役員報酬の一部を隠し、日産の資産を私的流用した特別背任の罪などで東京地裁に起訴されたカルロス・ゴーンは令和元年プライベートジェット機で脱出しレバノンに逃げ込んだ。逃亡から5年目、日本の引き渡し要求にレバノンは応じない。ゴーンを連れ戻し、裁きを受けさせることは我が国の刑事司法の最大の課題だ。こんな不公正がまかり通るなら道理が引っ込む。
逮捕の際、仏マクロン大統領は首脳会談で安倍晋三元首相に「適切な処理」を求めた。だが、その後ルノーの不透明な財務が明らかになり、ゴーンの日本批判に同調していた欧米の政府、メディアの態度は一変した。ゴーンを国際手配、ICPOを通じてレバノンに身柄と引き渡しを要請した。現時点でレバノンには応じる気配はないが、ゴーンが住む邸宅の所有者である、日産関連会社からの訴えをレバノンの裁判所が認め、ゴーンに退去を求めるなど、微妙な変化が生じている。
日本国内では、ゴーンをプライベートジェット機で出国させた米国人親子が訴追され、実刑判決が出た。報酬隠しをゴーンと共謀した罪に問われた日産元代表取締役グレッグ・ケリーも有罪判決が認定された。外堀は埋まってきているのだ。


あらゆるチャネルを通じてゴーンの引き渡しを求め続けることを諦めてはいけない。だがしかし、逃亡5年目にして、人々の記憶から薄れ始めている。一時日産を短期間で奇跡的にV字回復させルノーの重臣となり経営の天才との評価まで得た男も、晩年を汚すことになった。だがそれを認めたくないのだろう。卑怯な男だ。人間の性(さが)が出た。このままゴーンが死ぬまで何も変わらない気がする。