(記事より抜粋)
呼ばれた先、VIPルームにいた中森明菜
その社長は、いわゆるVIPルームに挨拶に行ったきり戻ってこない。
店にはカラオケもあるので、ずっと誰かが歌っている状態のなか、私はひたすら食べることと時折拍手に専念していた。すると黒服さんが「ロニー店長様でいらっしゃいますか。VIPルームで社長がお呼びです」と耳打ちしにきた。私の他にも呼ばれた数人と席を立ちVIPルームに移動。
—— するとVIPルームには成田恭教社長、うちの社長、他男性数人と中央に中森明菜がいた。
うちの社長曰く、明菜ちゃんが今日着ている私服は私が接客したもので凄く気に入っているとのことで、かなりお酒も入って上機嫌になり、私と、デザイナーと、明菜ちゃんの大ファンの別店舗の店長を呼んだらしい。私は脊髄反射のように姿勢を低くして、
「その節はお買い上げ有難うございます。よくお似合いになってます」
… というあいさつが咄嗟に口から出た。明菜ちゃんはにっこり笑いながら着ているうちのブランドのベルトやシャツを見せてくれた。
聴こえてきた「DESIRE」と合いの手
すると誰かが店内で「DESIRE」を歌い出した。と、同時に成田社長、並び他の男性達が、
まっさかさまに 堕ちてDESIRE
(落ちたら早いよ水商売!)
炎のように 燃えてDESIRE
(燃えたらしつこい30代!)
ぶつかりあって 廻れDESIRE
(廻って廻って目がまわる~)
星のかけらを つかめDESIRE
(つかんだ男は離さない~)
な・ん・て・ね!
(ハァー!ドッコイ!)
寂しい~
(ドンドンドンドンドンドッコイショ!)
いわゆる “合いの手” を初めて聴いたのはこの時だった。
“合いの手” は新宿2丁目のバーが発祥というのが一般的だ。当時、中森明菜のドラマティックな振り付けと衣装は2丁目界隈で大人気だったらしく、そこから水商売界隈で合いの手が浸透していき、一般のカラオケに知れ渡っていった。
中森明菜も「ハァー、ドッコイ」
明菜ちゃん本人は、最初やや驚いたような顔からやがて屈託のない笑顔に変わり、誰か一般の人が歌う「DESIRE」に入る合いの手を楽しんでいたように見えた。
そして、最後の繰り返しには小さく「ハァー、ドッコイ」と明菜ちゃん本人も言っていた。
成田社長が私達が緊張しているのを見てか、明菜ちゃんにマイクを渡してから「一緒に合いの手、入れてね」と言った。程なくしてVIPルームで、中森明菜本人自らがソファーに座りながら「DESIRE」を歌い出した。
もちろんサビでは私達も合いの手を入れた。吹き出しそうになりながらも酒の席で座りながらきちんと歌い上げる彼女はサービス精神旺盛なプロだと感動した。
歌い終わった後、思い切り破顔してマイクを置いた彼女に挨拶して、私達はVIPルームを後にした。
カラオケで、明菜ちゃんに遭遇したら、気絶するわ~
逢えるなら逢いたいわ~