いくつかの自動車の用途による作りの違いをまとめた説明文です。船を題材とした説明文もあります。同じパターンで説明していますが、それが分かりやすいかというとそうでもないのです。用途が仕事だったり、説明が簡潔すぎて納得がいかないまま説明が終わったりしています。一年生の能力を無視しているようでもあります。

   説明文を楽しく豊かに読もう

一、説明文の授業づくり
 説明文の読みで大切なのは、自分の体験や知識を思い出し、書かれていることを比べながら読むことです。書かれていることを具体化しながら読むことが、楽しく豊かに確実に読むことの条件になります。
 子どもたちに豊かな読みをさせるために、教師の教材分析は欠かせません。教材文をそのものの分析と、題材についての研究です。それから、指導計画を立てます。何時間でやるのか、それぞれの時間に何を指導し何を考えさせるのかを決めます。

二、教材研究の仕方
①まず全文を教師が全力で読む
・一文ずつ写し、自分反応を書く
・分かったこと・疑問を区別する
・説明の仕方に納得できるか?
・結論先の「頭括型」か結論が後の「尾括型」か、「複合型」か?
・例示・理由と、説明・結論の出し方に論理的な矛盾がないか?
・抽象化の段階で無理な一般化をしていないか?
・子どもたちにとっての難易度は?
・学習活動はどうするか?
・子どもたちの読みを予測
②題材研究
 題材研究は、説明文指導の要です。題材について調べたり、他の本を読むことで、筆者がどういう視点から説明しているのかがはっきりと分かります。書き手はある対象を書き手の視点から切り取り、読み手を想定しながら説明していきます。何を、どう説明していくのかの選択の過程に書き手の世界観=物の見方・考え方が反映してきます。その部分まで含めて読んでいくのです。
※時間がないという人は、百科事典が役に立ちます。新書本は初心者にも分かりやすく便利です。子ども用の科学絵本も効果的です。
③読みの切り口・窓口として記号
・分かったこと/思ったこと/疑問(多分こうだろう)/知っていたこと/前との関係付け/予想/様子/感想意見/コトバ/書き手につて(筆者)/語り手/論運び
※記号はあまり多くない方が良いのですが、読みの視点作りとして必要と思われるものを随時加えるようにします。文章によって違いがあります。どの視点から読ませるように指示した方が楽に読めるのかを考えことが大切になります。
④文法的な視点で読む
(ア)主語と述語の関係は理解し易くなっているか確認していく
(イ)指示語の中身を入れて文を書き直す
(ウ)論の展開を整理していく
(エ)詳しくしている言葉に着目する

