前回ハムステッドのことを書いたが、

あの街に1週間滞在して、

毎日ロンドン市内をほっつき歩いていたのは1998年の暮れ。

個人商店もデパートも、クリスマス商戦で大賑わいだった。

 

その前年の秋もロンドンに行った。

そのときは友人とうまく連絡が取れず、

パディントン始め市中心部のあちこちのホテルに泊まって、

やはり毎日、気のおもむくままに歩きまわった。

 

10月なかばのロンドンは寒く、

東京では真冬にしか目にしない厚手のコートを、

多くの人が着込んでいた。

自分が用意していったGAPのペラペラのウインドブレーカーは、

寒気を遮ることができず、

たちまち体調を崩してしまった。

 

10月なかばだから、

8月の終わりにダイアナ妃が亡くなってまだ2ヶ月も経ってなくて、

彼女が暮らしたケンジントン宮殿の正門には、

おびただしい数の花束が積み上げられていた。

 

宮殿の位置するケンジントン・ガーデンズは紅葉が美しく、

とりわけ地面に舞い降りた色とりどりの葉たちが競演する艶麗な光景は、

20年以上経った今もありありと目に浮かぶ。

 

イギリス旅行の忘れられない思い出は、唯一足を運んだ地方都市、

ソールズベリーも含め、いくつもある。

どこの国もそうかも知れないが、

イギリスもまた魅力あふれる国である。

だから、ステキな思い出をまた新しく作りたいところだが、

身体のことを考えると、もはや渡英なんて夢のまた夢だろう。

残念だが、いちばん行きたかったLand's Endも、

憧れただけの地として、終わってしまうのは明らかである。

 

矢のごとく過ぎ去る時がもたらす現実は残酷。

似たようなことを何度も書きしるしているが、

すべて受け入れて、ほがらかに生きるしかない。