菜根譚 前集一八

    誇る心と悔いる心


世界を驚かすどんな立派な業績も、それを自慢する心が生じたら、全く価値がなくなってしまう。

 また、残虐非道の許されざる凶悪犯罪の罪人も、悔い改める純な心が生じたら、どんな罪悪でも消滅したと同じである。


一. 菜根譚は、終始一貫人間の傲慢さ、奢り、高ぶりを厳に戒める。努力、精進は、奢りは不要、汚れでしかない。奢りを持つとき、努力精進を外形上成しえたとしても、それは中身のない無益なものとなる。

二. 心ひとつの置き所中村天風著、運命を拓く

人生は、所詮、心ひとつの置きどころ。人間の心で行う思い方、考え方が、人生の一切を良くもし、悪くもする、というのが人生支配の根本原則である。思い方や、考え方が、積極的であれば、積極的なものができ、消極的なら消極的なものができる。何事においてもその時の心の状態が、成功を生み、また、失敗に追いやる。


天風の教え、インドヨガで人生を成功に導く。クンバハカ


終始肛門を締める。締める気分を忘れないこと。初心者は、気づいたら、開いている。気づいたら閉まっているという身体意識まで、練習すること。肩を落とす肩を上げない。丹田へそ下は常に力がこもっている。息の合間合間に尻肩腹三位一体。」


中村天風略歴、九二歳没。


福岡修猷館高校入学、当時全ての授業を英語で学ぶ。柔道部のエース。練習試合に勝ち、その帰途負けた熊本濟々黌の闇討ちに会い、相手を正当防衛で刺殺。退学。

玄洋社に預けられる16歳頭山満の紹介で、帝国陸軍軍事探偵(諜報員)となる。時の軍事探偵は一一三名。このうち、日露戦争後、生存者九名となる満州馬賊と抗争、松花江爆破などに従事。多数の殺戮を繰り返した。ロシアでコッサック兵に囚われ銃殺刑に処せられる寸前逃れる。

重篤なる結核にかかる。病気治癒の為の世界旅行に出る。三〇歳。甲斐なく帰国の途、偶然にインドの聖人カリアッパ師と出会う。カンチェンジュンガ山麓で2年半ヨガの修業で完治。三五歳。

頭山満の命で、一九一三年インドか中国へ第二次辛亥革命支援に向かう。中華民国最高顧問となる。革命失敗。謝礼として、革命財産の分配を得、東京実業貯蔵銀行頭取就任。一九一九年、一切の財産処分。心身統一法、「天風会」を設立する。このとき四三歳。現在、会長は尾身幸次。

   3 最高道徳モラロジー、広池千九郎著

「およそ自己を擁護するために常に周到なる用心をなして世を渡り、伺候して禍にかかる人は、これまた、利己的本能の甚だしき人物なり。かかる人にてもその利己的本能を脱却して最高道徳を体得し、生まれ変わるの上に、人心の開発もしくは救済に努力せばさほどに用心せずとも禍を免れて永く富貴を有するをうべし。」


4、 刑事責任、心を入れ替えるだけで、刑事責任を免れうるか。刑事責任とは、「構成要件に該当する違法な行為をしたことについて、行為者を非難できること(有責性、非難可能性)。

① 応報刑、行為主義。応報(retributionは、復讐(revengeではない。社会制度(systemである。その犯した行為を罰する。「罪を憎んで人を憎まず」
② 目的刑行為者主義。刑罰の機能は、二つ。「一般予防機能」世間一般が犯罪に陥らないように予防する。一般威嚇効果。「特別予防機能」犯罪者が再犯しないようにする。特別威嚇効果。

目的刑の一種、「教育刑」刑罰の目的を、犯人の社会復帰のための教育であるとする。

保安処分、刑罰のみでは、犯罪を抑止、防止できない。犯罪原因を取り除く、治療改善予防の処分


5、 死刑廃止

① 応報刑では、死刑は、当然の刑罰となる。
② 目的刑では、死刑は、廃止論になる。教化改善すべき対象者を生存させておかなければ、刑の目的が達しえない。被害者の感情、抑止的効果の重要性から、通説にはなりえない。保安処分も国家の恣意に刑罰がなる恐れがあるため、採用されてはいない。

三. 日本の刑事法は、応報刑を主として、目的刑を従としている。 

菜根譚は罪人にも光明を与える趣旨
刑法哲学の域を超えている。