昭和初期の働く女性 ⑥容姿端麗が条件。生きたマネキン人形、マネキン・ガール | 化粧の日本史ブログ by Yamamura

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◆ショーウィンドウが舞台! お客さまの注目を浴びるのが仕事でした!

 

こんにちは、山村です!

 

昭和初期の働く女性シリーズも6回目。
今回は、マネキン・ガールをご紹介しましょうビックリマーク

 

「マネキン・ガール」とは、
デパートのショーウィンドウや

陳列スペースに立って
人々の注目を集め、

流行のファションや新製品などをPRする女性。


昭和3年、昭和天皇の即位の大礼を記念して

上野公園で開催された

「大礼記念国産新興東京博覧会」で、

高島屋呉服店(今の高島屋百貨店)が、

マネキン・ガールを起用して

東京でも評判になりました。
 

このマネキン・ガール、

最初は生きた人形のように、

ポーズをとり、じっとしているのが仕事

だったのですが、

次第に商品のPRや実演を含めた

販売活動を担うようになります!!

昭和4年3月には、

アメリカで美容技術を学び、

丸の内ビルヂングで美容院を経営していた

美容家山野千枝子が中心になって、

今でいう派遣業をおこなう

東京マネキン倶楽部を結成キラキラ


当初7人のマネキン・ガールが所属していました。
ところがこのマネキン倶楽部、

仕事の受注は順調だったのですが、

ギャラの配分をめぐって、

山野氏とマネキン・ガールたちがトラブルになり、

わずか数カ月で分裂ガーン

マネキン・ガールのひとり、

駒井玲子さんが仲間と独立して、

新たに立ち上げた東京マネキン倶楽部を

自主運営する形になりましたビックリマーク

(同じ名前なのがややこしいところです)


一方、山野千枝子さんは、

日本マネキン倶楽部を新しく設立しました。
東京ではしばらくの間、

この2つのモデル倶楽部が業界をリードします。
仕事をするには、どこかのモデル倶楽部に

所属することが必要でした。


昭和6年3月4日の「アサヒグラフ」に載った
「働く女性の行く道 

マネキンガールになるには」という記事から、

採用条件を要約すると次のようにビックリマーク

・すらりとして容姿端麗(美しいほどよい)。

・場合によって科学的説明があるので

 女学校出位の学歴。
・地方なまりはNG。

 踊りや茶道の心得があればGoodビックリマーク
・年齢は17歳以上、24、5歳まで。

 既婚者でもOKニコニコ

なかなかハードルが高いですねハートブレイク

その中で既婚者でも問題なしというのは、

当時としては珍しい緩さですが、

おそらく、最初に所属していた女性たちに、

すでに既婚者がいたからと思われます。

 

マネキン・ガールは条件が厳しい分、

お給料も高額でした札束


日給は、1日につき8円から10円位。
ひと月で250円以上稼ぐ、

すご腕のマネキン・ガールもいたそうです。


当時の男性の大卒初任給が70円程度ですから、

超高給取りです。
前の回で紹介したダンスホールの

ダンサーと双璧と言えますね音譜

 

ただし、その中から収入に応じて一定の割合を、

事務所に収めるのがルールでした。

下の写真はおそらく、

クラブ化粧品のPRをしているマネキン・ガール。


左の後ろにクラブ白粉の看板が見えますビックリマーク

眉を少し下がり気味に描いた、

モダンガールの化粧をしているのがわかります。

 


(『大東京寫眞帖』 昭和5年頃 国立国会図書館所蔵)

一見華やかそうなマネキン・ガールですが、

見えない苦労も多かったそうです。


とりわけ夏場は、

ショーウィンドウの中でポーズをつける場合など、

今のようにクーラーがあるわけでなく、
氷柱や扇風機があっても、

ものすごい暑さだったとかあせる


汗をぬぐうこともできず、

衣服の下にアセモができたという話もありましたショボーン


さらには、お客さんから

無遠慮な批評を浴びせられるなど、
心身ともに、タフでないと務まらない

仕事でもあったのです。

 

ちなみに東京マネキン倶楽部を

まとめていた駒井玲子さんは、

昭和8年に資生堂に入り、

同年に資生堂が自社商品の

宣伝要員として募集した、

ミス・シセイドウの採用や育成を担当しています。

 

ミス・シセイドウは、昭和9年から全国をまわって、

美容の寸劇を通して化粧法を教えたり、

女性客ひとりひとりの美容相談に応じる

などの仕事をしました。

まさに、化粧品会社が育成した

マネキン・ガールです音譜

 

こうした化粧品会社のマネキン・ガールは、

現在のBA(ビューティーアドバイザー)や

BC(ビューティーカウンセラー)さんの

草分けだったといえるでしょうドキドキ


さて、今年ももうすぐ終わり。

年内の更新は、

これが最後になるかもしれません。

これまでご覧下さった方、ありがとうございました!!