【歌姫伝説 中森明菜の軌跡と奇跡】 

中森明菜、2002年の紅白リハで不満爆発…楽屋の外にまで怒鳴り声 音へのこだわりは「異常」なレベル

 

大手レコード会社のユニバーサルミュージックと契約を結んだ2002年。中森明菜にとって14年ぶりのカムバックとなった「第53回NHK紅白歌合戦」だったが、東京・渋谷のNHKホールで12月29日からスタートしたリハーサルは波乱含みだった。

「リハーサルの始まる前は和気藹々(あいあい)としたムードで『お世話になります』と機嫌も良さそうでしたが、ステージに上がったら一変しました。正直『わがまま』というのは面白おかしくしたい一部のメディアの捉え方にも思えますが、実際は、歌に対する明菜のストイックな一面が表れたのだと思いましたね」(スポーツ紙の芸能記者)

歌唱曲は、自身のヒット曲を新たにアレンジし直した初のセルフカバー・アルバム「Akina Nakamori〜歌姫ダブル・ディケイド」(12月5日発売)から井上陽水が明菜のために書き上げた「飾りじゃないのよ涙は」だったが、リハーサルの音合わせでは何度も首をかしげる場面が続いた。

「通常でしたら、1、2回のチェックで終わるんですけどね。キーの高さや音の返りが気になったのか…。結局、リハーサルであっても完璧でなければ納得できない。とにかく何度も歌い直しては音の調整を試みたようですが納得しなかった。しかしリハーサルをしているのは明菜だけじゃないですからね、そこで揉めてはいられません。見方によっては『またわがままを言っている』となるかもしれません」(前出の芸能記者)

音に対する明菜の不満はステージを降りてからも続いていた。

「その後も明菜は楽屋に残り、リハーサル終了後にスタッフを呼んで打ち合わせを始めたようでした。しかも楽屋の外にまで明菜の怒鳴り声が聞こえていました。よほど音が不満だったのでしょう。一気に感情が爆発したのかもしれません。明菜の完璧主義者ぶりは誰もが知るところですが、要するに歌への向き合い方が半端ではないということです。たとえ感覚の違いでも、自らが100%納得しないと気が済まないのでしょう」(レコード会社関係者)

明菜の音に対するこだわりは、「異常」といえるものもあった。かつてTBSで「ザ・ベストテン」の制作に携わった元ディレクターも「明菜さんの音合わせはスタジオ内に緊張感が走りました。というより明菜さんが入ってくるだけで空気が変わるんですよ」と振り返るほどだ。

話を「紅白」に戻すがリハーサル後の打ち合わせは、白熱したものになったが、それから1時間後に姿を見せた明菜はケロッとした表情で「すごい緊張をしちゃいました」と苦笑いすると、音について「ちょっと、キーが高かったんです」と説明していた。一体、どういうことか。

「番組スタッフから聞いた話ですが、この時の明菜のキーは年末に全国で繰り広げてきたディナーショーの音源から半音高いキーに設定したようなのです。ところが明菜は聞いていなかったのか、同じキーかと思っていたこともあり、ステージ上でスタッフに調整を促したようです。要するに連絡ミスです。あとはリハーサル時の立ち位置によって、マイクの入りが微妙に明菜の感覚と違っていたようで、その部分での不満があったようでした」(前出の芸能記者)

デビュー20周年のタイミングでユニバーサルと契約を結び、心機一転のスタートを切ったばかりか、念願だった「紅白」へもカムバックできたこともあって「中途半端な気持ちはなかったのでしょう」(音楽関係者)。

最高の形で歌うことで「ファンに恩返しをしたい、喜んでもらいたい」という思いだったに違いない。