「ふたりだとわびしいね」
三男に「夏休みの宿題を早めにすましておくように」と指示して出社する。
昼休みに千葉県長生郡長南町の古刹、長福寿寺の今木長秀住職から携帯に電話がある。
「来月9日のフォーラムだが、講師の青木新門氏(文藝春秋社『納棺夫日記』著者)から連絡をもらったから参加したい。終わったら青木氏と一緒に飲みたい」
「18時から20時まで講話・質疑応答、20時から21時まで講師と参加者との懇親会があり、それが終わって一緒に寿司屋にでも行きませんか?」
「3人だけどいいかな?」
フォーラムは赤字運営なので、会食の人数があとだしじゃんけんだとエッと思うが、青木氏とその知人のかたに満足してもらう必要がある。
「(苦笑しながら)どうぞ」
17時50分、デザイナーの竹中俊男課長と魚八に入るが、この時間だとすいている。
竹中課長がわが家にきたことは覚えているが、泊まったかどうか失念していて、「えーっ」とむくれられる。
早めに切りあげ、秋葉原の駅ナカでケーキを購入し、帰宅する。
チョコレートで書かれた「誕生日おめでとう!」のメッセージは電車や車のなかでゆれたためか箱にくっついて読めない。
「一日遅れでわるいな。きのうはケーキを売っている店がなかったから」
「ありがとう。ふたりだとわびしいね」
「確かに」
三男に翌日の野球の用意をさせて床につくが、「宿題をしたか?」と尋ねるのを失念してしまった。