20日、衆議院法務委員会にて山口代議士が質問に立ちました。

【刑務所での矯正プログラムについて】
【保護司の役割について】
【薬物依存の再犯と地域の取り組みについて】
【刑事訴訟法改正案における施行時期について】
【終身刑について】

※会議の様子は、衆議院TVでご覧ください。

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※以下、議事録を掲載します。

第8号 平成22年4月20日(火曜日)
    午前九時開議


 …………………………………

   法務大臣         千葉 景子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 中井  洽君

   法務副大臣        加藤 公一君

   法務大臣政務官      中村 哲治君

   最高裁判所事務総局経理局長            小池  裕君

   最高裁判所事務総局刑事局長            植村  稔君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    金高 雅仁君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)(参議院送付)


     ――――◇―――――

○滝委員長 これより会議を開きます。

(中略)

○滝委員長 次に、山口和之君。

○山口(和)委員 民主党の山口和之と申します。どうぞよろしくお願いいたします。おはようございます。

 私は、三十年近く、医療の中のリハビリテーションの世界におりました。その世界では、まず病気の再発予防、地域の中での健康管理、それから病院での治療と同時にリハビリテーションが開始されて、地域の中でさらに社会復帰を目指す、また疾病の予防を地域の中で行っていくという観点で、三十年近く仕事をさせていただいておりました。

 今回、刑法そのものが犯罪の抑止力となると考えておりまして、そのことから、時効がなくなることで防犯効果が急激に上がるとは思いませんが、ただ一方で、刑法が、そういう視点が必要だというふうにも考えております。

 配付いたしました資料の表の一を見ていただきますと、そういったリハビリテーションの観点から、今回は再犯防止について主に質問させていただきたいと思います。

 この表一を見ていただきますと、経済の悪化とともにという感じもないわけでもないんですけれども、再犯者の数がふえ、再犯者率もふえております。犯罪を犯さないようにするということは非常に重要なことだと思われます。

 そこで、次の表二を見ていただきたいんですけれども、この表二は刑務所でのプログラムなんですが、二〇〇六年の五月二十四日施行の刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律というところで、平成十八年に、そこでの矯正プログラム、いわゆる更生するためのプログラムが開始されたということであります。

 ちょっと驚いたんですけれども、それ以前は、刑務所では罪を償うということが主眼に置かれており、更生のプログラムは各刑務所でおのおの行われていた。ということは、罪を償うこと、もちろん監獄法ですからそういうことなんでしょうけれども、でも、普通で考えれば、病院で考えれば、病気になって治療して、同時に、もう一度病気にならないようなことをちゃんとやってこなきゃいけなかったわけだと思うんです。それが、平成十八年にようやくこういったプログラムができて、刑期に服している間にこういうプログラムが入ってきたということになります。

 千葉法務大臣さんには、各刑務所間でどういうプログラムが行われて、どこの刑務所が一番再犯率が少なくて、どういうプログラムが一番効果的なのかということを検証できないかというお話を一度したことが多分ございます。そのときには、そういうのはまだないようなことをお聞きしておりました。これは自分としては、医療系にずっとおったものですから、結構びっくりする内容でした。

 そこで、この改善プログラムというのは、いかに今後刑務所間でこのプログラムが効果的に行われるか、再犯率がどんどん下がっていくか、社会の中で最適化していくか、そういうことの検証を今後どうやっていくのかということを少しお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

○加藤副大臣 先生御指摘のとおり、我が国の犯罪そのものを減らしていくために、再犯率を抑えていく、減少させていくということが極めて重要だということは論をまちません。私も全くそのとおりだと思います。

 その中で、御指摘をいただきました改善指導プログラムでありますけれども、現状で、その改善指導プログラムのうち、性犯罪再犯防止指導というものと薬物依存離脱指導という二つにつきましては、このプログラムを受講した上で出所した受刑者等についての再犯状況のデータというものを蓄積を始めているところであります。これが、法改正が平成十八年でございましたので、平成十九年度からデータの蓄積を始めたという状況にございます。今後、当然、そのデータが蓄えられてくれば、効果について分析をして、適切に対処をしていきたいというふうに考えてございます。

 その二つの指導プログラムを含めまして、他の改善指導プログラムを受講した受刑者につきましては、そのプログラムの受講前後における変化、本人の考え方の変化であるとか、あるいは不幸にも再入所してしまったときには前回どんな受講状況だったのかというようなことを聞き取りをいたしまして、いわゆる調査分析をいたしまして、今後の改善指導プログラムの効果検証に努めてまいりたいというふうに思っております。

○山口(和)委員 ありがとうございます。

 プログラムが同一ですので比較するのはなかなか難しいとは思うんですけれども、恐らく、指導する側あるいは指導方法が若干違ったりして、刑務所間での効果の違い等々も調べることができるのかと思います。または、組み合わせのプログラム等々、検証していくことによって精度を上げていくことは可能ではないかと思われますので、ぜひともお願いしたいと思います。

