菜根譚 前集九 自心の観察
「深夜、人気の無くなったころ、独り座して自らの心の内を静かに観察してみると、煩悩が果てしなくあることと、その先に、人として本来そなえている清らかな心があることを悟る。
こうした経験を幾度も積めば、煩悩の逃れ難きを知る。また、この境地になって始めて、本当の自由な心が得られる。
それは、煩悩に束縛されない自由な心と、自らの良心に深く恥じる慙愧の念が、自然に湧いてくる。この日常を持つことが大切である。」
一、座禅 達磨大師により確立された瞑想法。
鍛錬、修養、の方法として日本で確立される。この修行法は、禅寺で、僧侶による警策を受ける形、数人で、場の共有を可能とする方法が良いとされる。
深夜、一人で、瞑想に入ろうとしても、通常は、妄想になりがちである。この菜根譚に言う事例は例外的である。
座禅は、鎌倉時代、武士の間に普及した新しい文化であった。特徴の一つとして、終始ただ座るだけである。読み書きもできない武士階級でも可能な手法であった。
また、応仁の乱など、明日の命が危うい武士だからこそ、生きる力を得るための心の整理が必要であった。時代的要請というべきか。日本伝統精神文化の基調となった。
ベトナム帰還兵、アフガン帰還兵のトラウマや社会復帰困難者の心の傷PTSDが、米国を虫食んでいる。この治療に禅が効果的とされている。日本の禅宗とその心理療法的効果は、人間の宿命たる生老病死の四苦の克服、調和に有効である。現代人のストレス対策にも欠かせない教養である。
二、内観の法、白隠禅師、軟蘇の法「夜船閑話」
白隠は、臨済宗中興の祖。谷中全生庵の本寺、龍沢寺住職。青年期、病弱で寺の作務すらできない虚弱で絶望的な人生。白幽仙人から「軟蘇の法」を教示され強靭な精神と肉体を得た。その法とは、瞑想と呼吸、さらにイメージトレーニングであった。
三、内観法はなぜ強いか?
西洋心理学者ダイアー「自分の中に奇跡を起こす」=「臨界質量が奇跡を起こす。思いの熱が相互作用で、通常温度から臨界を超えたとき、一気に上昇する。」
禅の世界でも、同様の教えがある。 同じ思いを持った人が、数人から何十万人、何百万人に増えたとき、ある閾値を越える。その時、思いは、実現する。
蝋燭の火は小さい。それが、次の灯に伝わり、また次と、灯々無尽となれば、大明りになる。次の灯に伝える力こそ、内観の法で作出される精神エネルギーである。
一灯照隅 万灯照国
アフガン帰還兵
PTSDになる率が高い。
兵役を終えても、自分も家族も不幸の連鎖
精神の拠り所を見つけることが不可欠