この記事は大変長いので マツ枯れの原因に関心のある方だけお読みいただければと思います。日本の山が病んでいる状態に国はどのように対応しているのか、政治家の国会での審議のやり取りを議事録から 花咲爺が一語一句、転写し作成しました。

 

マツ枯れ、ナラ枯れが止まらないわけ!!

 過去に国会でこのような議論があったということを後世に残したいので記事にしました。特に森林や環境問題に取り組んでいる方や、これからの時代をリードする若手の議員さんに読んでいただけると嬉しいです。

     

 

 

第百四十回国会衆議院農林水産委員会議録

 この会議録は長文になります。マツ枯れ、ナラ枯れや果樹の衰退等の原因を追究・研究をお考えの方は、是非ともお読み下さい。

 

 この百四十回国会には、マツ枯れ原因をマツノマダラカミキリが媒介するマツノザイセンチュウであるとし(虫因説)、20年間実施してきた「松くい虫防除特別措置法」を廃止し、この法律の内容である特別防除・特別伐倒駆除等を恒久法である「森林病害虫等防除法」に組み入れるため、「森林病害虫等防除法の一部を改正する法律」案が提案されたものです。

 

審議内容 

斎藤鉄夫委員

  新進党の斎藤であります。改正する森林病害虫等防除法の一部を改正する法律

 案について質問します。松くい虫の被害が現在でもおさまっておりません。日本全

 国でこの被害の深刻な状況が続いております。私は広島県でございますが、広島で

 高速道路を走りますと、その両側は、まさに死の山が続いている。枯れた松の山が

 延々と続いております。新広島空港、国際線もたくさんございますが、外国から来

 られて方が、広島空港に降り立って、高速道路を使って広島市内に入ってくる。そ

 の間じゅう、両脇はもう死の山が続いております。まさに日本の一番恥ずかしい部

 分を外国から来られた方に見られているような気がするわけであります。

  森林というのは、海洋と並んで我々の生存に根底から支えているものでございま

 す。その森林が今や死に絶えようとしている姿をそこに見るわけ ですが、我々の

 将来の姿を二重写しで見るような気がいたします。そういう意味で、何とか、我々

 の生存を根底で支えている森林を守りたい、こういう観点からいろいろ質問をさせ

 ていただきます。

  まず、今回、この森林病害虫等防除法の一部を改正する法律案、これは松くい虫

 防除特別措置法が昭和五十二年、五年の時限立法でできたわけですが、三回延長さ

 れまして、二十年間続いてきました。この時限立法である松くい虫防除特別措置法 

 を廃止して、その内容を森林病害虫等防除法、恒久法であるこの防除法の中に取り

 入れるということでございますが、この松くい虫防除特別措置法二十年間の評価、

 総括、これをまず農水省としてどう考えていらっしゃるのか、お聞きしたいと思い

 ます。

 

高橋勲林野庁長官

  松くい虫の被害対策につきましては、森林病害虫等防除法に加えまして、昭和五

 十二年にご指摘のように松くい虫防除特別防除法を制定しまして、五十七年、六十

 二年、平成四年と改正してまいったわけであります。五十四年度に二百四十三万立

 方に及んでいた被害が、平成七年には四割程度の百一万立方にまで減少しておりま

 す。それから、被害地域の著しい拡大、これも停

 止してきておりまして、あと、保全すべき松林においては激しい被害の抑制が進

 む、こういうふうに、松くい虫の被害の鎮静化に一定の効果を上げてきたとおもっ

 ております。

  しかしながら、松くい虫の被害量は、なお百万立方という高い水準でございます

 ので、それから一たん被害が軽微になった地域におきましても、気象要因等によっ

 ては再び激しい被害状態に陥る危険性がある、そういうふうに認識しておりまし

 て、引き続き被害状況に対応した適切な対策が必要であると考えております。

  

斎藤鉄夫委員

  二十年間それなりに効果があった、被害材積が二百四十三万立方が百一万立方

 になった、鎮静化に役立ったんだ、この法律の存在意義はあったんだ、こういうお

 答えかと思います。しかし、当初は、一回のこの五年の時限立法で、二、三年も空

 中散布をすれば、特別防除をすればなくなる、こう言われていたのが結局二十年も

 かかって被害は半分ぐらいにしかなっていない。 

  また中国地方では、逆に被害は増えております。一生懸命空中散布をした割に

 は、被害は増えております。そういうことで、私が評価、総括と違いますけれど

 も、その点につきましてはまた後で質問させていただきます。

 今回、まだ被害材積として百一万立方もある、おさまっていない、そういう状況

 にあながら、この時限法を延長するので恒久法の中に組み入れて対応した理由でご

 ざいますけれども、前回の延長、五年前の延長からこれまでに何か五年前と違う情

 勢の変化があったのかどうか、また、終息に向けてどのような見通しを持っている

 のか、お伺いいたします。

 

