菜根譚前集7.

淡白で平凡に生きることは大切。


北大路魯山人は、才能に恵まれた人。
しかし、彼は本当は平凡でありたかった。

気ままに生きることが、異能を発揮していった。
それが幸せかと言うとそうではなかった。

本文


菜根譚 前集七 


淡々として平凡に生きる 


本当に美味しいものは、いつ食べても美味しい。濃厚な味付けや、甘いものや辛いものは、その時うまいと感じても、日常いつもは食べられない。真に美味しいものとは、淡白なものである。

これと同じように、人についても、他に抜きん出る頭脳明晰な人、能力才能に恵まれた人は、必ずしも道を究めた至人ではない。

本当の至人は、只々、平々凡々な人である。



一、味は通常、①酸 ②苦 ③甘 ④辛 ⑤塩 。禅宗は、⑥淡を加えて六味を説く。

荘子曰く、「至人は己なく、神人は功なく、聖人は名なし」とある。


二、北大路魯山人(1883~1959年)美食家

京都市上賀茂北大路町、上加茂神社の家に生まれる。母の不貞によりできた子で、それを恨んだ父は、割腹自殺を遂げた。この出自にまつわる鬱屈は終生払われなかった。六度の結婚はすべて破綻。二人の男児は夭折。唯一の娘は勘当。天涯孤独。TVのホームドラマで号泣。

美食家。1925年東京永田町に高級料亭「星岡茶寮」始める。そもそも星岡茶寮の地は、日枝神社境内の風光明媚な星の奇麗な丘であった。神社経営から土地は売却され、1881年岩倉具視らが、茶会の場として茶寮を設立。その後、関東大震災後、魯山人らが美食倶楽部とした。1945年空襲で焼失。戦後、東急五島慶太が購入、屋号だけが残る。

パリの鴨料理トゥールダルジャンで、わさび醤油をかけて食べ、顰蹙ひんしゅくを買う。

随筆引用  「この頃、食って旨いものに合鴨、アヒルがある。合鴨の青首はアヒルと同じ格好で区別がつかぬ。しかし、煮てみると、前歯で皮がブツブツと切れるのが、合鴨。切れないで、いつまでもシネシネしているのが、アヒル。水鶏(くいな)は冬より夏の方が旨い。鴨も夏、池に残っているものは旨いだろう。美食は、河豚に止めを刺す。その証拠には、河豚が出ると他のものは食えぬ。河豚の刺身に優る刺身はない。河豚の身皮(三河)の間の遠江(とおとおみ)という所は皮より旨い。 鴨と河豚は、淡かも。

三、足立美術館に魯山人館。二〇二〇年にオープン予定。織部焼の大家として国宝に推薦されたが、本人が拒否。


織部焼



トゥールジャルダン

エリザベス女王がお好きな席