身近な自然観察 道端の雑木系 6月
6月に撮りためた写真から、道端の雑木系をまとめました。今回、このテーマで新たに加わったのはニワウルシです。これまで取り上げた道端の「雑木6強(本文中で説明)」に比べてあまり見ない感じでしたが、道路のグレーチングから堂々と生えているのを見つけ、ちょっとびっくりでしたが、調べれば生態系被害防止外来種となっていました。
もう一つ、今まで明確に指摘してきませんでしたが、鳥散布による雑木繁殖の特徴的なスポットは電柱など止まり木になるものの下であるということです。ただし、川岸では止まり木もないのにクワの木(多数)やエノキを見ました(カラスによるのでしょう。飛びながら糞をしていったのでしょうか)。一般的な植生の遷移の説明では、「草原の最終段階がススキで、その後マツのような陽樹が入ってきて...」となりますが、市街地の歩道の電柱の下などではクワを始め6強の樹木がいきなり生えてきたりします。道路管理者が除去しないと木になります。グレーチングから生えているものは排水に支障が生じれば遠くないうちに除去されるでしょう。しかし、道路の法面や川岸のものは逆に大事に保存されているようですらあります。
なお、道端に生えるコムラサキも今回2例紹介します(秋に紫のビーズのような小さな実を沢山つけ、園芸植物としても人気です)。
↓ニワウルシ(ニガキ科ニワウルシ属)(Ailanthus altissima)
Wikipedia「ニワウルシ」(※1)より、
「成長が早く、庭木、街路樹、器具材などに用いられる。中国では根皮や樹皮を樗白皮(ちょはくひ)の名で解熱・止瀉・止血・駆虫などに用いる。」
環境省の生態系被害防止外来種。同付加情報によると
「中国の北~中部原産、1880年頃に渡来。路面間隙、舗道の割れ目、河川敷、荒地、土手、丘陵の林縁、耕作放棄地に生育する。日当たりの良いところを好む。海外で侵略的な外来種とされ、日本でも河川等で密林を形成して、分布を拡大するとともに、雑木林への侵入も危惧されている。」
国立環境研究所侵入生物データベース(※2)より、
「(繁殖生態)風媒花、虫媒花、雌雄異株、風による種子散布、および萌芽による栄養繁殖」
「(生態的特性)河川敷、空き地等にパイオニア樹種として侵入する。さらに、耐陰性も持つとされ、大気汚染にも強い。種子は良く発芽する。」
「(国内移入分布)北海道、群馬、埼玉、神奈川、静岡、愛知、岡山、広島の各県」
今のところ、移入分布は日本全国ではありません。また、分布拡大に関して、「雑木6強」は鳥による種子散布が関与するのに対して、ニワウルシは風散布でした。マツやカエデやケヤキと同じです。それほど遠くまでは移動できないでしょう。ケヤキの実生もよく見かけますが、近くにケヤキがあるからです。それで、この写真の木の近くにも探せば元の木がきっとあるはずだと思いましたが、見当たりませんでした。
↓ニワウルシ
2021/6/13撮影
(鳥が種子散布する道端の雑木「6強」)
これまで、鳥が種を散布し、道端に生えてくる木として、アカメガシワ(トウダイグサ科Mallotus japonicus)、クワ(クワ科クワ属Morus)、センダン(センダン科Melia azedarach)、エノキ(アサ科Celtis sinensis)、ナンキンハゼ(トウダイグサ科Triadica sebifera)、クスノキ(クスノキ科ニッケイ属Cinnamomum camphora)を挙げて継続的に取り上げてきました(6強)。だいたい東洋の植物です。鳥が関与し、共生している関係があるからか、草本に比べれて欧米の外来種が在来種を駆逐し圧倒する状況ではないようですが、ナンキンハゼだけは明確に外来種として問題視されています。
ナンキンハゼ 生態系被害防止外来種。同付加情報によると(以下抜粋要約)
「中国大陸の中南部の暖帯から亜熱帯原産、園芸植物として江戸時代に渡来。庭木、公園樹、街路樹として植栽され、種子の油脂は有毒だが、ろうそく、せっけん、薬用等に利用される。海外で侵略的な外来種とされており、鳥や水により種子が散布され、土壌環境にも影響する。日本でも河川で分布を拡大しており、草原や雑木林等への影響が懸念されている。そのため、こうした環境に侵入するおそれのある場所や自然水域の周辺では、利用を控える等の配慮が必要である。」
↓ナンキンハゼ(左)とセイタカアワダチソウ?とヒメヨモギ?
2021/6/9撮影 (歩道)
↓ナンキンハゼ(これは植栽され低木仕立てなのか?勝手に生えてきたものか?)
