前作のドラクエ4で地獄の帝王として登場し、主人公たちと激闘を繰り広げたエスターク。

戦いに敗れた彼は再び永劫の眠りにつくのだが、どういう訳か続編のドラクエ5で彼が居たのはエスターク神殿ではなく、魔界の地下の奥底であった。

しかもプチタークという自称・息子まで現れる始末。

これらの理由は本編では一切語られておらず、真相は謎のままである。

メタ的に言えば堀井雄二によるファンサービスなのだが、そんなことを言い出したらそれまでなのでキッチリ理由を考えてみたい。

 

  エスタークが魔界にいるのは光の教団の仕業?

 

アッテムト鉱山地下(エスターク神殿)で眠りについていたエスタークが、魔界の地下へと移動していた。

これは何故なのか?

エスタークが目を覚まして多少動く可能性はあるにしても、次元を超えて魔界に、しかもその地下に移動するというのは不自然である。

 

ということは何者かの意思が働いた事になる。

それは誰か?というと、まず真っ先に考えられるのはミルドラースだろう。

ミルドラースは進化の秘法を用いて魔族になったと思われる。だが、その進化もマスタードラゴンに魔界に封印される程度のもの。

神をも超える力を渇望するミルドラースには耐えがたい屈辱であったはず。

そんなミルドラースは進化の秘法を研究し、極めるために元始の存在であるエスタークを魔界へと連れ去ることを思いつく。

 

その実行部隊はもちろん光の教団である。

彼らはマーサを魔界へと連れ去る事にも成功しているし、エスタークが眠っていて基本的に無害であること、ルーラなどの転送魔法があることから実行は容易であったと考えられる。

 

エスタークの居場所がどうしてわかったか?そこは光の教団が調査の末に突き止めたか、ミルドラースがエスタークのことをよく知っていて神殿の場所を把握していたかだろう。

 

自称・息子のプチタークの謎だが、私はおそらくエスタークの研究課程で生まれたクローンではないかと思う。

 

 

戦力にするためなのか、たまたま偶然生まれたのかは定かではないが、プレイヤーならご存じの通りプチタークはレベルも戦闘能力も低く、即戦力にはなりえない。

おそらくミルドラースはそんなプチタークを見限り廃棄処分したのだろう。もしくは遊び心ですごろく場の景品にしたか。

 

  マスタードラゴンが魔界に封印した?

 

 

どこかのサイトか掲示板で見た記憶があるのだが、このような考察があった。

それはマスタードラゴンが将来の脅威を取り除くために、エスタークを魔界に封印したのではないか?という説である。

 

確かにマスタードラゴンとしては、あのまま放置しておく訳にもいかないだろう。

アッテムト鉱山で人間たちの発掘作業により存在が発覚したことや、再びピサロのような野心を抱いた者が現れかねないことを思えば尚更である。

 

そう考えれば、マスタードラゴンがエスタークをより手の届きにくい魔界へと封印した、というのはあり得ることである。

 

ただ、エスタークより先にミルドラースを封印していた場合、これはなかなかリスキーな話になってくる。

 

ミルドラースとエスタークが手を結んで人間界へ攻めてくる可能性があるからだ。

実際、ミルドラースは独力で人間界への門を開くことに成功しつつあった。

 

そしてエスタークはミルドラースでさえ手が出せない大物と言われているが、別に敵対関係にあるとまでは言われていない。

 

エスタークは自分が善なのか悪なのか、それさえも分からない存在となっており、普段は寝ているかすごろく場で遊んでいる。

 

しかし、その圧倒的な戦闘能力は健在。うまく口車に乗せればミルドラースとの共闘も十分あり得ただろう。(実際、すごろく場はミルドラースが懐柔目的で用意したのではないか?と思っている)

 

そうなればマスタードラゴンや勇者でさえ止められない大惨事へと発展。人間界の終わり待ったなしである。

 
となるとエスタークの封印はミルドラースより先に行われたのだろうか?
エスタークを封印する段階では魔界にミルドラースはいなかった。よって手を組まれる恐れもなかった。
そう考えると矛盾がないようにも思える。
 
