2月23日 県議会定例議会が 開会いたしました。


 第318回定例県議会(平成27年2月23日)

 知 事 提 出 議 案 説 明 要 旨 を 掲載いたします。



県政運営の基本方針 

主な取組


1.本県産業の発展やしごと・働く場を創出する取組


2.2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機とする国際観光、文化発信、国際交流、スポーツ振興、にぎわいの拠点整備の重点的取組

3.健康づくり、医療・福祉、こども・女性・学びの支援、にぎわいのある住みよいまちづくりの推進と防災力の向上を図り、くらしやすい奈良を創る取組

4.南部地域・東部地域のさらなる振興に向けた取組


 本日、平成27年度当初予算案をはじめ、平成26年度補正予算案など多数の案件を提出して、県議会のご審議をお願いするに当たり、議員各位をはじめ、県民の皆様のご理解とご協力を賜りたく、新年度の重点施策を中心に所信を申し上げます。

 私は、知事就任以来、「地域の自立を図り、くらしやすい奈良を創る」ことを県政の目指すべき目標として、その実現に向け、統計やアンケート調査などにより、課題を取り巻く現状について分析し、その結果を踏まえた戦略に基づき、取組を進めてまいりました。
 特に、他府県に比べ遅れている分野においては、先進県をベンチマークとし、絶えず追いつく努力を重ねてきました。その成果として、例えば、医療の分野では、周産期医療などの改革が進み、県の医療は良くなってきました。一方、経済のように構造的な課題があり、他府県に追いつけていない分野もあります。また、今後、人口減少、高齢化が急速に進むことも予想されます。
 国においては、人口減少克服・地方創生の実現に向け「まち・ひと・しごと創生本部」が設置され、「地方の自主的な取組を基本とし、国はこれを支援する」との考えが示されました。
 現在、国や大企業主導で地方に利益が落ちる「トリクルダウン」は機能しなくなっている状況であり、奈良をより元気にするためには、さらに知恵と工夫をこらし、自発的・自主的に取り組む必要があります。
 このため、平成27年度は、本県が持つ資源をフルに活用するとともに、国の権限、ノウハウ、人材等と全面的に協同しながら、産業やしごとの創出、子育て・女性への支援、健康づくりの推進や教育の振興など、各分野の政策課題に果敢に取り組み、本県独自の地方創生を目指してまいります。


 来年度の予算編成においては、このような考えのもと、地方創生の実現に向けた国の施策推進の動きとうまくマッチングさせながら、平成27年度当初予算と26年度補正予算を一体として編成するとともに、4月に実施される知事選挙及び県議会議員選挙を念頭に置き、新たに判断を要する事業や公共事業の新規箇所等についてはこれを計上しない方針といたしました。
 ただし、新規性のある施策等であっても、県行政の継続性や県民生活の安定を考慮し、国の動きに合わせるなど、方向性を定めて既に準備を進めてきたものや、年度初めからの取組が必要なもの、さらに、市町村、関係団体との関係から不都合が生じないよう考慮すべきものにつきましては、当初予算案に計上したところです。
 その結果、一般会計の予算規模は合計で4,793億1,000万円となり、同様に当初予算と補正予算を一体として編成した前年度に比べて2.5%の減となりました。
 以下、平成27年度当初予算案及び26年度補正予算案につきまして、主な取組を簡潔に説明いたします。


 まず、1つ目は、「本県産業の発展やしごと・働く場を創出する取組」でございます。

 本県の経済構造を改革するため、産業・雇用に大きな効果をもたらすと考えられる、生活関連製造業、小売業、医療・介護・福祉産業の3つをリーディング分野に、また、宿泊産業、農業、料理・飲食業、漢方、林業・木材産業、教育・研究・文化関連産業の6つをチャレンジ分野に位置づけ、これまで分野ごとの構造や特殊性を洗い出してきました。その結果を踏まえ、部局横断プロジェクトにより、産業ごとに必要な施策を強力に進めます。あわせて、県内中小企業の研究開発やブランド化などの新たな取組に対し、クラウドファンディングの手法を活用して、資金を供給する仕組みを構築します。
 また、京奈和自動車道及び西名阪自動車道の周辺地域における工業ゾーン予定地の調査・抽出や、京奈和自動車道御所インターチェンジ周辺における産業集積地の形成、インフラの整備など、企業が立地しやすい環境整備に取り組みます。

