忙中閑あり

安岡先生は、父親が高知出身
やはり、高知出身の臨済宗全生庵住職、元長浜雪蹊寺住職の山本玄峰老師に師事していました。
その関係から、終戦の玉音放送の原稿の下書を書いたと伝えられています。


本文


菜根譚  前集八 


忙中に閑、閑中に忙の心を 



天地は、静かで悠然として動かない。しかし、その中にある宇宙の原理たる陰陽二気は、止まることなく、絶えず働いている。日も月も、昼夜絶え間なく奔走しているが、そのなすことの正しきは、永遠に不変である。

この万物不変の原則通り、人間における君子たるもの、時間に余裕のある暇な時は、その対極にある緊急切迫の時を思う心掛けがなければならない。また、忙しい時には、逆にゆったり寛いだ面持ちがである。



1、 陰陽 易学でいう宇宙万物を作り支配する二つの相反する性質を持つ気。積極を陽、消極を陰とした。

陰陽二元は、四象(ししょう)という東西南北など四元に展開森羅万象を構成する八卦(はっけ)即ち、易の思想へと進んだ。この陰陽八卦とは別に、万物の構成を、五星即ち、木星火星、土星、金星、水星、「木・火・土・金・水」の五の気、五行に還元する思想も生まれた。これらが融合して、陰陽五行説となる。

「木の陰と陽が、甲・乙」「火の陰と陽が、丙・丁」「土の陰陽が、戊・己(ぼき)」「金の陰陽、庚・申(こうしん)」「水の陰陽、壬・癸(じんき)」十干。

月齢の周期は、一年で一二回。動物の神聖を組み合わせ、子、牛、寅、卯、辰、巳、馬、羊、申、酉、戌、亥。一二支。十干十二支で六十年還暦。

陰陽、八卦、五行の思想は、天文学、暦学、医学、思想、あらゆる文化へ影響し、自然科学を発展させるとなった。日本には、仏教とともに流入したが、呪術、占術の活用が主であった。

一〇世紀に賀茂家が陰陽道を専門とした。陰陽師安倍晴明が現れ、両家が世襲することとなった。以後、秘伝とされ、陰陽の発展は遅れた。昔から賀茂と安倍の対立?



二、「六然」対極の理法

自ら処するに超然。物に囚われるな。

人に処するに藹然(あいぜん)。人に接するには楽しく。

3、有事には斬然(ざんぜん)。ことあれば毅然と対処せよ。

4、無事には澄然。事なきは水の如く澄んだ気で。

5、得意淡然。良い時は、あっさり。

6、失意泰然。


「六中観」安岡正篤

1、 忙中閑あり。真の閑は忙中にのみあり。 2、苦中楽あり。いかなる苦にも楽がある。 3、死中活あり。窮すれば通ず。 

、壷中天あり。独自の世界。  

意中人あり。共に隠棲できる友を持つ。 6、腹中書あり。腹に納める哲学。


2、 天地不動の意味。陰陽は絶えず奔走。二気が活発であるから不動となる。

「不動心」とは、一休禅師いわく、「猛勢なる駒の如し。勢いよく、必至に回るがゆえに動かず。石のように漫然存するのみはこの境地にあらず。陰陽的思想なくこの発想はない。      

以上