終わりのない、めちゃくちゃ面白かったです。取り急ぎ、初観劇体験と物語のテーマへの感想。ネタバレはそこそこ。


まずストーリー以前に、生の舞台初心者っていうかもしかして小学生以来か?というド素人なのでちゃんと受け止められるかドキドキしてたんですが、いや〜面白かった。(舞台の円盤とかライビュとかは ぼちぼち観てたんですけど)


舞台ってもっといかにも舞台らしい演技になるのかと思ってた。山田さんの演じ方はいつもの自然でストレートな感じ。作為感のなさが山田さんらしいし、それがユーリにハマる。2日間連続で観たことで演技への解像度も上がるけど初日の見せ場とクライマックスは本当にすごかったですね………絶句というか。感情を浴びた。


そして、舞台ってもっと「舞台」のコンテキストというかお約束が色々あって、それを念頭に置いて観賞するもんだと思っていたけど、そんなことなくてただ目の前で起こっていることを追っていくだけで物凄い没入できて、途中で完全に映像作品を観ている気になっていた。宇宙の背景映像出てたよねと思いこんでて、後から出てないことに気付いたり。音や演技から信号を受け取った私の脳が、背景など舞台上に存在しないものを完全に補完したのだ。これはなかなか凄い体験だった。宇宙船の内装をはっきりと記憶しているのだがこれは全て私の想像の中のものなのか漫画より小説の方が表現力無限大だったりするけど、映像と舞台もそういうことなんだな。想像力に委ねるほど可能性は広がる。縛りがあるほど自由。


そしてストーリー。マルチバースとか神に興味を持つAIとか無意識とかのSF要素も楽しいし、郷愁の解釈もグッとくるんだけど、私は何より、風刺性、社会的なメッセージ性の高さに驚き胸を衝かれました。観終わった瞬間に、これはユーリの物語であり、人類の物語であり、私個人の物語であるというところまで物語がズドンと落ちてきて、タイトルの意味が殴りかかってくる。人は何度でも生まれ直せる、という強いメッセージに希望を託して。


宇宙船は子宮だった。ユーリはそこから産み落とされ、長い産道を抜け、生まれ直した。その旅路のお話だったのだと思う。


集合は個で個は集合。私は社会だし社会は私。人類は貴方だし貴方は人類。このメッセージはかなり強く発せられていた。最後、ユーリが(彼にとっての)現実世界へ戻る直前にごねるシーンで痛感した。己など全体の一部に過ぎないと、集団に埋没していることに安堵して自分の肩に乗った責任を感じないように振舞っているわたしへ、その怯懦に「タダ乗り野郎」と言う罵倒が突き刺さる。人類を救えるのは人類だけ。次世代への責任は果たしているのか?まさか社会へのフリーライドを批判される覚悟で観に行ってないから刺されました感服です。「(政治家くずれの)活動家」も「研究者」 も全肯定して、「お前が知らなくても頑張っている奴はいる」「必ず届く」と。届くと信じて表現されるものに無条件で涙腺が崩壊する体質なので、脚本にもユーリにもめちゃくちゃ泣いた。

ユーリは生まれ直し自分の足で歩き出す決意をしたけど、旅はまだ終わらない。人類の連綿と続く旅路は終わらない。私達はどこからきてどこへいくのか、それは前の世代の人達が何を想い何を託そうとしたのかを理解することだし、そして次世代へ私達が何を託すべきなのかを考えること。決断を下した時に世界は分岐する。何を選び取るのか、どこへ進むのか、責任はたしかに私の肩にも乗っている。自分を救って世界を救わなければ。


いやー前川さんの他の作品早くチェックしなければ。めっちゃ観たい。ちなみに演劇に関しては門外漢の私ですが、前川さんのお名前は読んでる漫画の原作者として存じ上げていた。やっぱり魂のお話なんですよね。


リヴィングストン

https://www.amazon.co.jp/dp/B00LIUMUUE/ref=cm_sw_r_tw_api_i_WHLUDb9SR3JVM


はーほんとに面白かったし密度が高いのでたくさん観たい。計画的に休みとチケット取った自分を褒めたい。


そして最後に色々台無しな性癖の話をすると、惑星探査してた世界のユーリ、わたし絶対好きと思いました。