【歌姫伝説 中森明菜の軌跡と奇跡】 

中森明菜、04年全国ツアーで総決算的な演出 アイドル時代彷彿の衣装、当時の振り付けで23曲熱唱 以後の音楽活動占う分岐点に

 

ユニバーサルミュージック内で2004年4月に発足した中森明菜の音楽レーベル「Utahime Records」。その第1弾として同年5月12日にシングル「赤い花」が発売された。同曲は当時、NHK・BS2で放送された韓国ドラマ「オールイン〜運命の愛」の主題歌で、主演のパク・ヨンハが歌うものだった。

2カ月後の7月7日には第2弾シングル「初めて出逢った日のように」を発売。これは「赤い花」を新たなバージョンで歌ったものだ。「明菜ほどのアーティストが1作品…それも韓国の楽曲を2つの詞、アレンジでカバーしたのは異例でした」(音楽関係者)

しかもパク・ヨンハのデビューアルバム「期別」の発売(6月16日)に合わせて〝競作曲〟として発売したこともあって、一部の韓流ファンの間からは「夢の日韓競作」とも言われた。

「パク・ヨンハは、アルバムの発売に合わせてプロモーション来日(6月)もしました。当時、やはりNHKで放送していた韓国ドラマ『冬のソナタ』が話題となっており、主演のペ・ヨンジュンと共にヨンハも大人気でした。それだけに来日はタイミングも良かった。横浜ランドマークで開催した発売記念のイベントでは『初めて出逢った…』の日本語バージョンを、しかも訳詞は〝明菜バージョン〟で歌い、さらに明菜にもエールを送っていました。明菜にとっては最高のプロモーションになったはずで、インパクトのあるスタートを切りました」(前出の音楽関係者)

明菜は自らのレーベルを発足する一方、全国ツアーもスタート。5月15日の神奈川・パシフィコ横浜に始まり、39歳の誕生日(7月13日)の東京国際フォーラムまで全国で18公演を繰り広げた。当時、公演初日を取材した芸能記者は振り返る。

「一言で言えば〝ベスト・アルバム〟といったコンサートでした。明菜にとっても異色のコンサートかもしれません。デビュー曲『スローモーション』から『少女A』『セカンド・ラブ』『1/2の神話』とシングルを順番に歌い、最後は『LIAR』まで23曲を熱唱しました。セットリストはワーナー時代の作品を中心でしたが、その中の18曲が1位ですから、まさにヒット曲のオンパレードでしたが、80年代の歌謡史をひもとくようなステージにファンも総立ちでした。衣装もレースのついた真っ白なドレスで、アイドル時代の明菜をほうふつとさせて印象的でした。歌の振り付けも当時のままでした。ただ、このタイミングに、何で、そんなコンサートを企画したのかは意味深いものを感じましたね。しかもマスコミの取材まで受けるサービスぶりで『最近は悪いネタがないから』と言い出し、それこそいたずらっぽい口調で『今回は意地悪なことを書かれないと思いますが、お手柔らかに…』なんて余裕の受け応えでした。記者からアイドルチックな衣装について聞かれると『(松田)聖子さんのようにブリっ子で登場してきたなんて言われちゃうかもしれませんね』なんて苦笑いしていたのは印象的でした」

その明菜も2年後の06年のコンサートが、大ホールは最後としている。音楽関係者は言う。

明菜自身の気持ちの中で、この時点で従来の大ホールでのコンサートは一つの区切りにしたいと考えていたようです。ですから、その総決算という意味を込めたセットリストと演出だったと思います。明菜にとって04年は、今後の音楽活動を占う分岐点だったと思います」

その一つかもしれない。翌05年7月に東京・品川プリンスホテル・クラブeXで11日間連続のスペシャル・ライブを行うことを明らかにした。 

下矢印2004/6/9 大阪フェスティバルホールで 一番前の席でしたラブラブ