囲碁の女流棋聖、仲邑菫(なかむらすみれ)が活動の拠点を韓国に移すとの報道に「菫ちゃんよくぞ決断した。がんばれよ」と思わずつぶやいた。仲邑菫は父、仲邑信也九段のもと3歳で囲碁を覚え、10歳でプロ入り、史上最年少の13歳11カ月で女流棋聖を奪取した天才である。慶応大学名誉教授の池井優氏がほめている。

かつて日本は世界における囲碁の頂点に立っていた。台湾、韓国から有望な若手が来日し、日本棋院で修業を積んで一流のプロに育っていった。台湾から来日し、名人8期、本因坊を5期獲得するなど大活躍した林海峰、韓国からやってきて史上初の7大タイトル制覇、公式戦1600勝の大記録を達成した趙治勲などがその例である。しかし近年、中国、韓国の囲碁は日本を遥(はる)かに上回る実力をつけるにいたった。1999年から行われている日中韓3国対抗戦「農心杯」では2023年まで日本の優勝は05年のたった1回、中国9回、韓国が15回と圧倒的強さを示すまでになった。

韓国棋院に移籍する理由を「より高いレベルで勉強することが必要、国際棋戦を重視し、強い棋士がたくさんいて緊張感をもって過ごせるから」と語る。

わずか14歳であえて囲碁の激戦地・韓国で修業しようという仲邑菫に対し、海外留学を目指す最近の日本の若者の数の低下は嘆かわしい限りだ。文部科学省によると単位を伴う長期の留学生は8万人を超えた04年から減少傾向となり、この数年は6万人前後となり、新型コロナウイルスが蔓延した20年には4万人台にまで落ち込んだ。

日米教育委員会のまとめでは、日本から米国への留学はピークだった1997年の4万7千人に対し、2021年には1万3千人となり30%にも届かない。
現在、米国で学ぶ留学生は中国29万人、インド20万人、韓国4万人のトップ3に対し、日本は8位である。