 私は、リハビリテーションをずっとやっていまして一番効果的だなと思うのは、やはり、昔は集団的なプログラムが多い時代、ケアもそうなんですけれども、近年はパーソナルケア、個別のケア。つまり、犯罪者の背景であったり、どういう環境でどういうことで行われてきたのかということを深く掘り下げて、ケアマネジメントというんですけれども、ケアマネジメントの世界では深く掘り下げて、その人一人一人のパーソナルケアというものが非常に重要だと思われます。ぜひこの点についても推進していただきたいと思います。よろしくお願いします。

 次の質問に入りますけれども、刑務所を出た後、非常に重要になってくるのが保護司の役割だと思うんですね。日本においては保護司というボランティアの方がいらっしゃって、それで成り立っていたということですが、この方々が近年高齢化してきたり、なり手が少なくなってきているということを聞くんです。とてもいい制度ですし、リハビリテートするときにも、受刑者の方々が社会復帰をされるときにも、こういう方々のサポートがあって地域社会で生きていくということが重要になってくると思うんですね。

 そういったときに、なり手が少なくなって脆弱化していることについて、具体的な対策等がございますでしょうか。それをちょっとお聞きしたいと思います。お願いします。

○加藤副大臣 御指摘のとおり、保護司の皆様、全国に約五万人いらっしゃいますけれども、それぞれの地域社会で、再犯防止の活動ということで大変な御貢献をいただいております。私も日々感謝をしているところでございます。

 近年、社会経済情勢が大きく変わり、また犯罪の状況も変化をしてまいりまして、保護司の皆さんの業務が大変困難になってきているということは私も聞いているところでございまして、個々の保護司の皆さんの活動というのを、地域社会全体で御協力をいただいて、組織的に支援をしていかなければいけないのではないかというふうに考えております。

 そんな状況のもとで、現在、保護司活動の充実を図るために、幾つかの施策を既に実施いたしております。

 一つは、保護司の適任者の方を確保するということのために、保護司候補者検討協議会というものを設置いたしました。今までの、どなたかおやめになったら、その方の人脈だけで探してくるというのでは限界があるということで、組織的な対応をしようということであります。

 それから、保護司個人の方の活動をバックアップするための保護司組織の機能強化、あるいは保護司会がその更生保護活動を推進するための拠点といたしまして、更生保護活動サポートセンターというものを全国に既に二十一カ所設置いたしております。

 今後とも、保護司の皆さんを中心といたしまして地域ネットワークづくりに努めて、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域全体で支えていくという取り組みを進めてまいりたいと思っております。

○山口(和)委員 ありがとうございます。力強いお話だったと思います。

 私が行っていたリハビリテーションも、地域全体で支える、一人では支えられない、地域があって初めて支えられるというのがあって、地域に溶け込んで、そこが元気になることで犯罪も少なくなり、あるいは明るい社会が築かれ、安心社会が築かれていくんだと思います。今のお話の中では、地域全体で支える、ネットワークをつくっていくというお話がありましたので、ぜひとも個人個人を大切に、地域全体で支えるようなシステムをつくっていただけると安心、安全な社会が築けるんだと思います。

 ましてや、民主党の成長戦略の中には、観光日本、観光を中心とした経済成長も計画されているところであり、犯罪のない国日本というのも一つの大きな視点になると思いますので、ぜひとも今の力強い御発言を実行していただきたいと思います。

 もう一つ、次の質問に入らせていただきます。

 表三の方を見ていただくと、一番下の表なんですが、一番下の覚せい剤取締法の同一罪名の再犯者なんですが、五七・一%という、これは、ほかの犯罪と比べて覚せい剤は全く違うんじゃないか。特異的な犯罪というんでしょうか、芸能人の方々でも再犯される方もたくさんいらっしゃった。どうも一般的なプログラムに乗って刑に服すだけでは足りないのではないかというふうに思います。

 他の犯罪とは違います。ですので、特別なプログラムが必要なのではないかと思われますが、先ほど御説明にありました特別プログラムの中に薬物依存症というのはありましたけれども、ぜひとも地域の中で行われるなり、いろいろな方法が必要かと思われますが、それについて御見解、御意見、取り組み等を紹介していただければと思います。

○加藤副大臣 薬物依存の受刑者に対しましては、刑事施設の中と、それから社会、保護観察所などでの二つでさまざま取り組みをいたしております。

 刑事施設の中では、先生も御存じだと思いますが、ダルクというのがあります。ダルクなどの民間自助団体の協力をいただきまして、グループワークであるとか、あるいは講義、あるいは視聴覚教材、最近これは大分進んでいるようでありますが、視聴覚教材でお教えをしたり、あるいは個別面接を実施したりということで、薬物使用の影響であるとか、あるいは再使用防止のための方策であるとか、あるいは依存症についての知識を深めるとかいう薬物依存離脱指導というものを実施いたしております。

