菜根譚 前集十三
長生の道は一歩譲ることから
「すれ違えないほどの小道は、急がずこちらが歩みを止め、相手を先に行かすようにしなさい。
美味しいものを仲間で食べる時には、仲間がたくさん食べられるように、三分少なめに食べるようにしなさい。
この生き方は、社会生活を送る上で、最も適切で正しい方法である。」
人を先に立てて、自分は出しゃばらない態度。万事控えめな姿勢は、人柄が良いとされる日本人の固有の文化。礼節を説く儒教思想の影響とされる。
謙譲は、社会円滑化を図るために欠かせない内面の必須要素。単にへりくだる精神性のみに効果を求めるものではなく、やがては分業のネットワーク化への心構えになる。
二、マサイ族の狩猟生活における分業。分業だからこそ女性、子供に満足が至る。
Aは、小柄でやせ型で目が4.0。木に上り遠くの獲物を探す。
Bは、背が高く足が速い。獲物を真っ先に追い込んでいく。
Cは、槍、弓の名人。追い込まれた獲物を、仕留めて殺す。
Dは、屈強の力持ち。獲物を難なく運び持ち帰る。
現代の価値観では、獲物の分け前は、CDに集中する。しかし、
Eは、村に着いた獲物の皮を剥ぎ、肉にする。
Fは、母たる女性。獲物の肉の分配権を全て握る。
FはG子供に腹いっぱい食べさせる。その後、H老人と障害者に分配。残りを、母たる女性が食べる。
それでも余った場合だけ、A~Dに分配される。
古典的な社会のシステムは、人の個性と機能別に、全て能力を発揮させながら合理的に生産性を最大化させている。
文明が、進展すると、屈強の男性、殺傷を得意とする者などが、先に取ることになる。実は、そのやり方では、社会は崩壊する。強者が遠慮するシステム・精神性が、謙虚、謙譲の美徳の根底に存在する意義である。
日本文化には武士道がある。武士は常に謙虚でなければならない。強い、武器を持つ、ゆえに謙虚。働きを数値化すれば、壮年男子が一〇、女性の子供は三。その客観性で富を分配すれば偏在が固定化される。社会の一番底辺、一番弱者よりも武士たる自分を下位に置く謙虚さが社会の持続性につながる。
ノーベル経済学賞を受賞し、FRB元理事長イエレンの大学の恩師であるトービン博士の提唱。現代世界で一番強い者は、ヘッジファンドなどの金融機関。儲けた利益の1%を税とする。強者が譲る。この考えを法則化すべきと。
以上