しかしその場合だとマスタードラゴンはエスタークがいる魔界にミルドラースを封印した事になるので、結局同じような話になってしまう。
 
そうした問題を防ぐためにエスタークを魔界の地下最深部へと封印したのか?
だがエスタークの存在はトップシークレットではなく、魔界の住人にも知られている。
という事は彼ら(ミルドラース)によって掘り起こされ、その存在が周知されるようになった、という事だ。
マスタードラゴンにしてはあまりにもお粗末な封印ではないか?(まぁ、5でのザマを見ればあり得ない話でもないが)

 

  戦力不足を補うためにエスタークの存在が必要だった説

 

第三の可能性として、ミルドラースが戦力不足を補うためにエスタークを誘拐したという説である。

これはある程度、可能性としてあるんじゃないか?と思っている。

というのもミルドラースには優秀な部下がほとんどいないからだ。そして部下の数が絶対的に不足している。

まず腹心にイブール、その片腕にラマダ、更にその部下にゲマ、ジャミ、ゴンズと、配下らしい配下はこれぐらいしかいない。

ちなみにラインハット乗っ取りを画策したニセたいこうは台詞などから関わりがないと思われる。

 

同じく天空三部作のピサロ、デスタムーアが四天王と称される精強な配下を従えていたことを思えば、その差は明らか。

人材不足・戦力不足もいいところである。

その影響なのだろう。実際、光の教団は軍事的にではなく、宗教的に人間界を侵略しようとした。

言い換えれば彼らには人間界を軍事的に攻め落とす力がないのだ。

 

リメイク版ではレヌール城を攻め滅ぼした可能性が示唆されているが、そのレヌール城もちっぽけな田舎の小さな城。

それもあくまで可能性に留まっており、真偽は定かではない。

他の地域、たとえばラインハットやグランバニアが軍事的に攻められたという話はないので、光の教団の力もかれらには及ばないという事だろう。

 

更にかれら光の教団の活動そのものが、往年のファンからツッコミを入れられまくるほど穴だらけで、その筆頭ともいえる戦犯・ゲマの失策は数えればキリがない程である。

リメイク版ではそんなゲマがイブールを抜く形で最高幹部に収まっており、光の教団の勢力拡大に貢献したという意味では、ゲマよりも優秀であるはずのイブールが「形だけの教祖」であったとゲマから酷評される始末。一体全体、ミルドラースの人事はどうなっているのやら。

 

こうしてみるとミルドラースの部下は人間界を軍事的に攻めることもできず、宗教的にも侵略できず、勇者狩りもことごとく失敗、しかも最大の貢献者のイブールがゲマに勝手に殺され、そのゲマも度重なる失敗の末に情けない死に様を晒すという有様。救いがたい惨状といえる。

 

 
そりゃ、ミルドラースも「必要のないくだらない努力」と切り捨てたくもなる。
だからこそミルドラースは、かつてのピサロがそうしたようにエスタークを戦力に招き入れようとしたのではないか?
現にプチタークという人為的に作られたとしか思えない存在もいるし、ミルドラースがエスタークに何かしらのアプローチを試みたのは間違いないだろう。
 

だが、この説にも疑問が残る。
まずミルドラースは自らを勇者も神をも超える存在と見なしており、部下の努力など最初から必要なかった、と言っている。
ということはエスタークの力など借りなくても問題ではない、とも解釈できるのだ。

 

 

そしてエスターク自身、自らが善なのか悪なのかそれさえ分からないという重篤な状態に陥っており、普段は寝てるか遊んでるかという有様を見るに、こんなヤツが果たしてまともに戦力として機能するのか?という話にもなってくる。(要するに言う事を聞いて戦ってくれるのか?ということ)

 

 

更にエスタークが魔界でメッサーラに様付けされるなど、権威と影響力を持ち始めており、もし人間界征服にその力をふるえばミルドラースではなく、エスタークの方に大勢の部下がついてしまう可能性もある。

ミルドラースは絶対的なカリスマ性を持っているから大丈夫?前述のメッサーラに呼び捨てにされているので、意外とそうでもないのである。

 

何よりミルドラース自身がどう思うか、という問題でもある。絶対的な権力者に匹敵するナンバー2の存在というのは、支配体制を崩しかねない危険性を孕んでおり、かつて地獄の帝王として奉られたエスタークは最大の火種となり得るだろう。(実際、前作の4でもピサロ派とエビルプリースト派で内部抗争が起きている訳だし、魔物の世界でもあり得る話なのだ)