 その上で、先ほども御指摘ありましたが、覚せい剤の事犯者に対しましては、刑事施設の中での処遇状況も踏まえまして、保護観察所において専門的な処遇プログラムというのも実施をしているところでございます。

 テーマとしては、薬を断つ、断薬の意思の強化であるとかあるいは再使用しないための具体的な方法を学習させるというようなテーマにつきまして、認知行動療法などの心理学の理論を基礎とした五つの教育課程の履修と、あとは、本人の同意に基づきますけれども、簡易薬物検出検査というものをあわせて実施いたしまして、御本人が再び薬物に手を染めていないということを御本人もあるいは周囲の方々もきちんと確認できるような、そんなプログラムも実施をしているところであります。

 今後とも、覚せい剤事犯者に対する再犯防止ということのために指導を充実させてまいりたいと思っております。

○山口(和)委員 ありがとうございます。

 恐らく、これは世界じゅうの問題でもあると思われます。ぜひとも今の効果検証を含めてエビデンスをつくっていただいて、再犯率が少なくなるように、あるいは犯罪に手を染めることのないように、ぜひ広げていっていただきたいと思います。

 ちなみに、どうもアメリカではドラッグコートというものがあって、それは、薬物依存というのは、一人で治せない、依存症から脱却できない病気、どちらかというと、犯罪というよりも病気としてとらえて、その治療を行うという考え方をしているとのことです。アメリカは薬物の犯罪の非常に多いところですので、こういった事例も含めて、ぜひ検討していただきたいなと思います。

 次に、今回の刑事訴訟法の施行時期について、通常であれば、周知の時間があった上にということなんですけれども、公布の日からということになっておるんですけれども、このことについて、特別な意義があるのかどうかを少し教えていただきたい。

○加藤副大臣 御指摘のとおり、一般的に、法律が公布されますと、周知期間を置いてから施行という段取りでありますけれども、今回の改正につきましては、還付公告の部分を除きますと、周知の期間を置く必要がないのではないかということを考えておりまして、公布の日に施行するということにさせていただきました。

 多少説明をさせていただきますと、そもそも、この公訴時効期間というのは、犯罪行為をしようとする者が、その犯罪行為をしようという段階で通常予測する対象には含まれていないというふうに思いますし、また、そもそも、今回改正をいたしますと、その施行の日にまだ時効が完成をしていない犯罪事犯についても適用するということになってございますから、仮に国会において成立をさせていただくということであるならば、やはり一日でも早く施行するということが望まれるというふうに私ども考えている次第であります。

○山口(和)委員 どうもありがとうございました。よくわかりました。

 私は、リハビリテーションの立場からきょう質問させていただきましたけれども、ぜひとも、再犯率が低下して、社会で元気で生活できる地域ができていったらいいな、日本が大きく変わってくるといいなというふうに思います。ぜひともよろしくお願いします。

 少し時間があるので、最後に一つだけ質問させていただきたいと思うんですが、ちょっと難しい質問なので、これは方向性だけでも結構なんです。

 死刑制度の問題があるんですが、それと同時に、終身刑という話も話題にのって、インデックスにも載って、国民的議論をしていかなきゃいけないということにはなっているんですが、例えば死刑も終身刑も両方あるということも考えられないかと思うんですけれども、これは急に答えろと言われてもなかなか難しいと思うんですけれども、何か御発言があればいただきたいなと思うんです。

○千葉国務大臣 この間、終身刑の是非という議論があることは私も承知をしております。そして、御指摘のように、民主党のインデックスにも触れられているということでございます。

 特に、十年の服役の後、一定の期間がたつと仮釈放が認められる、懲役刑ですね。そうすると、無期刑といっても仮釈放が認められるものですから、それと死刑との間に非常に大きな隔たりがある。こういうことを考えるときに、仮釈放のない終身刑を導入したらどうだろうか、こういう御意見があることは私もよく承知をしておりますし、理解もできるところでございます。

 ただ一方で、やはりこの終身刑についても、社会復帰の望みはないわけですし、生涯拘禁をされるということで、大変精神的に、絶望感というんでしょうか、そういうことを抱かせる非常に過酷な刑罰ではないかという指摘もございます。それから、もう出ることもない長期間の拘禁、これによって人格的な破壊ということが予測をされるのではないか、こういうことも指摘をされていたりいたします。

 なかなか、刑罰のあり方といいますか、どういう刑罰を選択すべきかというのは大変難しい問題であろうというふうに思います。ただ、こういう御指摘あるいは御意見があるところでございますので、またできるだけ、国会も含めて議論がされていければと、私も真摯にそういう御議論を踏まえてまいりたいというふうに思っております。

○山口(和)委員 どうもありがとうございました。

 望みがなくなるということも非常につらいことでもあることですし、ぜひしっかりとした議論で行っていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。