こんにちは!山崎光春です。

東京大学の研究チームは、産業技術総合研究所と共同で、金属並みの高い熱伝導率を持ちながら柔らかく絶縁性のある新素材を開発した。[1]

## 従来の課題

スマートフォンやウェアラブル機器の高機能化に伴い、電子部品からの発熱密度が増大している。そのため、発熱を適切に放熱する放熱シートが求められていたが、従来は金属並みの熱伝導率(10W/mK以上)と、ゴムのような柔らかさ(ヤング率100MPa以下)、電気絶縁性を併せ持つ材料が実現できなかった。[1]

## 新素材の特徴 

今回開発された新素材は、環動高分子ポリロタキサンを母材とし、水中プラズマで表面改質した高熱伝導性の窒化ホウ素フィラーを加えたものである。この材料は、厚み方向の熱伝導率が金属並みの11W/mKと高い値を示した。[1]

窒化ホウ素フィラーは板状の単結晶構造で、板面に沿った方向に高い熱伝導性(392W/mK)を持つ。そのため、ゴムと複合化する際にフィラー板面を揃えて配向させる必要があった。[1]

## 配向制御技術のポイント

従来は電界強度が不足したり、長時間印加でゲル化が生じるため、十分な配向ができなかった。研究チームはパルス交流電界を採用し、電極配置を改良することで電界強度を従来から50倍に高めた。これにより、短時間の印加でゲル化を抑制しながら、窒化ホウ素フィラーの配向度を高めることに成功した。フィラーが電界印加方向に整列したことで、高い熱伝導率を実現した。[1]

この新素材は、発熱対策が必要な電子機器への応用が期待される。金属並みの熱伝導性と絶縁性、柔軟性を併せ持つ点が特徴的である。[1]

Citations:
[1] https://apps.dtic.mil/sti/tr/pdf/ADA351699.pdf
[2] https://www.ectc.net/program/74-ECTCFinal-Web.pdf
[3] https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/docs/ar2022.pdf
[4] https://www.leibniz-gemeinschaft.de/en/research/leibniz-competition/funded-projects
[5] https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/docs/youran2019.pdf