとじると、かれはとそっくりになります」の部分を点の前で二つの文に分けました。

コノハチョウについて話し合った後なので、

羽を閉じるのはコノハチョウ、

枯れ葉とそっくりになるのはコノハチョウ

と、主語を補うことがすんなりとできました。

☆基本文型をしっかり教えよう
 文は判断です。文を作った人の考えがその文に入っています。ある対象のどの部分を切り取り、どう考えたのか、どう判断したのかが文という形になります。判断の対象である主部(主語のある部分)と判断内容を示す述部を明確に意識することが大切です。私は、次の四つの文を基本文型として考えています。

①ナニガ・ドウスル文(動詞文)
  犬が、川を泳ぐ。(吠える・走る・じゃれるといった側面で考えていない)

②ナニガ・ドンナダ文(形容詞文・形容動詞文)
  (その)犬は、おとなしい。(かわいい・やさしいという側面で考えていない)
  (その)犬は、真っ黒だ。(白や茶でない)

③ナニガ・ナンダ文  (名詞文)
  犬は、動物だ。   (純粋に生き物と考えペットだとか用途とかは考えていない)

④ナニガ・アル/ナイ文(存在を示す文)
    犬が、いる。
 児言研では構文論を大切にしています。判断を表している文を分析する力が大切です。文を構造的に考える習慣が、論理的な思考力を高めていきます。文分析としては、次の三次分析くらいまでできれば良いと考えています。

 ①ナニガ                   ドウスル
                    ②ナニヲ              ドウスル
ドンナ    ナニガ          ③ドンナ  ナニヲ    ドンナニ   ドウスル
大きな   犬が、           広い   川を     必死に   泳ぐ。
※時、所は括弧に入れておくか、外に出してしまうと分析が楽になります。