姫路城…な俺…。

旅。

それは子供を大人へと成長させ、大人をあの頃の童心へ返す…

今まさに一人旅を始めようとしてる俺は、一体どちらなのだろか…

なんて事を考えているうちに、美しい流線形を先端にこしらえた、新幹線がホームに滑り込んできた。

さぁ、始まり始まり。

今回の目的は姫路城。

天守閣の工事をしていて、その模様は今後二度と見られない。

「二度と見られない…」はとても甘美な響きである。

そんな日に限って朝寝坊…

姫路城を見学出来るのは１６：００まで。

しかし、ホームページで確認すると、夏季は１７：００までやっているらしい。

神は見捨てなかった。

そんな遅れを取り返そうと、希望の「のぞみ」に飛び乗り、幸せそうな親子で溢れている自由席を確保する。

駅弁なんて買っちゃったくらいにして、それはそれはもういい旅夢気分。

程なくして、品川…

そして新横浜…

多少のうたた寝なんかぶっこいてるうちに名古屋…

この分だと目的の姫路城を、一時間強は堪能出来るな。

京都…

この辺りから車内の喧騒に、「はんなり」や「でんがな」が混じり出す。

新大阪…

早く着かないか…と、もういても立ってもいられない。

新神戸…

ここまでくると我慢も限界で、少しでも目的地に近い先頭車両に歩を進める。

そんな気持ちとも知らず、安全に安心に時刻通り、次の停車駅に到着した。

…

姫路…通り過ぎてね？

…

停まらねぇ「のぞみ」…

今から戻ると…姫路、１７：００着。

姫路城…１７：００まで…

…

うあぁぁぁ！！

のぞみを失った男の頬は涙でひかり、悲鳴だけが岡山のホームにこだました…



うまい…

が…

つらい…