三、『じどう車くらべ』の分析
 『じどう車くらべ』(光村図書)は、バスや乗用車・トラック・クレーン車の仕事と作りについて説明しています。本文は9つの形式段落、13文からなっています。導入部分で「いろいろな自動車が、道路を走っています」という明快な場面提示で始まり、「それぞれの自動車は、どんな仕事をしていますか」「そのために、どんな作りになっていますか」と以下の説明のパターンを示して課題提示としています。課題提示文には主語が省略されています。
 説明の展開のときに、「バスとじょうよう車は、~」「トラックは、~」「クレーン車は、~」と主語が明確に示されています。述語は「~しごとをしています」となっていて文末も統一されています。
「そのために、~つくってあります。~あります」「そのために、~になっています。~ついています」「そのために、~するように、つくってあります。~あしが、ついています」と、作りの理由とその補足が書かれています。説明の対象である主部(主語のある部分)と、説明の内容である述部(述語のある部分)の照応が子どもたちにわかり易いかが問題となります。説明のパターンが「~しごとをしています。そのために、~」となっているので、わかり易いのですが、個々の主語・述語の論理関係になると、難しい所があります。そうした所に、子どもたちは読み取りの時に困難を感じるのです。
※ 男子児童は車が好きな子が多いので、特殊な車についても名前や用途をよく知っている子がいます。用途による車の作りを問題にしている説明文ですので、タイヤのことやエンジンのこと特殊な操作の仕方や動かし方については触れられていません。知っていることを発表させることでその子に存在感を味合わせたい所です。
 用語と論理関係についてみると、用途については「仕事」という言葉で置き換えて説明できますが、作りの方については、「そのために~」以下の説明は理由の述べ方としては不十分な部分があります。「広い荷台になっています」(広い荷台だと、荷物の積み下ろしが楽でたくさん積めるという理由にはならない。現在は荷室が別作りになっているものが多い)。「重い荷物を乗せるトラックには、タイヤがたくさんついています」(タイヤをたくさん付けている理由は述べきれていない)。クレーン車では、つり上げることだけが述べられていますが、動かす仕事という説明でないために、「丈夫な腕が、伸びたり動いたりする」訳がつかめません。「つり上げて、動かす」とすると明確に説明できます。
 バスとクレーン車については「~ように、~がついています(あります)」と説明しています。こうした説明の仕方はしっかりと身につけさせたいところです。
(ア)指示語の中身を入れて文を書き直す(論理が見えてくる)
 「いろいろなじどう車が、どうろをはしっています。それぞれ(いろいろなじどう車・道路を走っている自動車)のじどう車は、どんなしごとをしていますか」
「その(仕事・仕事をするため)ために、どんなつくりになっていますか」
「その(人を乗せて運ぶ仕事をする)ため、ざせきのところが、ひろくつくってあります」
「その(荷物を運ぶ仕事をする)ために、うんてんせきのほかは、ひろいにだいになっています」
「その(重いものをつり上げる仕事をする)ために、じょうぶなうでが、のびたりうごいたりするように、つくってあります」
 このように、指示語で示されている中身を補いがら読み進めます。
(イ)論の展開を整理していく
 作りと、その理由を考えることが大切です。
 バス(観光バス)の例では、「そとのけしきがよくみえるように、おおきなまどがたくさんあります」とあります。大きな窓のある理由は、「外の景色をよく見えるようにするため」ということです。ここを「大きなまどがたくさんあるのは、そとのけしきがよくみえるようにするためです」と作りとその理由を改めて考えさせる活動を組むことも重要になります。
 トラックでは、「タイヤがたくさんついているのは、おもいにもつをのせるためです」となります。
 クレーン車では、「しっかりしたあしがついているのは、車たいがかたむかないようにするためです」と、理由が明確になるようにまとめていくのです。
(ウ)詳しくしている言葉(修飾語・節)に着目する
 詳しくすることばが多い文章は子どもたちがつまずきやすい文章になります。修飾部分(修飾語・修飾句・修飾節)を述部に置き換えることで、理解が進みます。「おもいにもつをのせるトラック」という表現を「トラックは、重い荷物をのせる」というように詳しくされている言葉を主語として文を作っていくのです。こうすることで、文の中に込められている考え方がはっきりと見えてきます。クレーン車の腕は丈夫につくられています。足もしっかりしたものなのです。こうしたことを話し合いがすんだ後に、簡単に触れることで、子どもたちの論理的思考力が高まり、認識が深まります。
 逆に、「車たいがかたむかないように」という部分では、「クレーン車の車体が」と補いながら読ませるようにすると、しっかりと論理関係が読めるようになります。

四、指導計画の立て方
①指導にかけられる時間を考える
(ア)年間計画の中で考える
(イ)子どもの実態に合わせる
(ウ)指導したいことを明確にする
②具体的な指導目標を設定する
(ア)その教材のみの指導目標を設定する
(イ)中心になる目標を設定する
(ウ)その目標を達成するために必要なことを考える
※(ウ)の目標を考えることで、各立ち止まりの時間の目標設定ができます。
(エ)全体の指導目標を整理する
・目標間の関連性について考える
・目標設定は 
  A 教材の内容に関わる目標(論  展開・認識内容)
  B言語事項に関わる目標(おさえ  るべき表現・指導すべきこと)
 の二つの側面から考える
③各時の指導目標や学習活動の大よそを考える
・おさえるべき表現
・指導したい言語事項(順番を示すことば/述べ方の確信度を示すことば(断定・推量)/上位概念/困難語句/関連語彙
・考えさせたいこと
・前時とのつなぎをどうするか
・ひとり読みを指示をどうするか
  書き込み記号・観点を指示
・話し合いのし方を考える
  形式段落毎に話し合うと楽
・まとめをどうするのか
  音読・表現読みにするのか?
  まとめの感想にするのか?
  小見出しにするのか?
  表にするのか?
  要点まとめにするの?

