「気になる嫁さん」「赤い迷路」「傷だらけの天使」などで見る成城の風景 テレビドラマ篇 Vol.4

成城が舞台となったテレビドラマは、なにも円谷プロ作品だけではない。今回は数々のテレビドラマで見られる成城の風景を追っていこう。

成城が舞台となったテレビドラマは、なにも円谷プロ作品だけではない。今回は数々のテレビドラマで見られる成城の風景を追っていこう。

 まずは、前回触れた「気になる嫁さん」(71〜72年/NTV系)から。何せこの番組、全四十話中たった一話を除いて、すべての回で成城の風景が見られる〈成城ロケ・ドラマの決定版〉のような作品なのだ。

 ‶宇宙人に殺された〟という理由で「帰って来たウルトラマン」を降板した榊原るみがヒロインを務める本作は、結婚相手(関口守:関口宏の実弟)が死去した後も嫁ぎ先に同居を続けるめぐみ(榊原)と、その家族(佐野周二、山田吾一、水野久美、石立鉄男ら)との温かい交流を描くファミリードラマ。第1話から成城学園正門前の風景が見られるが、最も多く登場する嫁ぎ先の清水家は、労働科学研究所(現在の成城ハイム)前を走る小田急線南側の坂道を下りきったあたり(住所は砧八丁目31)にあった。この坂道は多くのウルトラ・シリーズのほか、宇津井健主演の新東宝映画『鋼鉄の巨人 地球滅亡寸前』(57年/石井輝男監督)にも登場する。

 当家からも程近い、仙川に架かる小橋もしばしばロケ現場となっており、末っ子に扮した山本紀彦は「赤い迷路」でも、まったく同じ場所で山口百恵と芝居をしている。

▲清水家は坂道を下りきった左手にあった。仙川に架かる小橋(右)は、「赤い迷路」やウルトラ・シリーズにも登場。

 

 TBSが大映テレビと手を組んで作ったのが「赤いシリーズ」。‶激情型サスペンス・メロドラマ〟の名に相応しい異様な世界観や、宇津井健の大袈裟なセリフ回しにハマった方も多かろう。特に、増村保造監督の手による「赤い激突」での宇津井(大谷バレースクール主宰)は、神がかっていたとしか言いようがない。そして、その第1弾「赤い迷路」(74~75年)もまた、立派な〈成城ロケ作品〉である。
 精神科医の宇津井が妻殺しの犯人を捜すうちに、娘の山口百恵の出生の秘密に触れてしまう、という劇的な展開を見せる本作。第1話から早速、仙川に架かる竜沢寺橋(りゅうたくじばし)の上で宇津井と山口の父娘が会話を交わす。

▲そうした寺はないのになぜか「竜沢寺橋」という名が付くこの橋は、様々なドラマに登場する

 

 成城にはかつて、大岡昇平や三船敏郎が愛した「栄華飯店」という中華料理店があった。筆者は74年の秋に百恵ちゃんと共演の松田優作が当店で食事している場を目撃、宇津井の自宅内シーンが隣接する住宅展示場で撮影されていたことを知る。
 そうした撮影事情もあって、本「赤い迷路」では成城のいちょう並木(まさに宇津井の自宅があった)や交差する桜並木通りで頻繁にロケが実施。宇津井や長山藍子、中野良子がいちょう並木を歩き、百恵ちゃんが桜並木通りを使って通学する姿などが撮影されている。

 他にも本作、映画『世界を賭ける恋』(59年)や『サザエさんとエプロンおばさん』(60年)に登場した「富士見橋」上で松田優作と山本紀彦が格闘したり、成城コンド前で怪しい男たちに襲われた百恵ちゃんを優作が救出したりするなど、成城の風景が頻出。隣の「仙川に架かる小橋」の方では、百恵ちゃんが優作や山本紀彦らと会話を交わすシーンもある。
 注目すべきは、登場人物の一人・大石吾郎が経営し、百恵ちゃんもしょっちゅう出入りするスナック「ビレッジ」が、成城二丁目に実在した喫茶店「シャネル」を使って撮影されていることだ。当店はとうの昔に閉店しているが、その外観はドラマで使われた時とまったく変わっていない。

▲成城に今も残る喫茶店・シャネル。今でも大石吾郎や百恵ちゃんが出てきそうだ