カープの偉大なる200勝投手北別府学氏が、
「成人T細胞白血病」という厄介な癌になったことを公表してから、
彼のブログを欠かさず読んでいる。
やはり、生じた箇所が違っても、おなじ癌仲間ということで、
彼の日々の状況が気になるからである。
今のところ順調にきているようで、
とりあえず喜ばしいかぎりではあるが、
妙なウイルスが蔓延していることを思うと、
諸手をあげて喜ぶわけにはいかないし、
大事な治療も残っているし、まだまだ心配は続く。
北別府氏にまつわる思い出で、
自分的に一番なのは、1976年のジュニアオールスターである。
前年秋、ドラフト1位指名された北別府投手は、
ルーキーイヤーが始まって、
早くも金の卵にふさわしい活躍を見せていた。
情報を得ていた自分は、
会場の川崎球場にいそいそと駆けつけ、
ウエスタンサイドの3塁側スタンドに席を占めた。
北別府投手はウエスタンの先発に指名されていた。
試合が始まるまで、あんなにワクワクしたこともなかなかない。
そのワクワクした期待に、北別府投手は見事に応えてくれる。
2回を無失点で投げ切ったのである。
面白かったのは、イースタンの4番、いまはもう鬼籍に入っている、
読売の山本巧児選手の打席を迎えたときである。
山本選手がバッターボックスに入る前に、
イースタンのベンチからヤジが飛んだ。
北別府、お前と山本では格が違うよ。
そんな感じの、北別府投手を見くだしたヤジだった。
実際、おなじ新人といっても、
田舎の高校を出たばかりの北別府投手と違って、
山本選手は法大から社会人経由で入団していたから、
キャリアは、はるか上だったし、
しかも所属球団は天下のジャイアンツ、
的を射たと言ってもいいヤジだった。
しかし結果は、たしか内野フライで、
北別府投手の圧勝だった。
ヤジを耳にしたカープファンは、
やっぱり格が違った、とニンマリしたことだろう。
北別府氏に関して、1つ思うのは、
現役時代、投げることがものすごく楽しかったのでは、
ということである。
ピッチングの組み立てが若鯉時代から上手いうえに、
抜群のコントロール、そして多彩な変化球。
いついかなる時も、これだと思う球を、
思ったところに投げられるわけだから、
もちろん打たれることはあるにせよ、
ほぼ計画通りに打者を打ち取れるわけで、
そんなピッチングは、ごくごく限られた投手にしかできないし、
楽しくてしかたなかったのでは、と思うのである。
北別府氏の背中を見ながら懸命に後を追ったのは、
佐々岡監督、マエケンの2人だと思うのだが、
そのあとに続くのは、現投手陣では森下だろうか。
ま、そういったことはともかく、
いまは、北別府氏快復の朗報を、ひたすら待ちわびている。