高橋勲林野庁長官

  前回の改正してからの変化は、被害量がある程度終息と言いますか、百万立方の

 水準に落ちてきたこととか、被害地域の著しい拡大が停止しているということで、   

 緊急に防除を行うための時限的な特別措置として認められてきた特別防除の直接実

 施の必要性、これが乏しくなったことが情勢の変化でございまして、しかしなが

 ら、それで放置しますと、一たん軽微になったところでもまた数年後に被害が再激

 化する可能性もある、それで被害木の破砕ですとか焼却、そういうものを内容とす

 るような特別伐倒駆除命令、こういう特に効果の高い措置を必要に応じて機動的に

 発令し得る制度は整備していきたいと考えております。

  今後は、特別伐倒駆除、樹種転換、そういう防除に加えまして、、被害木の早期

 発見のための対策や感染源を除去するための森林の適切な整備、これを一層拡充し  

 て推進しまして、激しい被害のさらなる抑制と再激化の防止を図ることによって被

 害の終息が早期に図れるように最善を尽くしていきたいと考えているわけでありま

 す。

 

斎藤鉄夫委員

  特別措置法を恒久法の中に組み込むその理由についてはよく理解ができました。

 この特別措置法、松くい虫被害をなくすために二十年間非常に御努力をされてき

 た。その二十年間の努力にもかかわらず、松くい虫被害と言いましょうか、松の枯 

 れ死、松林の荒廃、これを防ぐことができなかった。その主な理由はどういうよう

 に総括されておりましょうか。

 

高橋勲林野庁長官

  終息させるという目標に向かって、達成できなかった大きな理由としましては、

 高温少雨、風雪害、そういうマツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウの増殖  

 の加速を招くような気象状況が発生したということ、それから樹種転換、これが停

 滞しております。それから、除間伐のおくれ等に伴いましてマツノマダラカミキリ

 の繁殖源の増加というものがみられております。それから被害木の見落としという 

 ことで、駆除措置が徹底していない、こういうことが、要因が重なってなかなか終

 息に至らない理由と考えております。

 

斎藤鉄夫委員

  被害を終息できなかった理由は、一つは気象その他、被害木を見つけられなかっ

 た、いろいろ理由がございました。

  それも一つの原因かと思うのですけれども、最近、新しい学説が出てまいりまし

 た。それは、松くい虫被害の主犯は松くい虫ではないという言葉、ちょっと矛盾し

 ているのですが、要するに、広がった松の枯れ死、松林の荒廃、その主犯は松くい

 虫である。松くい虫がマツノザイ松くい虫特別措置法センチュウという非常に小さ

 な線虫を運ぶ。その松くい虫が松を食べているときに、マツノザイセンチュウが松

 の中に入って、その中で繁殖をし、それが松枯れを起こすのだ。これが松くい虫主

 犯説でございます。

  この松くい虫主犯説によってこの二十年間、松くい虫特別措置法という法的裏付

 けを置いて、主に特別防除、つまり農薬の空中散布が行われてきたわけであります

 が、この特別防除を本当に一生懸命やってきながら効果が上がらなかったその原因

 は、松くい虫主犯説そのものが間違っていたのではないか、こういう学説が出てま

 いりました。

  その学者にお会いして、いろいろ学説、また実験場等見させていただきました。

 その学者の説によりますと、環境主犯説と言いましょうか、大気汚染、酸性雨であ

 るとかそれからディーゼルエンジンの微粒子が松の気孔に入る。松の葉っぱという

 のは構造上非常に大気汚染に弱い構造になっているのだそうですが、そういう微粒 

 子の影響等によって、また酸性雨による土壌の劣化、こういうことによって、松の

 体力そのものがなくなる。松の体力がなくなったところに松くい虫が行ってマツノ

 ザイセンチュウを運びマツノザイセンチュウが体力のなくなった松に繁殖をする。

 ですからマツノザイセンチュウが松枯れの原因ではなくてまつくいむしとkそもそ

 も大気汚染が原因なのだ。環境の方が主要因なんだという学説であります。

  実験結果を見ますと、確かに元気な松に松くい虫を巣くわせてマツノザイセンチ

 ュウを繁殖させようとしても、元気な松ではマツノザイセンチュウは繁殖しないそ

 うです。そういう実験結果がでております。また、情況証拠的にも、例えば高速道

 路に面している山は松林は本当に枯れている。頂上を過ぎましてその裏側に行きま

 すとほとんど松枯れは見られない。広島県も確かにそういう状況でございます。

  ここで学術論争をするつもりはありませんが、松くい虫主犯説でこの松くい虫特

 別措置法、特別防除をやってきたその主犯説そのものが根底が間違っていたから効

 果が上がらなかったのだ。こういう説に対してどうお考えでしょうか。

 