 県内の個人消費は、昨年4月の消費税率引き上げによる反動減からの回復に遅れが見られます。県と市町村が連携してプレミアム商品券を発行するほか、協賛プランを実施する宿泊施設と連携したプレミアム宿泊券や、障害者就労施設等の授産品等を購入できるプレミアム商品券など、県・市町村を合わせ、合計100億円規模の商品券の発行を見込み、年間を通して県内消費を喚起します。
 また、新年度からは、「日本書紀」に重点を置いて、「記紀・万葉プロジェクト」を推進するなど、引き続き奈良の魅力向上を図るとともに、首都圏を中心に観光キャンペーンを展開するなど、より一層魅力の発信に力を入れてまいります。

 若者の就労は、奈良の活力を維持し少子化対策にもつながるものです。県内外の大学と連携した企業説明会や出張相談を実施し、県内での就労を促進するとともに、就労が困難な若者等を対象として、就労体験の場を提供し早期就労を支援するなど、これからの奈良を支える若者の就業支援に力強く取り組みます。
 また、具体的なビジネスプランを検討している起業希望者を掘り起こし、実践的な知識を身につける勉強会の開催や専門家による相談・支援などにより、しごとの創出を図ります。

 産業としての農林業の振興のため、奈良のおいしい「食」づくりの充実と、県産食材にこだわったレストランの開設を始めとする首都圏等での販路開拓などに積極的に取り組むとともに、品質によるブランド認証制度を構築します。また、食と農のトップランナーを養成する「なら食と農の魅力創造国際大学校」の平成28年4月の開校を目指します。
 さらに、「高級材を選んで出す林業」から、「根元の太いところから、これまであまり利用してこなかった細い幹や枝まで全てを搬出して多用途に供給する林業」への転換を進めるとともに、全ての材の受け皿の確保と製品の安定流通を実現する木材産業の構築に取り組みます。


 2つ目は、「2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機とする国際観光、文化発信、国際交流、スポーツ振興、にぎわいの拠点整備の重点的取組」でございます。

 まず、国際観光の振興のため、外国人によるSNSを活用した情報発信や、スイスなどの新たな市場の開拓など、ターゲットを明確にして奈良の魅力を効果的に発信します。また、「(仮称)奈良県外国人観光客交流館」を整備し、その一部をこの夏に先行オープンさせるほか、外国人観光客が求める観光情報を掲載した多言語ガイドブックを制作するなど、奈良にお越しいただいた外国人観光客へのおもてなし環境の整備を進めます。さらに、新公会堂と奈良公園シルクロード交流館を「奈良春日野国際フォーラム」として一体的に運営するとともに、多くの集客交流が見込まれるイベントの誘致を図ります。

 奈良の持つ深い歴史文化を国内外に発信するため、古代奈良を舞台に「日本のはじまり」をテーマにした2020年大河ドラマの誘致活動を展開するとともに、奈良の文化資源活用・創造を推進するための拠点となる「(仮称)奈良県国際芸術家村」の基本構想を策定いたします。また、6月には4回目となる「ムジークフェストなら」を開催するとともに、秋に開催する「奈良県大芸術祭」では、県主催事業をはじめ、文化芸術団体等との連携による様々なイベントを拡大、発展させ、平成29年度に本県で開催する「国民文化祭」につなげていきます。

