なぜ、樹は枯れていくのか(1)

 

身の回りで起きている天災と思われる事故が、実は「酸性雨」の影響で引き起こされているのではないかと思われるものをいくつか取りあげてみます。

 「酸性雨」の説明はこちらをお読みください⇒☆

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日本経済新聞に下記の報道が掲載されました

針葉樹立ち枯れ蔵王の樹氷危機 虫の食害・温暖化影響も

山形 

樹氷になりきれず枝が飛び出たアオモリトドマツ(12日、山形市)=共同

  蔵王連峰の地蔵岳(山形市)で、針葉樹「アオモリトドマツ」に立ち枯れが相次ぎ、「スノーモンスター」と呼ばれる樹氷が細ってスケールダウンの危機にひんしている。虫による食害が直接の原因だが、専門家は地球温暖化による気候変動の影響を指摘。「雪と氷の芸術」を次世代に残せるのか正念場だ。

  標高1600メートルを超える蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅周辺には、今冬も樹氷が姿を現した。マツの枝や葉に空気中の水滴が凍り付き、周りに雪が付着して木全体をすっぽり覆う。ただ、最盛期の2月中旬でも枝がそのまま飛び出て樹氷になりきれない木が散見された。蔵王温泉観光協会の伊藤八右衛門会長は「重要な観光資源の樹氷が昔と比べ、痩せて貧弱になっている。樹氷ができなくなれば大きな打撃だ」と危惧する。原因は木に葉が十分茂っていないためだ。

 

  林野庁の調査では、2013年秋にガの一種「トウヒツヅリヒメハマキ」の幼虫がマツに付き、大規模な落葉や変色が発生。食害が収まった後の16年6月ごろから、弱ったマツに甲虫の一種「トドマツノキクイムシ」が侵入し、立ち枯れが多発した。被害は約51ヘクタールに及び、最も甚大な駅周辺の「激害地」では約17ヘクタールにわたり全ての木が枯れた。降雪前の21年9月に訪れると、激害地には葉のない白い幹の木が立ち並ぶだけだった。林野庁は他の場所に自生する苗の激害地への移植や、苗木を育てるため種の採取など再生を始めた。

 

 ただ、害虫駆除のための薬剤の空中散布や、立ち枯れたマツを切り倒し蒸すなどして殺虫するといった対応は、被害地域が国定公園の特別保護地区のため、環境への影響を考慮すると難しい。食害対策は虫の監視を続けるしかないのが現状という。樹氷を研究する山形大の柳沢文孝名誉教授は、ガの発生原因について、50年前と比較し年間平均気温が約2~3度上昇したため「夏場にガが過ごしやすい環境になってしまった」と解説。再びガが襲来する可能性もあるという。加えてマツの再生には50~70年程度かかり「このペースで気温上昇が続くとマツが元通りになる21世紀末には、そもそも樹氷ができない環境となりかねない」と警鐘を鳴らしている。   

(共同〕

 

以下は、公益財団法人である「森林文化協会」が2019年に取材をうけ、朝日新聞が記事にしたものです。

 

森林文化協会 2019/05/08  朝日新聞 宮城県 全文

 蔵王山系で、冬の風物詩「樹氷」になる針葉樹・アオモリトドマツの立ち枯れが深刻になっている。県側で群生する約2千ヘクタールのうち、刈田岳山頂付近から南へ約500ヘクタールの範囲で被害が点在しているとして、林野庁は今年秋にも 自生苗の試験移植などの再生事業を始める。高さ7、8メートルに達した樹氷は「アイスモンスター」とも呼ばれ、自生林は 訪日外国人客らの人気スポットとなっている。


 東北森林管理局によると、2017年から専門家による目視調査を行った結果、刈田岳から屏風岳に向かう尾根周辺で立ち枯れが確認された。被害を受けた木々には、それぞれキクイムシによるとみられる小さな穴が無数にあり、内部が食い破られたことによる立ち枯れの可能性が高いという。担当者は「温暖化によって、木が弱るといった生育面の変化や、虫が活発化した影響なども考えられる」と話す。管理局はキクイムシを駆除するための伐採や薬剤散布なども検討したが、現地は国定公園特別保護地区に指定されている。高山帯に生息する他の生き物への影響も懸念された。


 このため、駆除に代わって選択したのが「再生」。今年度から新たに取り組むアオモリトドマツ再生事業では、試験的に自生苗の一部を採取し、近くに移植。種子も採取する。また、若い木を覆うササを伐採し、別のササに囲まれた木との生育状況を比べるテストも行う。詳しい被害状況の把握も進める。ドローンを使った上空からの調査を今年度も続ける。立ち枯れ被害は県側だけでなく、山形県側にも広がっているという。
 

 

群馬~花咲爺さんのコメント

 2013年にガの一種「トウヒツヅリヒメハマキ」の幼虫がマツに付き、大規模な落葉や変色が発生し、2016年6月ごろから、弱ったマツに甲虫の一種「トドマツノキクイムシ」が侵入し、立ち枯れが多発したとのことです。トドマツは裸子植物の一種で、人類がホモサピエンスになる遥か大昔から幾多の気象変動を乗り越え、現在まで生きながらえてきました。それが何故、50年前と比較して年間平均気温が約2~3度上昇した結果と言えるのでしょうか。

 

 2013年の50年前と言えば1963年、それ以前の10年前の1950年代から何が変化したのでしょうか。燃料が木材の薪から化石燃料の石炭・石油に変わった燃料革命でした。この結果、発電所を中心とした工業地帯周辺でマツが大量に枯れ始めたのです。

 

