北朝鮮、韓国の国情に詳しい、麗澤大学客員教授の西岡力氏が韓国の反日感情にも色々あることを定義している。面白い。また最近アンチ反日勢力も台頭してきたという。

1945年8月の直後に、東アジアでは共産主義勢力の武力侵略が続いた。ソ連が韓半島の北半分を占領して労働党独裁政権を作り、中国で内戦が激化し中華民国が大陸から追い出されて共産党の独裁政権ができ、50年には共産軍の南侵で韓国が滅亡の危機に瀕(ひん)した。ところが8月15日の光復節での文在寅演説はこの歴史については一切触れなかった。共産主義勢力からの脅威は存在せず、日本の侵略さえなければ東アジアは平和だという親北反日がここに表れている。

そもそも、国交正常化以降の韓国の反日は、同じ自由陣営にいながら日本が容共的で北朝鮮に甘いという、「反共反日」だった。朴正煕大統領は、自分も反日派だが共産主義勢力と戦うためには感情を抑えて日本と国交を結ぶことが必要だと主張した。朴正煕政権時代、北朝鮮は日本を迂回(うかい)基地に韓国に激しく政治工作を仕掛け大統領暗殺テロまで行った。テロや工作を日本は厳しく取り締まらず、韓国を怒らせた。朴正煕政権の反日は「反共反日」だった。

82年、日本のマスコミの誤報が契機で、中国がはじめて外交に歴史問題を持ち出した。歴史教科書記述の修正を求めたのだ。当時、韓国の全斗煥政権は、共産主義勢力と戦うための韓国軍近代化資金の一部を経済協力という形で日本に負担するように求めて拒否されていた。そこで、日本の反日マスコミと中国共産党と組んで、歴史糾弾外交を始めた。その結果、40億ドルの経済支援を得た。このときから何かを得るための反日、「功利的反日」が始まった。92年盧泰愚政権が慰安婦問題を外交に持ち出した背景も、難航していた先端技術支援を得る交渉を有利にするためだった。
金泳三政権からは、国内世論の支持率を上げるためのパフォーマンスとして反日を使った。李明博、朴槿恵政権でも同じことがくり返された。これもやはり「功利的反日」だ。

日本の統治が終わって70年以上たち社会の主流は統治時代を知らない若い世代になっているのになぜ、反日パフォーマンスが人気につながるのか。その裏には80年代以降、各界各層に急速に拡散していった反韓史観がある。文在寅政権はこの反韓史観を信奉する左派勢力によって構成されている。だから彼らの反日は北朝鮮と連帯して日本と戦うという「親北反日」なのだ。それに対し文在寅政権を批判する保守派からアンチ反日の声が出てきた。朴正煕時代の「反共反日」から全斗煥から朴槿恵までの「功利的反日」を経て、文在寅政権の「親北反日」に至って方向性が180度転換した。これに気づいた保守派が、アンチ反日に立ち上がった。
韓国は反共自由民主主義という建国以来の国是を守ることができるのか。反日を巡り今、戦われている政治的、思想的内戦の結果によってその帰趨(きすう)が決まる。