高橋勲林野庁長官

  松くい虫被害の原因は、そういう最近の学者の説もございますが、やはりマダラ

 カミキリが運ぶマツノザイセンチュウであるということが森林昆虫学とか森林樹病 

 学、そういうところで国の内外を問わずに学説、定説になっているわけでありま

 す。

  全国的にも発生している状況を見ますと、葉が秋口から急激に鮮やかな赤褐色に

 変化するという松くい虫の被害の共通した特徴を示しておりますし、それから多く

 の地域においては枯損した松からマツノザイセンチュウが検出されておりますし、

 都市近郊のほかに、大気汚染の考えられないような島など、考えられないような状

 態のところでもやはり発生している。それから、大気汚染が問題になっていなかっ

 た昭和二十年代にも百万立方に及ぶような松枯れが発生している。大気汚染であれ

 ば他の、松以外の多くの樹種があるわけですけれど、しかも、松と同じような気孔

 といいますか、松の葉っぱの形状を持った針葉樹には被害が出ていない。こんなこ

 とから、特定の環境要因によるというのは考えられない学説でございます。

  環境主因説を主張されている方は、その実験状況、そういうものをきちんと明ら

 かにして、科学的に合理的な検証を行って、広く研究者に認知されているような状

 態ではありませんで、そのような論文がきちんとした場所に発表されていると言う

 ふうには理解していないわけであります。

 

斎藤鉄夫委員

  林野庁としては松くい虫主犯説が正しい、これからもその説によって松くい虫特

 別防除を行っていくということのようであります。学術の世界ではまだこの学説は

 全く認められていない説である、ですから、今までの定説の方が正しいのだという

 ことであります。

  確かに最近の知見でありますので、学会の中では大きな流れになってきていると

 いうことはありません。しかし、いろいろな学会での発表、また実験場等が公開さ

 れておりまして、それを見る限り一つの説得力を持ちますし、情況証拠的には我々

 住民に対しては非常な説得力を持ちます。つまり、大気汚染が現実に起こっている

 ところに松くい虫の被害が激しい。

  広島の三次盆地という盆地があります。霧の都として有名な盆地でして、霧が非 

 常にきれいなところです。そこに中国自動車道が開通してから、その霧が酸性雨と

 なったということで非常に有名でございます。が四・五、四・六のそういう酸性

 霧、酸性霧の都になってしまった。その霧がたまる三次盆地に面した山の松枯れが

 非常にひどくなった、その山の頂上を超えた部分についてはほとんど松枯れが見ら

 れない、こういう調査でございます。

  また、瀬戸内海の島の頂上、こういう所で松枯れがひどい、これは大気汚染と関

 係ないのではないかということですが、地上部で発生したいろいろな大気汚染物

 質、酸性降下物、こういうものは地上から大体三百メートルから四百メートルの間

 に対流していると言われております。それ以上には行かない。風が強ければ別です

 が、普通、平穏な気象状況ではこういう対流層をけいせいしております。その対流

 層に相当する三百メートル、四百メートルの、島の山の頂上部で松枯れが発生して

 いるということであって、大気汚染に関係のない島で発生しているから大気汚染と

 関係ないのだというのはちょっと言えないのではないかというふうな説もございま

 す。

  いずれにせよ、ここで学術論争をする気はないのですけれども、環境影響という

 ことも非常に大きな説得力を持っている以上、そういうものについてもきちんと研

 究評価をしていく、そういうおつもりはございませんか。

 

高橋勲林野庁長官

  現在のこう言うふうに非常に猖獗をきわめておりますこの松枯れの原因は、学会

 的には定説になっているわけですけれども、それに対して、さらに大気汚染ですと

 か、酸性霧ですとか、いろいろそういうものが、ある意味で関与しているケースも

 あるのではないか、そういう研究も、きちんとした前提を置いて、学会の内部で発

 表できるような論文を出していただければ、そういう面で、我々もそういう新しい

 論文を見せていただきたいと思っております。

 

斎藤鉄夫委員

  では、この話は一たんこれで終わりまして、特別防除を、空中散布ですね、空中

 散布がもたらす環境影響についてお伺いしたいと思います。

 (以下略)(以上、農林水産委員会議録第四号 平成九年二月二十七日 五~七ペ

 ージ)

 

これまでの要点

1.林野庁は、依然として「虫因説」を主張していること。

2.大気汚染、酸性霧等の環境主因説を具体的に、実例を上げての説明しても、学説

  になっていないということで、無視続けているということ。

3.当初、5年間の時限立法で、2~3年間、特別防除をすれば、松枯れ終局に持ち

  込めると言っていたが、結局20年かけて半分ぐらいになったが、被害は増加し

  続けていること。

4. 当初(1977年)の5年の時限立法が、3度延長されて、恒久法である森林病害

  虫等防除法に「特別防除」「特別伐倒駆除」等を組み入れるということ。

5.空港から広島市内までの高速道路の両側で、松枯れが依然と進行し、死の山にな

  っているということ。

 

国民の皆さんはこの議事録をお読みになって、既にお分かりのことと思います!

  一日も早く、「航空機による薬剤散布」や「樹幹注入」

 は効果がなく、逆に枯れを促進する対策であることに気づ

 いて下さい!!

  某女子や林野庁OBが「効果のない対策」として喧伝し 

 ている「炭入れ」が樹木を枯れから守る方法なのです。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 このブログをお読みになって、樹木の集団枯死でお困りの地方自治体の担当者の方々、自然保護団の方からのコメントも受け付けております。共に「効果のある樹木の再生」のために「炭入れ」を行い科学的に実証し、共に歩んでいきましょう。

 

 

                        更新日:2023年11月12日