菜根譚 前集八
忙中に閑、閑中に忙の心を
「天地は、静かで悠然として動かない。しかし、その中にある宇宙の原理たる陰陽二気は、止まることなく、絶えず働いている。日も月も、昼夜絶え間なく奔走しているが、そのなすことの正しきは、永遠に不変である。
この万物不変の原則通り、人間における君子たるもの、時間に余裕のある暇な時は、その対極にある緊急切迫の時を思う心掛けがなければならない。また、忙しい時には、逆にゆったり寛いだ面持ちが必要である。」
陰陽二元は、四象(ししょう)という東西南北など四元に展開。森羅万象を構成する八卦(はっけ)即ち、易の思想へと進んだ。この陰陽八卦とは別に、万物の構成を、五星即ち、木星、火星、土星、金星、水星、「木・火・土・金・水」の五の気、五行に還元する思想も生まれた。これらが融合して、陰陽五行説となる。
「木の陰と陽が、甲・乙」「火の陰と陽が、丙・丁」「土の陰陽が、戊・己(ぼき)」「金の陰陽、庚・申(こうしん)」「水の陰陽、壬・癸(じんき)」十干。
月齢の周期は、一年で一二回。動物の神聖を組み合わせ、子、牛、寅、卯、辰、巳、馬、羊、申、酉、戌、亥。一二支。十干十二支で六十年還暦。
陰陽、八卦、五行の思想は、天文学、暦学、医学、思想、あらゆる文化へ影響し、自然科学を発展させる源となった。日本には、仏教とともに流入したが、呪術、占術の活用が主であった。
一〇世紀に賀茂家が陰陽道を専門とした。陰陽師安倍晴明が現れ、両家が世襲することとなった。以後、秘伝とされ、陰陽の発展は遅れた。昔から賀茂と安倍の対立?
二、「六然」対極の理法
1、自ら処するに超然。物に囚われるな。
2、人に処するに藹然(あいぜん)。人に接するには楽しく。
3、有事には斬然(ざんぜん)。ことあれば毅然と対処せよ。
4、無事には澄然。事なきは水の如く澄んだ気で。
5、得意淡然。良い時は、あっさり。
6、失意泰然。
「六中観」安岡正篤
1、 忙中閑あり。真の閑は忙中にのみあり。 2、苦中楽あり。いかなる苦にも楽がある。 3、死中活あり。窮すれば通ず。
4、壷中天あり。独自の世界。
5、意中人あり。共に隠棲できる友を持つ。 6、腹中書あり。腹に納める哲学。
「不動心」とは、一休禅師いわく、「猛勢なる駒の如し。勢いよく、必至に回るがゆえに動かず。石のように漫然存するのみはこの境地にあらず。」陰陽的思想なくばこの発想はない。
以上