五、立ち止まりの設定の仕方
 一読総合法は、全文を読まずに授業を進めていきます。どこで立ち止まり学習していくのかで、授業内容が変化していきます。立ち止まり箇所の設定はとて重要です。目安は、次の通りです。
①文章の構成上切りの良いところ
 ここが最も基本的なところです。
②子どもの状況・思考範囲として無理がないこと
 ここを無視すると授業がきつくなります。
③使える指導時間と指導内容から
 立ち止まりを長くすると、指導内容は厳選されていきます。

六、『じどう車くらべ』の実践例
⑴ 導入としての『題名読み』の例
 教材と出会いは、説明文の題名から始まります。子どもたちが説明されている対象に対する関心や現在の知識量が測れます。教師としては学習計画の進め方の指針ともなります。以下教師をT、子どもをCか仮名の漢字で表記していきます。 
 第一時間目です。教師が『じどう車くらべ』と板書します。子どもたちはそれを読みます。つぶやきがすぐに出るのが低学年の特徴です。
C 『じどう車くらべ』と言えば、トラックの方が大きい。
T トラックは、何より大きいの?
C 車より大きい。
C プリウスより大きい。
C ワゴンRより大きい。
T 自分のうちの乗用車より大きいということね。
C 二階建てのバスもある。
C 乗ったことがある。
C 二階建ての新幹線に乗ったことがあるよ。(「二階建て」に反応)
T それは自動車ですか?
C 違います。電車です。
C 二階建てのバスは、観光バスよりも大きい。
C 観光バスは、葛西臨海公園に行った時に乗ったよ。
※子どもたちの発言は際限なくなります。
T じどう車くらべというと、二階建てバスは観光バスよりも大きい。トラックは、ワゴンRやプリウスより大きいということですね。他には?
※比べる基準がまちまちなので子どもたちからは出てこないのです。そこで本時部分の読みに入ります。プリントを配ります。
T 名前を書いたら、分かったこと、知っていること、思ったこと、感想意見など何でも良いから書いて下さい。
C ひとり読み(七~八分)その後各自の速さで音読、そして、指名音読後
T 思ったこと、分かったこと、知っていたさと何でも良いですよ。
C パトカーは、早く行きたい人が早く行けるようになっている。
T 「パトカーは、速く走れる」と板書し、パトカーは、早く行きたい人を送る車なの?
C 悪い人を逮捕する車
T 悪い人を捕まえる車だよね。
C 事件の時に急いで行くんだよ。
T だから、速く走れるというわけね。これは、知っていることだね。
C 救急車は、急いで赤いのをつけている時は赤信号でも止まらない。
T どんな時に急いでいるの?
C 人がね、病気の時。
C 交通事故の時。何で飛ばすかというと、人が怪我してて死んじゃうから。
T 怪我人を運ぶ時ね。「救急車は、怪我した人を運ぶ時、赤信号でも止まらない」」
C ウーウーってサイレンを鳴らしているよ。その時には、赤信号でも止まらない。鳴らしていない時は、止まるよ。
※子どもたちからランダムにいろいろな自動車がどう使われるのかについて話し合いました。そのあとで、教科書の挿絵と確認し合いました。
第二時間目(バスの例)
T 昨日、知っている自動車について話してもらったんだよね。仕事の方は分かったんだけれど、作りの方がよく分かりませんでしたね。作りで分かったのは?
C トラック・救急車
T トラックは?
C 荷台がある。
T 救急車は?
C 人を載せる担架みたいのがある。下に車がついていて動くの。伸び縮みするよ。
C 中は病院みたいなの。
T 今日は、昨日の続きなの。どんな作りになっているか分かると良いね。プリントを配ると、何の車かすぐに分かります。
※前時の学習と関連づけます。仕事と、そのための作りを読み取る意欲が換気されればそれで良いのです。子どもたちのひとり読みが、車の用途と作りに向くようになります。
T 話し合いに入ります。
C バスに、人がいっぱい乗る。
C 言われちゃった。
C バスは乗用車より窓が大きい。
C 窓が多いよ。
※バスと乗用車の挿絵を比べながら、窓の大きさ・多さ・車の大小を比べる話し合いをする。
C 頑張って、朝から晩まで、休まずに人を乗せている。
T 仕事は、朝から晩まで人を乗せるということだね。
C 普通の車より窓がいっぱいある。
T 普通の車、乗用車だね。乗用車よりバスの方が窓が多い。
C 二階建てのバスの方が、普通のバスより大きい。
