先日新聞に載っていた、吉野彰さんの発言は良かった。


彼はリチウム・イオン電池の開発を振り返って、「リチウム・イオン電池はつくづく幸せ者だ。普通の製品なら世の中に出てひとしきり普及すると、ご苦労さんで終わる。でも、リチウムイオン電池はまず、モバイル・IT機器を普及させて広がり、その普及が横ばいか、の時に電気自動車という新たな市場が出て、研究開発がまた活発になった。要素技術として世界で必要なものだ。自動車の次はロボットが待っている」・・と。確かに言われる通りだ。その意味彼もラッキーだったのだ。昭和60年(38歳頃)に彼はリチウムイオン電池を開発し、いまだに開発が後継者により続いている。
科学者を目指す若者にメッセージを、と言われ、「ずぬけて得意な科目が絶対に必要だ。将来自分の武器になる。ただそれだけでなく、全然関係ない分野も含めて広く関心を持ち続け、一般教養を身に着けること。この2つが揃うと、自分の得意分野の中で誰もが考えつかないような独創的なアイデアに結び付く。」と言っている。これまた大事なことだと私も思う。得意な専門分野プラス何か別な発想が必要で、それがその分野の独創につながる、と言うわけだ。いいことを言うな、と感心した。
今や私たちの暮らしに欠かせない電池は、1800年にイタリアのボルタが発明した。長い間電池技術の発展がその他の分野に比べ遅れていた、と私は思っていた。高い電圧と電流、そして安全性と安定性が課題だったが、遅々として進まない気がしていた。しかし、リチウムイオン電池の登場により、この20年ぐらいに革新的な進展があった。というのも、リチウムイオン電池は電圧が高く、小型で、繰り返し使っても性能が落ちにくい特性があるからだ。用途もモバイル・ITを中心に広く拡大した。今やスマホ、ノートPC、デジカメなどに欠かせない存在だ。今後電気自動車や電動アシスト自転車にも広がり、いずれロボットにも使われるだろう。
だが実は最近電池技術の発展がめざましい。今後の本命はリチウムイオンではなく、全固体電池になる見通しだ。それも遠い将来の話ではなく、この数年以内のことのようだ。だから、そうなる前に吉野さんがノーベル賞に選ばれたのは幸運だったのかもしれない。「リチウム・イオン電池はつくづく幸せ者だ。」と言うより、吉野さんが幸せ者なのか・・・(^_^)。

参考までに私の過去ブログの一節:
現在は、リチウムイオン電池が現実的、実用的なものとして全盛だ。その用途は規模によって異なり、スマートフォンから電気自動車まで多様だ。家庭用蓄電器も一部実用化されている。現在電池の重い、容量が少ない、安全性への危惧を解決できれば間違いなくノーベル賞ものだろう。新聞報道では、このほど東京工大での開発などだ。
次世代電池には以下の3つが考えられている。
 1)全固体電池
 現在電池の電解液を固体に変えたもの。新たな素材を開発して解決した。液漏れのための発熱、発火などが無くなる。蓄電量も2倍。高温にも耐える。自動車用に役する。
 2)リチウム硫黄電池
 正極に硫黄、負極に金属リチウムを使う。これにより大型化ができ、安価にもなる。寿命も10倍。家庭用に適する。
 3)リチウム空気電池
 正極に空気、負極に金属リチウムを使う。蓄電量は3~5倍、長時間の利用に耐える。