2021/6/21撮影
下の一番上の写真をはじめ、道路の歩道の植え込みの区画の部分(特に電柱や信号機の柱付近)には、6強の木がやはり入っていて、複数混じっています。
↓(手前から)センダンとエノキとナンキンハゼ(オンパレードです)
左側に電柱か信号機の柱があったと思います。
2021/6/9撮影
↓アカメガシワ雄花
↓2021/6/18撮影 (坂道の法面)
↓2021/6/14撮影
↓アカメガシワ雌花
↓2021/6/22撮影 (川岸)
↓2021/6/24撮影
↓クワ(道路の歩道にて)
↓2021/6/9撮影
↓2012/6/1撮影 葉が多裂(これは紛れもなくクワ)(歩道)
↓2021/6/22撮影 (歩道)
↓アカメガシワ(右)とクワ(左上)とケヤキか何か(不明 真ん中)(道路の歩道にて)
2021/6/9撮影
↓アカメガシワ(左)とエノキ(右)(電柱の下です。下のエノキ、クワの続き、つまり3種オンパレード)
2021/6/21撮影
↓エノキ(左)とクワ(右)(電柱の下です。上のアカメガシワ、エノキの続き、つまり3種オンパレード)
2021/6/21撮影
↓コムラサキとクワ
コムラサキが道端で生えているのは珍しい感じですが、その中からクワが顔を出しています(根元はグレーチングです)。果たしてクワか?(クワと似たものの比較は末尾に)。コムラサキとムラサキシキブの区別は鋸歯が葉の先端側半分にあるのがコムラサキ(ムラサキシキブで出回っているものはたいていコムラサキ)です。
2012/6/1撮影 (歩道)
↓2021/6/22撮影
↓コムラサキとセンダン
コムラサキも意外と道端に生えているのかと感じました。秋に紫の綺麗な実をたくさんつけるので鳥が散布するはずです。
個人的には、山にあるヤブムラサキの黄色寄りの黄緑の葉の色や薄紫で控えめな量の実が好きです。
コムラサキ(下)とセンダン(上、風で一部ブレています)、左側のものは分かりませんでした。
2021/6/21撮影 (道路)
↓コムラサキ(Callicarpa dichotoma)
2021/6/22撮影(歩道のグレーチングから出ています)
↓センダン
2021/6/23撮影(電柱下)
↓センダン(道路の歩道にて 電柱下)
2021/6/9撮影
↓センダンの実
あっという間に花を終わらせてもう青い実をつけています。
2021/6/18撮影
↓センダンの実とクワ
ここでも顔を出すクワ。
2021/6/18撮影
↓ホルトノキ(Elaeocarpus zollingeri var. zollingeri)
これは植栽木でなく川岸に(おそらく)勝手に生えてきたものです。赤い葉がチラホラあり蕾の付き方も確かにホルトノキです(実に見えますが蕾です)。どのように種子散布されるか調べると被食散布はあるようです(文献※2)
↓2021/6/24撮影
(クワの葉との比較参考 似た葉)
いわゆる三行脈系統の葉脈と鋸歯と大きさです。鋸歯がないものだと、アカメガシワ(ここにも掲載。独特の形にもなる。)とクサギ(以前掲載)が三行脈系統で似た大きさのものです。
↓クワの葉
↓2021/6/22撮影
独特のテカりがあるのと側脈の形などがほかと違う。
↓2021/6/24撮影
(↓一部でも葉に裂が入るとクワだとわかりやすい)
(↓カラムシっぽいシワのあるクワの葉。葉脈の模様が違う。)
(↓似た葉の例)
↓カラムシの葉(再掲) イラクサ科のカラムシやヤブマオはシワ状の質感なので違いますし、葉脈の形も少し違います。
↓ヤブマオの葉 2021/6/22撮影
↓ヒマワリと思われる葉 2021/6/21撮影
橋の上にあるプランターですが、クワは植えないでしょう。ヒマワリなのかどうか。
(参考)
※1:「ニワウルシ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/4/25 04:07 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※2:国立環境研究所侵入生物データベース「ニワウルシ」
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/81090.html
※2:日本生態学会誌 63:219 - 228(2013)
特集 森林の“境目”の生態的プロセスを探る
「照葉樹二次林に隣接する伐採地における 6 年間の種子散布」山川 博美1・伊藤 哲2・中尾 登志雄2/1 森林総合研究所九州支所・2 宮崎大学農学部
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/seitai/63/2/63_KJ00008775867/_pdf&ved=2ahUKEwiL487vwLDxAhWQNZQKHYQ0Ak4QFnoECAQQAQ&usg=AOvVaw2KsgnUjzh37Mc9FF9YL3oO