C バスに乗ると、車が小さく見える。
C あのね、窓から見ると、風景がいっぱい見える。
T 風景を見るために大きな窓がいっぱいあるのか。
C 人間を運ぶ。
T バスも乗用車も人間を運ぶ、ということだね。これは、仕事の方だね。
C バスに乗った人はみんな、安心して乗っている。
C バスの中は涼しい。
T 夏は涼しい。何があるから?
C クーラー。扇風機もあるよ。
C 冷房。
T 安心して乗ることができて、おまけに涼しい。
C バスは、いっぱい人を運べる。
T だから、作りがどうなっているの?
C 大きい。椅子がいっぱいある。
C 座席って言うんだよ。
T バスには、座席がいっぱいある。これが作りだね。
C バスの座席が広い。
T バスに乗ったことがある人?
C シートベルトがない。
C 後ろの方に段差がある。
C 上に何かがぶら下がっている。
T なんて言うか知っていますか?
C 吊り革。揺れた時掴むんだよ。
T そうですね。揺れた時に掴むものまだあるよ。
C 手すりだ。
C 椅子の所にもあるよ。
C 前に椅子には、座っちゃいけないんだよ。
T 乗客の安全のための工夫だね。
C 何人も座れる椅子がある。
C 立っている人がいる。
T たくさん椅子が合ったり、手すりや吊り革があったりのは、たくさんの人を安全に乗せる工夫だね。
※路線バスの作りについての話し合いをしばらくする。路線や、バス停など定時運行や利用者の便についても話し合いの中で出された。
C 観光バスにはリクライニングシートがある。
C 後ろに倒れるよ。
T なんでリクライニングシートがあるの?
C 眠るため。
T 長い時間乗る人のためにリクライニングシートがあるんだね。眠れるものね。
C 乗用車は後ろに荷物を乗せるけれど、バスはちがくて、上に荷物を載せる。
C 観光バスは下にも入れられるよ。シャッターを開けて入れるんだよ。
C 観光バスには、上に手で持つやつがない。吊り革や手すりがない。
C 観光バスは、行く場所を決める。
T 路線バスは、バス停で止まって、決まった場所へ行くけれど、観光バスは乗る人が行く場所を決めるんだね。
C 乗用車は、人が行きたい所にちゃんと連れて行ってくれる。
T 誰が運転手なの。
C お母さん。お父さん。
※タクシーやハイヤーは出てこなかったのですが、学級によっては出ることがあります。教科書の挿絵は、観光バスと乗用車です。人を乗せて運ぶ点では共通の仕事ですが、子どもたちの多くは、路線パスと観光バスの区別をしないで考えています。教師の側で整理しておくことが大切です。家庭用の乗用車と少人数の人を運ぶためのタクシーやハイヤーとの違いも意識しておく必要があります。最後に、教科書の課題に沿って内容を整理し直します。
T ④⑤を読んで下さい。
T じゃあ聞きますよ。バスや乗用車の仕事は何ですか。
C 人を運ぶ。人を運ぶ仕事。
T 「人を乗せて運ぶ」が仕事ですね。この仕事をするために作りはどうなっているのですか。
C 大きな窓がたくさんついている。
C 外の景色がよく見えるように、大きな窓がついています。
C 座席の所が広く作ってあります。
T これが作りですね。教科書に書いてあるのは、これだけですね。君たちが発表してくれたのとはずいぶん違いますね。
C 荷物をバスの下の所に入れる。
C 手すりや吊り革がある。
C 涼しくするために、クーラーや扇風機がある。
C 暖房もある。
C お金を払う所がある。
C リクライニングシート。
C ビデオも見られる。
T たくさん出てきましたね。プリントにまとめの感想を書きましょう。

七、終わりに
 話し合いの前の指名音読をした子は、その時間に発表することか多くなります。国語の授業への意識付けに繋がります。一斉音読(めいめいの意識でスピードを考えて読む)を聞いていると、その場面での子どもたちの内容は悪の現状がよく分かります。躓きや誤読の状況も把握できます。指導の重点や注意点を確認できます。子どもたちのやる気の状態を把握できます。声をしっかり出した子は、話し合いにもすんなりと入ってきます。
 子どもたちの国語力を伸ばす一番の方法は、書いたものは印刷して紹介し広めることです。読み合うことが子どもたちの自信を育てます。学習面での意欲を育てます。別の読みの視点を獲得し、友だちの良さを学ぶ共同学習の場にもなります。何よりも自分が大切にされているという実感を子どもたちに育てます。