 東アジアをはじめとする諸外国と歴史的につながりの深い奈良の強みを活かし、国際会議を誘致・開催します。また、中国陝西省、韓国忠清南道、ベトナムフートー省との友好提携等に基づく友好交流をさらに深めるとともに、スイス・ベルン州など、異なる文化圏との国際交流も積極的に促進します。
 さらに、外国人にとって住みやすく訪れやすい奈良にするため、多文化共生・国際化推進に向け、さらなる取組を進めます。
 東京オリンピック・パラリンピックで本県出身の選手が数多く活躍できるよう、トップアスリートやスポーツ指導者の育成に取り組むとともに、スポーツ医科学の研究機能を有し、本県スポーツの強化支援拠点となる奈良県トレーニングセンターの検討を進めます。また、冬の風物詩として定着した奈良マラソンをはじめ、新たに相撲発祥の地を活かしたツアーを実施するなど、スポーツイベントの充実に努めるとともに、昨年七月にオープンした「スイムピア奈良」において、障害者の方に対する利用料金の減免を行うなど、だれもがいつでもスポーツを楽しめる環境の整備を図ります。

 奈良観光を世界有数の国際級のものとするため、昨年12月にホテル事業にかかる優先交渉権者を決定した県営プール跡地において、ホテルを核とする賑わいと交流の拠点を整備するとともに、大宮通りを中心として、奈良公園、県庁周辺、平城宮跡を一体的に整備します。また、馬見丘陵公園において、この春に約30万本の花で関西の都市公園トップクラスのパノラマ景観を創出する「馬見チューリップフェア」を開催するなど、地域資源を活用したにぎわいの拠点整備を推進します。


 3つ目は、「健康づくり、医療・福祉、こども・女性・学びの支援、にぎわいのある住みよいまちづくりの推進と防災力の向上を図り、くらしやすい奈良を創る取組」でございます。

 平成34年度までに県民の健康寿命を日本一にすることを目指し、「なら健康長寿基本計画」に基づき、健康寿命を延ばすための取組を市町村等と連携して着実に進めます。とりわけ、健康寿命の延長に寄与する「禁煙」「減塩」「がん検診」に重点をおいて、モデル市町村で研究を進めてきた有効な取組を広く県内市町村に普及してまいります。
 また、高齢者等が、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、医療、介護、介護予防、住まい、生活支援などを一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築を推進します。

 高度医療を担う奈良県総合医療センターの移転や、県立医科大学附属病院E病棟、南和広域医療組合による急性期を担う南奈良総合医療センターの3つの医療施設の整備を着実に進めます。
 このほか、効率的かつ質の高い医療を確保し、医療機能の役割分担と連携を進めるため、地域医療ビジョンを策定するとともに、地域医療を担う医師・看護師の確保や、患者の立場に立った質の高い総合的ながん対策に取り組むなど、引き続き、医療提供体制の充実に努めてまいります。

 新たな「奈良県障害者計画」に基づき、障害者支援に取り組むとともに、「奈良県障害のある人もない人もともに暮らしやすい社会づくり条例」を制定し、障害を理由とした差別の解消や、障害のある人の権利擁護、県民理解の促進に関する施策を推進します。
 また、認知症高齢者とその家族の生活実態等を調査し、見守り体制の構築などの新たな認知症施策を検討するなど、高齢者支援体制の充実を図ります。

 「子どもを生み育てやすく、子どもが健やかに育つ奈良県」を実現するため、今年度中に策定する「(仮称)奈良こどもすくすく・子育ていきいきプラン」に基づき、結婚期以前から子育て期にわたるライフステージを通した切れ目のない施策を推進するとともに、結婚や子育ての希望をかなえるため、行政やNPO、企業等、地域の様々な主体の協働による支援活動の充実などに取り組みます。
 また、女性の起業支援を充実するなど、女性の能力を活かした就労支援や、ワーク・ライフ・バランスの推進に取り組むとともに、「(仮称)女性の活躍促進会議」を開催し、県の基本方針と施策の方向性を検討するほか、女性の活躍を促進する計画を策定します。

