ドラクエ5において太后に成り代わってラインハットを乗っ取り、悪政の限りを尽くしたものの最期は主人公たちによって成敗されたニセたいこう。
光の教団が送り込んだ工作員なのか?それとも単にヘンリー王子誘拐の混乱に乗じただけの小悪党か?その正体に関しては謎も多い。
今回はそのあたりについて少しだけ考えてみたい。
まず全てのきっかけとなったヘンリー誘拐事件の経緯をまとめる。
太后(この頃は王妃)が実子のデールを王位に即けたいという思惑から、義子で次期国王候補のヘンリーをさらわせ亡き者にしようと目論む
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太后がならず者たちに誘拐を依頼し、ヘンリーは彼らによってさらわれる
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誘拐犯は古代の遺跡にヘンリーを監禁。駆け付けたパパスと主人公たちによって救出される
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古代の遺跡に居合わせたゲマ一味と遭遇。パパスは殺害され、ヘンリーと主人公は奴隷として連れ去られる
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ヘンリーと主人公が工事中の神殿から脱出。
ラインハットに戻った時にはニセたいこうにすり替わっており、本物の太后は地下牢の中。
デールは王に即位しており、パパスのせいでヘンリーがさらわれたという理由からサンタローズが滅ぼされている
太后の仕業とされているが、彼女の目的はあくまでデールを王位に即ける事であって、サンタローズを滅ぼす事ではない。大体それをするメリットがない。この事からニセたいこうの仕業だと考えられる。ラインハットの軍事力を世に知らしめるためか?
こう見るとニセたいこうには光の教団とのつながりを示すシーンが一切ない。
一方、太后と通じていた誘拐犯たちは「古代の遺跡に子供を連れてくれば奴隷として買ってくれる」と発言しており、ゲマ一味が都合よく古代の遺跡にいた事から見ても、彼らは光の教団と繋がりがあったと考えられる。
また、誘拐犯三人のうち二人はこの後すぐに太后らしき人物によって殺害されたようだ。
本物の太后が口封じのためにやった可能性もあるが、彼女に彼らを殺せるような力があるとも思えないし、従者がやったという描写もないし、そもそも誘拐犯が古代の遺跡にいた事を知っていたかも定かではない。
という事はニセたいこうの仕業なのだろうか?
この一件には全く関わりがないニセたいこうが彼らを殺す理由があるとは思えないが、ゲマの仲間だったと仮定すると教団と繋がりのある彼らを口封じのために殺害したという見方もできる。だが、あくまで推測の域は出ない。
なお、太后は「たしかに10年前ヘンリーをさらわせ亡き者にさせたのはわらわじゃ」と言っているが、一方の誘拐犯たちは「王妃に王子を始末するよう頼まれたが、殺せとは言われていない」 と言っているなど、妙な矛盾点も見られる。
光の教団は勇者誕生の阻止を目的に動いていたが、ニセたいこうはラインハットを独裁国家にして暴政を敷いたり軍備を増強したりと全く関係のない事をしている。そうやって人々を苦しめることで光の教団こそが唯一の救い主であると思わせようとしたのだろうか?
だがニセたいこうは死の間際に「おろかな人間どもよ。オレさまを殺さなければ、この国の王は世界の王になれたものを。」と発言している。
ゲームにおける最期の言葉というのはだいたい本音が出るものだが、これは教団側の思惑とは一致しない奇妙な発言である。
教団はミルドラースを王どころか絶対的な神と崇めているのだから、ラインハットの王が世界の王になってもらっても意味はないし、むしろ困るのである。
そう考えるとニセたいこうは私欲からヘンリー誘拐事件で混乱したラインハットに忍び込み、太后に成り代わって国政を握り、世界を支配しようとした。あくまで教団とは無関係の小悪党であった可能性が高いように思われる。