さて、前回は「グリムの法則」という子音推移がどのようなものであるかということを説明しました。今回は、グリムの法則を実際に体験してみたいと思います!

改めてですが、ペスカトーレ(Spaghetti alla pescatora)はイタリアのパスタであり、pescatoraというのはイタリア語です。では、イタリア語は「何語派」なのでしょうか。確認です。

イタリア語は、「イタリック語派」に属する言語であるということが分かります。つまり、ゲルマン語ではないので、
ゲルマン語以外の語派 > 英語

という図式で考えることになります。

では、もう一度「グリムの法則」を表した図を見てみましょう。
<印欧祖語>     <ゲルマン祖語>
① 有声帯気閉鎖音>有声無気閉鎖音
    bh    >   b
    dh    >   d
    gh    >  g  

② 有声閉鎖音>無声閉鎖音
    b    >   p
    d     >    t
    g    >   k  

③ 無声閉鎖音>無声摩擦音
    p    >   f
    t     >   θ
    k    >   x  >(h)


今回はpesca-なので、おそらく英語ではfesca-と変化しなければならないのではないか、という推測をすることができます。しかしながら、fesca-だけでは何のことだかわかりません...! これを明らかにするためには、イタリア語へと派生する前の言語である、ラテン語へと戻らなければなりません。※これについては後述

pesca-は、ラテン語のpisc-という語から来ています。つまり、先ほどの fesca-はfisc-であるということがわかりました。どうでしょうか、なんとなく気がつきましたでしょうか?

そう、答えはfishです! 実はグリムの法則だけでは推測できないところもありましたが、なんとか答えにたどりつけました! 難しかったですね...! やり方を間違えた気がします! w

本当はグリムの法則はもっと有用なので、以降でもたくさんの例を挙げていきたいと思います。

※補足
実はグリムの法則以外にも、3つの音韻変化のルールを扱いました。
① 古英語のscは/sk/>/ʃ/へと「口蓋化」を起こす
② /ʃ/という音は、中英語でshと綴られるようになる
③ ラテン語の短母音iはeと綴られるようになる

①, ②については英語史的な変化なので、次回以降のエントリーでしっかりと扱います。