あっという間に年末ですね。

 

もっとブログを書きたかったのですが、

いかんせん筆が遅く、下書ファイルが溜まる一方。

来年はもっと頑張ります!と言いたいところですが、

きっとこんなペースだろうと思います。

 

 

さて、今日はもやしについて語らせてください。



私は大学時代に植物生理学を専攻しており、

もやしの研究をしていました。

もやしとは、あのスーパーで売られている家計の救世主です。

 

先日、突然実験室のもやしを思い出し、

頭から離れなくなりました。

 

 

もやしは光を当ててはいけませんので、

完全な暗闇で育てます。

大学時代は、カプセルのような狭い暗室に通い、

手元に赤い波長のランプをつけ

赤色は吸収できないので影響がない)

せっせともやしを育て、収穫し、薬品に漬け、

スライスして顕微鏡で覗いていました。

 

 

研究を始めてしばらくして

数日世話をさぼってしまった時がありました。

5センチほどのかわいいもやし達を想像しながら

真っ暗闇の中で赤いランプを付けた瞬間、

40センチを超える巨大もやしが現れました。

・・・さながらムーミンのニョロニョロ。

赤く照らされているから尚更怖い。

異様な姿のもやし達に衝撃を受けました。

 

 

もやしはこのように爆発的に成長します。

縦にまーっすぐ育ち、太くはなりません。

 

 

こんな大きさでは研究に使えない。

確か実験室で使用した生体は廃棄物として処理する決まりがありました。

でも捨てるにはあまりにかわいそうで、ビーカーに移し、実験室の窓辺に置いてあげました。


 

数日後見に行くと、

なんと茎が緑になり、葉やつるが出てきました。

縦方向への成長は止まっています。

光を得たもやしは、クロロフィルを生成し、

光合成をはじめたのでした。

そして数日後に白い可愛らしい花を咲かせました。

この劇的なもやしの変化にすっかり心を奪われた感覚は、今でも鮮明に思い出せます。



先日このもやしのことが頭から離れなくなりました。

もやし関連知識がすっかり抜けていましたので、

教授にメッセージを送信。

なんでもやしってあんなに大きくなるんでしたっけ?」


もやし愛が強いハンガリー在住の先生からすぐに返信が来ました。

 

 

要約すると、

・もやしの茎には、葉を土の表面に押し上げる役割がある。

・光を探して茎は伸び続ける。

・光が当たれば伸長が止まる。

・光がある条件下で発芽すると、茎は1センチほどにしかならない。

 

だそうです。

(ちなみにここでは茎と書きましたが、

専門用語では子葉上茎epicotylと胚軸hypocotyl

 

 

このメッセージを読み、おぉ〜と深く感動しました。

植物の英知もすごいですし、人の心に通じるところがあるなと。

 

 

カウンセリングに来てくださる方は、

症状や不安をどうにかしたいといらっしゃいます。


苦しい中で光を探し求め、

なんとか適応しようとされてきた。

その結果、防衛や不安が大きくなっていった。

さながら、光を求めてぐんぐん大きくなるもやしのように。


これらは心を守ってくれる役割があるけれども、

すごく消耗し、手放したいものでもある。

 


そういった苦しみや傷ついた自分を、

自分自身そして他者に、

”気づいてもらう” ”見てもらう”

という体験は、"光"なのかもしれない。

 


光を浴びた瞬間に、防衛や不安が和らぎ始める。

本来の力を取り戻す。

エネルギーを効率よく使えるようになる。

自分らしい人生が始まる。

 

 

私が実験室の窓辺で見たマメは、生命力で溢れていました。

背が高く、凛としていて、太陽に向かい、

世界と関わろうとつるを伸ばし続け、

ひときわ色鮮やかで美しかった。

そして不思議なことに、決して折れないのです。


 

この力は、いきもの全てにそなわっている力。

私の中にもあるし、

これを読んでくださっている方の中にもあるのです。

 


もやしもなかなかすごいでしょう?

皆さまのもやしへの見方が変わりますように笑。


***

 

今年もつらいニュースが多い年でした。

心がすさんでしまいそうなときに、

目の前の方が生きる力を取り戻していかれる姿、

その過程を一緒に味わえる時間は、

私にとって、とても大切なものでした。

 

 

これを読んでくださった全ての方が、

心穏やかな年末年始を過ごされますように。



そして今年を振り返る中で、

ご自分の中の力に気づきますように。