巧妙な好奇心 第9幕の1 | ありそうなこと・ありそうもないこと

巧妙な好奇心 第9幕の1


0207


第9幕の1



ソロソロ出て来てもイイダロウ。幸いあたりに人影はなし。ホンネで喋ってもダレにも迷惑はかからないってワケだ。アア。オレはヒトゴロシの役。アノ黄色な・アノ気の毒なオンナのアタマを斜め45度の角度から殴りつけてコロシタ役。ナニを使って? サアベルを使って。それから。オツムさ。オレの知恵と機転。そうして。勇気。なにしろ。ヒトをコロすには。どれをとっても並みのニンゲンよりはよいモノを持ち合わせていなくちゃイケナイ。膂力も。素早くて・痕を遺さない・逃げ足・だって。ほら。見てみろ。。一流の役者であるオレサマならではのコトだからオレにはヒトゴロシの役がツトマルんだ。そんなオレが。たとえヨノナカを欺くためだとはいえ。ドーシテ。二輪馬車の運転手なんかやっていなくちゃイケナイんだ? こんなヘンテコなヘルメットを冠(かぶ)せられて。白い長靴で。まったく。ヨノナカへんてこなコトばかりだ。これほどのジンブツであるところのオレサマが。ホンネを言うために・人目をはばからなくちゃナラナイなんて。


白のブーツがよくお似合いで!

それに。素敵な鉄カブト。あご紐をしっかりと閉じて。そうしてアナタのオデコには。まだ。なんのマークもレッテルも貼り付けられてはイナイ。そいつはマズイ。白い鉄カブトはことさら人目を引きますからね。そいつが無印ダなんて。アナタはアブナイ。いったいアナタは。どんな高貴な身分の方を運ぶ御者でアルのデスか? 


それだよソレ。ソイツをこれから考えルのさ。なにしろオレサマはヒトゴロシの役で。こうして運転手の格好をしているのは他人の目をごまかすためダときているワケなのだから。ダケレド。仮初めの姿であるにせよ運転手であろうとするなら。主(あるじ)が必要になるワケだ。それらしく・もっともらしい。主が。そこのところをドーシタものか。・・・いま。思案中なんだ。


へえ。ソーですか。白い鉄カブトに白のブーツがよくお似合いのアナタ。御者さん。あなたは。現在ただいま。フリーランスというワケですな。然るべき報酬さえ得られれば。ダレだって。どんなジンブツだって乗せる・の・ですな? アナタの愛車に。


ところがオレにはクルマがない。そのことも。これから解決してイカなくちゃならない問題というワケさ。


馬車ならすぐ手に入りますよ。馬と。客車と。を揃えて。縄を捩って連結させればイイ。それとも。そこいらを走っている二輪馬車の客と御者とを追い出して。乗っ取ったらイイ。追い出すのは御者だけにして。客車の中身もそのままイタダクってのも悪かない。客の質によってはね。そうして。アナタ。アナタの鉄カブトのオデコのところにマーキングするのですその高貴な客をアラワす紋章をね。そう。ソレが手っ取り早い。さあ。早く。乗っ取っちまいなさいナそこいらに掃いて捨てるほどチロチロと走っている二輪馬車を。


悪くない。そういうやりかたも悪くはないナ。どうせ。オレは。ヒトゴロシ役の俳優だ。ワルを演じるのはお手のモノ。タニンのモノをまんまと奪い取るぐらいのコトならいつだってヤッてやるけれど。あいにく。ココは。コンビニエンス・ストアアの中・と・きている。店の中へクルマを乗り入れるヤツもいないダロウ。クルマが来なくちゃ乗っ取ルこともできない。さあ。ソコノトコロをどうしたものか。


馬車が見当たらナイのなら。御者も見当たらない。イイですか? これは。機会(チャンス)ですゼ。アナタ。なにも無理な力仕事なんかしなくったって。まんまと。御者になりすますコトが出来るってモンでしょう。つまり。アナタ。ワタシは御者なんダと言い張っちまえばイイのですよ。御者であるワタシは。たまたま。ご主人様の言いつけを履行するタメに。通りがかった。この。コンビニエンス・ストアアへ立ち寄った。のだとね。

で。主人だ。アナタは・アナタの・ご主人様・を・特定してしまわなくてはイケナイんだ。