OpenAIが2024年2月に発表した動画生成AI「SORA」による高精細で自然な動画には驚いた。
この画期的な技術である生成AIは、今後自動車業界にも大きな影響を与えていくだろう。「東京オートサロン2024(TAS2024)」ではデザイン会社の米Final Aimがヤマハ発動機と共同で開発した農業用トラクターのコンセプトモデル「Concept 451」
ヤマハ発動機は今回のTAS2024に合わせ、同社が開発した小型低速電気自動車(EV)の汎用プラットフォーム「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」の活用アイデアの提案を様々な企業に呼びかけた。その結果、TAS2024ではプロトタイプモデル7機種が出展された。Concept 451はその中の1台だ。Concept 451のデザインは従来の農業用トラクターのような、長いボンネットの後ろに運転席があり、その横に大径のタイヤを配したデザインとは全く異なる。写真参照。

台形をひっくり返したような形状〔正確には四角錐(すい)台と言うべきだろうが〕の車体の四隅に大径のタイヤを配置し、車体の上に1人乗りのシートが設置されている。そしてそのシートの周りは細い円形のパイプを4本巡らせたガードバーで囲まれ、フロントには横に6連のヘッドライトを備えている。そしてこの車両の最大の特徴はデザインプロセスに生成AIを活用していることだ。

既に実用段階に入っているのが対話型生成AIの自動車への搭載だ。CES 2024におけるプレスデー最初のプレスカンファレンスで、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)は、OpenAIのChatGPTをVWのクルマに搭載するという発表をした。従来のクルマの音声認識機能では、「エアコンの温度を上げて」「ナビゲーションの目的地を設定して」といったような簡単な文章しか認識できなかったが、ChatGPTの搭載で、より複雑な構文の文章でも認識でき、より自然な対話ができるようになる可能性がある。
ChatGPTの車両への搭載を発表、もしくは検討しているのはVWだけではない。欧州Stellantis(ステランティス)は傘下のプレミアムブランド「DS Automobiles(DSオートモビル)」にChatGPTを標準装備する方針を2024年2月に発表したほか、ドイツMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)も2024年1月から米国で約90万台にChatGPTを試験搭載すると発表した。

このほか、生成AIの応用が検討されている代表的な例が、自動運転の分野である。その代表的な例が、2023年7月にAI研究に携わる大学で構成する「上海人工知能実験室」などが出した論文「Drive Like a Human: Rethinking Autonomous Driving with Large Language Models」だろう。現在の自動運転技術では、深層学習などの技術を応用することで、歩行者や自転車、先行車両などの物体をかなり高精度で見分けることができるようになっている。

このように、生成AIの応用は、クルマのデザイン、対話、そして自動運転と、あらゆる分野で活用されようとしている。車社会も大きな変革の時期を迎えているのではないか・・・。