 「総合教育会議」を設置し、学力・学習意欲、規範意識及び体力の向上という本県の教育課題の解決や就学前教育の充実など、教育力の向上を図る取組について検討するとともに、市町村が参加する「(仮称)奈良県教育サミット」を開催し、実効性のある取組にしていきます。また、県立高校へ空調設備をモデル的に設置するとともに、御所実業高校グラウンドへの人工芝の設置や、公立・私立幼稚園の運動場芝生化を促進します。

 県民が愛着と誇りを持つことのできる美しいまちづくりを推進するため、「きれいに暮らす奈良県スタイル」の推進を図り、「奈良県植栽計画」に基づく植栽整備や、大和川の清流復活、ごみの減量化などに取り組みます。
 また、現在の奈良県総合医療センター周辺や県立医科大学周辺での健康長寿のまちづくりの検討を引き続き進めるとともに、まちづくりに前向きでアイデアや熱意がある市町村とは、その方針が県と合致するプロジェクトについて、奈良モデルの新しいスキームとして、連携協定を締結し、協働してプロジェクトを進めるなど、にぎわいのある住みよいまちづくりを推進します。

 27年度の国の予算において、自衛隊のヘリポート整備について、本県が整備を予定している広域防災拠点との共同検討のための経費が計上されました。今年度の調査費計上に引き続き、来年度、国と県が一層連携を深め、さらに進んだ検討を行うことは、自衛隊駐屯地の誘致において大きな前進であります。今後、誘致活動をより一層強化するとともに、県の広域防災拠点整備やアクセス道路の検討を進めます。また、道路、河川等インフラの長寿命化対策や耐震対策を促進するなど、防災力の向上を図ります。


 4つ目は、「南部地域・東部地域のさらなる振興に向けた取組」でございます。

 紀伊半島大水害からの復旧・復興については、今年度末までを集中復旧・復興期間と位置づけ、全力で取り組んでまいりました。その結果、道路、河川、砂防等の工事は順調に進み、すべての避難が解消されるなど、復旧については、概ね完了する見通しとなりました。
 これからは、「復旧・復興」から、さらなる「地域振興」へとステージを移し、南部地域・東部地域の振興に積極的に取り組んでまいります。「頻繁に訪れてもらえる地域になる」、「住み続けられる地域になる」という2つの目指す姿の実現に向けて、市町村、地域と連携・協働して、地域の資源を活かした特色あるイベントを開催するとともに、移住、二地域居住を促進するための拠点施設の整備などの取組に対して支援を行います。


 以上の取組のほか、「奈良県エネルギービジョン」に基づくエネルギー政策の推進、「日本一安全で安心して暮らせる奈良の実現」を目指した犯罪抑止及び交通事故防止対策の推進、人権を尊重した社会づくり、マネジメントの考え方を全面に取り入れた効率的・効果的な基盤整備についても、引き続き手を緩めることなく取り組んでまいります。
 また、依然として厳しい状況にある市町村財政の健全化を支援するため、市町村の公営企業が行う高金利地方債の繰上償還に要する経費について、市町村の一般会計から公営企業に繰り出される経費を対象として無利子貸付及び助成措置を新たに講じることといたしました。

 只今説明申し上げましたのは、27年度議案の議第1号から議第16号と、26年度議案の議第110号及び議第111号の一般会計及び特別会計予算案における主要な施策の概要です。
 予算案とあわせて、予算外議案として39の議案を提出しました。これらは主として、申し上げた予算案に関連して、当面必要とする条例の制定及び改正案等ですが、個々の説明は省略させていただきます。
 このほか、詳細につきましては、関係部局からの説明及び予算概要など別途関係資料によりご承知いただきたいと存じます。

 奈良県には、昭和40年以降たくさんの人が転入されてきました。県では、新たに奈良に来られた人、また、以前から奈良でお住まいの人はもちろん、これから奈良に転入してこられる人も含め、全ての奈良県民が、楽しく快適に、安心して暮らすことのできる奈良の実現に取り組んでまいります。
 最後に、提出いたしました議案につきましては、何卒慎重にご審議のうえ、よろしくご議決いただきますようお願いいたします。