スター沢田研二 華麗なる闘い ひとりで歌いたい…紅白大トリで〝スポットライト〟歌手の五冠達成 NHKの不文律破られた78年、トリは沢田研二と山口百恵の理由

「勝手にしやがれ」で沢田研二が日本レコード大賞に輝いた1977年の「NHK紅白歌合戦」のトリは五木ひろしだった。布施明が「シクラメンのかほり」でレコ大を受賞した75年も大トリは五木、76年はレコ大を「北の宿から」で取った都はるみが大トリだった。

このように紅白の大トリはレコ大と連動していない。あくまで「紅白のトリは演歌系」という不文律があったからだ。

それが破られたのが、78年だった。紅組のトリは山口百恵、白組で大トリは沢田だった。

しかし翌年はレコ大を受賞したジュディ・オングの「魅せられて」ではなく、八代亜紀の「舟唄」が大トリで、またも演歌に戻ってしまう。ポップ系の大トリは、91年の谷村新司「昴」まで待たねばならない。かくも当時のNHKは保守的であったのだ。

ではなぜ78年は沢田と百恵がトリだったのか。実はピンク・レディーが「紅白」をボイコットして、日本テレビが制作するチャリティーショーに出ることになったからでもあった。なんとしても高視聴率を取りたいNHKが人気のある2人をトリにしたのだ。

沢田と百恵はレコ大の最有力候補でもあり、なかでも沢田は前年に続いて「V2を目指す」と正月から公言していた。しかし、彼が取れたのは最優秀歌唱賞だった。そのあいさつで「多少、残念です」と本音を語った。

沢田はその年の暮れの「週刊明星」で「レコ大はほしい。紅白の大トリはごめんだ」と語っていた。大トリだと、紅組・白組の全員がステージに出て声援を送る。それがいやなのだ。沢田はひとりで歌いたい。

百恵はNHKでは「プレイバックPart2」の歌詞「真っ赤なポルシェ」を「真っ赤なクルマ」と言い換えさせれられていた。しかし「紅白」では、「ポルシェ」と歌い切った。

そして沢田の番だ。確かにステージに全員が出てきたが、照明は沢田にしか当てられず、誰もいないのと同じだった。沢田の強い意向だろう。沢田は『LOVE(抱きしめたい)』を歌いきった。

こうして沢田はオリコン週間チャート1位、歌謡大賞、ミリオンセラー、レコード大賞、紅白大トリという歌手としての勲章5つを手にした。森進一や五木はチャート1位やミリオンセラーはない。沢田だけが五冠を達成したのだ。