 林野庁・環境省(以下国と言う)は虫が原因(マツ枯れの原因はマツノマダラカミキリが媒介したマツノザイセンチュウである)であるとして、「松くい虫防除特別措置法」を1977年の第80回国会で社会党等が大気汚染説や、もっと民間の研究者、学者と公開の場で調査研究を行う必要があると主張してこの法案に反対する中、自民党が多数の力で1978年4月に可決した法律でした。この原因説を一般的には「虫因説」と呼んでいるんですが、国は今でも虫が原因と言い張っております。この「虫因説」で1974年から林野庁が試験的に薬剤を散布し、法案成立後の1978年から大量に殺虫剤を飛行機から空中散布を現在まで撒き続けておりますが、50年近くに亘り空中散布を行ってもおりますが、一向にマツ枯れは終息していないのは皆さんご承知のことと思います。

 

 それではなぜ、国がマツ枯れの原因者として大量にマダラカミキリがを殺す殺虫剤を撒いても効果が上がらないのでしょうか。  樹木は、本来自己防衛機能を持っています。それは樹体から常に発散する揮発性物質(フィトンチッド=ロシア語で虫を殺すという意味)と液汁(マツは樹脂または脂)でみずからを守る機能を身に着けているのです。

 

 健全なマツは樹体に傷がつくと脂(ヤニ)を出し、自らの体を守ります。虫が侵入しようとすると、脂(ヤニ)で虫を包み窒息させ、即殺してしまいます。

 2013年にガの一種「トウヒツヅリヒメハマキ」の幼虫がマツに付き、大規模な落葉や変色が発生したのは、樹体が衰弱していた結果ではないでしょうか。健全な樹体が持つフィトンチッドを発散する力が弱まった結果ではないでしょうか。

 ですから、樹を枯らしているのは、国が盛んに喧伝している「虫」ではないのです。50年間も殺虫剤を散布しても効果がないのですから。懸命な方々なら既に御理解頂けたと思います。

 

  お読みいただいた方々、酸性雨を疑い共に対策を考えたいと思います。このまま樹木を枯らしてしまえば、森林が持つ保水力を無くし、山崩れ、土砂崩壊等の災害列島化を招くのは過去の歴史が教えてくれています。

まず、枯れた木を丁寧に伐採し、年輪の変化を調べて見てはいかがでしょうか。

 

(参考写真)スギ集団葉枯症の調査結果 

 黒田慶子先生が調査地:宮崎県西米良村,椎葉村 2005, 5, 23-25  の調査結果の写真を転載させていただきました。

 

 この写真は、葉枯れ個体と健全木の個体の比較です。黒田慶子先生は1994年の旱魃が原因と説明されておりますが、それ以降の年輪幅を確認すれば、毎年、毎年の10年間旱魃が続いたことのなりますが、如何でしょうか。しかも、国が言う「虫が原因」では、虫が6月から7月に穿孔すると、その年の秋に枯死することになっており、そうすると年輪幅には変化がないことになりますが、年輪はそれ以前の10年前から弱り始めていることを証明していることを記録しているのです。

 

 ここで、有機農業の創始者である、イギリスのアルバート・ハワード卿が提唱する「土壌」になぜ国民は注目しないのでしょうか。ハワード卿は「土壌」を次のように言明している。

 

 すべての生物は生まれながらに健康である。この摂理は、土壌・植物・動物・人間を一つの鎖の輪で結ぶ法則に支配されている。

最初の輪は=土壌の弱体と欠陥は、

第二の輪は=植物に影響し

第三の輪は=動物を侵し、人間にまで至る

 

 森林植生にみられる、共生の原理の基づく循環系、そこに生命存在のモデルを見ることができる。母なる大地から収奪した要素を還元しない化学肥料依存の農法は、近代人の肉体と精神に計り知れない影響を及ぼしている。

 

 今、全国的に樹木の枯れが発生しています。マツ枯れに始まり、ナラ枯れが続き、遂にはウメ、モモ等の果樹にまで枯死の危険性が及ぶ時代になって来ております。

 

 この問題は、ハワード卿が言明している、最初の輪の「土壌の弱体と欠陥」にあると認識しています。

 

 ここで詳しくは申しませんが、石炭・石油等の化石燃料を大量に使用するエネルギー革命の結果、大気中に硫黄酸化物を、窒素酸化物を放出しました。環境省が1983年以降の調査でも、これらの酸化物が長年の間、ph4.7~4.8の強酸性の酸性雨・酸性雪・酸性霧が大地に降り注いでいることが環境白書に記述されております。ました。

 

 大地の酸性化は、土壌内の樹木の養分であるアルカリ性物質を溶脱させ、樹木と共生する小動物から菌類までも殺し、人間や樹木に有害なアルミニウムを溶出させ、成長阻害を引き起こし、正常な生育を妨げると言われているのです。

 

 なぜ、樹木の生存を左右する「土壌」に、政治家、官僚、自治体関係者、大学教授、研究者、樹木医、そして林業に関わる多くの人々、国民に皆さんに「土壌」に留意してもらいたいと思っています。

 

最後にここで大声を揚げて言います。

  樹木を枯らしている原因は「虫」ではありません。

  原因は大気汚染=酸性雨・酸性雪・酸性霧です。

 

             参考文献

              スギ集団葉枯れ症   黒田慶子 ネットより

              ハワードの有機農業  人間選書 農文協出版

              酸性雨と酸性霧    村野健太郎  裳華房

 

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このブログをお読みになって、樹木の集団枯死でお困りの地方自治体の担当者の方々、自然保護団体の皆様、そして自宅のや周囲の樹の根腐れや、自宅の植木の状態が心配な方はコメント欄で質問をお受けしています。樹の復活が間に合う状態と手遅れの場合も想定されますので気になる方はお早目にどうぞご連絡ください。