昭和初期の令嬢とお小遣い。サラリーマンの月給よりも高い人も!  | 化粧の日本史ブログ by Yamamura

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◆お嬢さまの化粧品代5円は、女工の6日分の給料でした。


こんにちは、山村です。

 

今回は、『婦人画報』、

昭和4年4月号の記事から、

「令嬢の小遣い調べ」をご紹介しましょう。

 

これが、なかなか世間ずれしていて、

おもしろいのです。

 

参考までに下の写真は、

昭和5年の『婦人画報』4月号の令嬢写真。

昭和初期の『婦人画報』は、

「令嬢」がキーワードでした。

 

上のふたりは、大阪の実業家の令嬢。

下は、医者の令嬢。

みんな耳隠しとよばれるヘアスタイル。

 

長い髪にウェーブをつけて、

断髪風に見せるヘアスタイルでした。

雑誌に掲載されると、見合用に配るのに、

親がかなりの部数を買ったといわれています。

 

 

話は戻って、「令嬢の小遣い調べ」の記事に

登場するお嬢さまは4人。
それぞれのお小遣いと化粧品代の

概略をまとめてみました。

 

1番目のお嬢さまは、貴族院議員の令嬢で、

日本女子大国文科に在学中。

お小遣いは月に15円。

 

まだ学生なので小遣いは少ないのですが、

それでもこの月は、

3円以上足りなかったとのこと。

化粧品代は母親と共用なので、すべて母親持ち。

 

2番目のお嬢さまは、父親が海外赴任中で、

女子大卒業。

お小遣いは月30円。
化粧品は、白粉だけは

家族で共通に使っているものの、

コンパクトなどで月に平均1円位使うそうです。

 

3番目のお嬢さま。

小遣いは、その時々に母親からもらうので、

よくわからないものの、

大好きな趣味の手芸にかかる費用もあり、

月に50円から100円使うこともあり。
ちなみに化粧品は月平均3円位。

 

4番目のお嬢さま。お茶の水高女を卒業。

小遣い帳によると、1月の支出は約42円。
化粧品は、コールドクリーム、

バニッシングクリームが計3円。

粉白粉が1円80銭。
1月の化粧品代は、合計で約5円。

そのほか結髪に6円30銭を支出。

 

4人のお嬢さまは、

最も少なくて20円弱、多いと月に100円ほどの、

小遣いを使っていることになります。

 

一方で、この記事から読みとれる

彼女たちの化粧品代は、
月に3円から5円位といったところでしょうか。

 

ちなみに、昭和6年の

サラリーマンの平均月収が約92円。

昔のことなので、この月収で家族5人ぐらいは、

楽に生活していたと思われます。


同年の女子学生に人気の

小学校教員の初任給は、東京だと50円前後。

 

昭和4年の女工(機械織職)だと、

1日の平均賃金はわずか84銭でしたから、

ひと月休みなしに働いても25円にしかなりません。

 

令嬢の化粧品代が、月に5円だとすると、

女工の日給の6日分が消えてしまうのです。

 

そう考えると、ここで紹介した

ハイクラスの令嬢たちの小遣いが、
どれほど並はずれて多いかわかると思います。

 

3番目のお嬢さまなどは、

サラリーマンのひと月分を、

趣味や化粧品に使っています。

 

昭和初期には、

女学生も働く意識がめばえてきたとはいえ、
こうした生活をしている令嬢だと、
小学校教員のような安月給であくせく働く気など、

さらさらなかったでしょう。

 

当時の身分格差が、どれほど大きかったかが、

うかがえる記事でした。

 

次回は、12月7日更新予定。