身近な自然観察 タデ科スイバ属Rumexの見分け ギシギシ類ほか

 今回はスイバ属の見分けにしたいと思います(今目立っています)。実や葉の様子で、ある程度見分けることができそうです。緑の花の状態ではギシギシ類やノダイオウの見分けが難しいことがわかりました。
 宿題のレポートを作っているような気分になり、結構骨が折れました。労力の割には皆さんに楽しんでいただける記事ではないと思います。

次の7種類を見分けることになります。

ギシギシ類(タデ科スイバ属Rumex
 ●ギシギシ(Rumex japonicus)在来種
 ●ナガバギシギシ(Rumex crispus)欧州原産
 ●エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius)欧州原産
 ●アレチギシギシ(Rumex conglomeratus)欧州原産
スイバ類(タデ科スイバ属Rumex
 ●スイバ(Rumex acetosa
 ●ヒメスイバ(Rumex acetosella)欧州原産
●ノダイオウ(Rumex longifolius)在来種、絶滅危惧Ⅱ類

 インターネットの写真を含めた情報では、エゾノギシギシは翼状内萼片(下記)に刺状に突起があって中心の盛り上がりは玉状で赤味があり、アレチギシギシの場合は翼状内萼片が小さく中心の白い玉が目立ち果穂全体の見た目もすかすかで容易に見分けられそうなので、とりあえず以下の見分け方法からは除外し、スイバとヒメスイバは、根生葉が矢じり型(スイバ)か鉾型(ヒメスイバ)で見分けるものの、観察しにくいため、諦めて「スイバかヒメスイバ」とします。
 以下、今回自分なりに整理した見分けのポイントです。かなりギシギシらしいものは一例だけで、ナガバギシギシのほうが普通に見られました。(もう一度現地確認したので訂正します。追って写真付きで説明します→)また、絶滅危惧種とされるノダイオウらしきものを水田付近で見かけました。

●1つ1つが団扇のような、全体の見た目がスパンコールのような「翼状内萼片」ができている状態(果実)の場合(きちんと実の状態になっている必要があります)


(1)近づいて翼状内萼片を観察


A.中央に米粒のような白っぽい膨らみがある
   →ギシギシ、ナガバギシギシ

 このうち、(2)翼状内萼片を観察
   a.縁がギザギザで翼が横にやや広い
        →ギシギシ
   b.縁がなめらかで翼はやや逆三角形気味
        →ナガバギシギシ

 
B.上記の膨らみがない
   →スイバ(ヒメスイバ)、ノダイオウ
 このうち、(2)葉を観察
   a.葉が細長く激しく波打つ
        →ノダイオウ
   b.葉が波打たない、上部の葉は茎を抱く
        →スイバ(ヒメスイバ)

●輪生状、緑色、鈴なりのものの場合(花)

今のところ、私の知識では識別困難者
 →ギシギシ、ナガバギシギシ、ノダイオウ? 
 このうち、  

 葉を観察し見るからに細長いもの
    →ナガバギシギシ、ノダイオウ?
 
(ナガバギシギシのWikipedia情報(※1)は英語版があり、生息地は多様とあるものの湿地は挙がっていませんでしたが、湿地にありました)
結局、花の場合、スイバは雌花も雄花も赤みがあり区別できるものの、それ以外の場合、他のギシギシ類も含め難しそうです。葉が太ければギシギシか。    
 とりあえず、葉が細長く湿地でない場合、「ナガバギシギシか」と考えました。ノダイオウはWikipediaにもなく、絶滅危惧Ⅱ類で情報が多くありません。
 
以下、身近で観察したものです。ノダイオウと思われるものとスイバの1つ目とギシギシと思われるもの以外は集合住宅の公共スペースのものです。

↓ナガバギシギシ
↓2021/5/6撮影 分かりやすい例(翼状内萼片の状況)


↓2021/5/7撮影 分かりやすい例(翼状内萼片と葉の形)花の状態も一部あり


↓2021/5/7撮影 分かりにくい例(花の状態)


↓2021/5/6撮影 花の状態(よくわからない。違うかも。)

↓2021/5/6撮影 分かりやすそうで分からない ギシギシっぽくも見える


↓アレチギシギシか?
 花の状態なので基本的に分かりにくいのですが、間隔の空きかた(スカスカ)からアレチギシギシとも思われますが、今後の変化を確認してまた追記します。ナガバギシギシの可能性も大です。
↓2021/5/6撮影


↓ギシギシか(水田脇)
 翼状内萼片の縁がギザギザに見えるものが少しあり、形もわずかに幅広かもしれません。難しい。合っていれば貴重な在来種です。
↓2021/5/7撮影 


↓スイバかヒメスイバか
 スイバかヒメスイバかは置いておくとして、基本的には分かりやすいです。葉が茎を抱いたり波打たなかったり、花穂、果穂に赤味があったり、実がよりスパンコールっぽかったり、スイバだけのヒントがあります。
↓2021/5/3撮影(道端)


↓2021/5/6撮影 


↓2021/5/6撮影 


↓2021/5/7撮影 



↓ナガバギシギシか(ノダイオウか(水田と道路の間の水路沿い)(以下、修正追記)
 翼状内萼片の米粒状の盛り上がりがなく、葉が激しく波打っている(スイバと違う)ことから、ノダイオウの条件が揃っているようにも思いましたが、もう一度現地確認したところ。翼状内萼片と思っているのは花から実への移行途中のようでした。やはり、そう簡単に絶滅危惧種はありませんよね。湿地にもナガバギシギシがあることもわかりました。結局、外来種ナガバギシギシが席巻しているようです。
↓2021/5/6撮影 

↓2021/5/3撮影 


 

(↓追記)
↓2021/5/8撮影(花から実への移行 上から下の順)




 以下、Wikipediaから参考情報を引用します。自分の知識や観察では説明しきれないため、ひとまず頼ることにします。スイバ属は食用、薬用になったり人の生活に関わってきた植物のようです。面白い情報は、スイバに関して

「1923年に木原均と小野知夫によって、X染色体とY染色体を持つことが報告された。これは種子植物に性染色体があることを初めて示した発見の一つ」

という記述です。

(参考情報)
Wikipedia「ギシギシ」(※2)より、

 春から夏にかけ(5 - 8月ころ)、茎の先に花穂を伸ばし、上部で分枝し多数の円錐花序を出す。立ち上がった長い花茎には、節から輪生状に、薄緑色で目立たない小さい花を鈴なりにつける。花は花弁をもたず、6片の萼(花被片)からなり、それらが2列に並ぶ。
 花が終わると内側の3つの萼が発達し翼片状となって、中央部が次第にこぶ状に膨らんで、3つの稜のある痩果を包み、たくさんつける。この翼は心形で縁に微細な鋸歯がある。こぶ状の膨らみは3個で同じ大きさになる。実は熟すと、緑色から褐色へと変化する。痩果は3稜形で両端が尖っており、茶褐色をしている。
薬用
 根や根茎には、エモジンやチリソファノールなどのアントラキノン誘導体、アントロン、タンニンが含まれている。アントラキノン誘導体には緩やかに便通をよくする緩下作用があり、緩下薬として古くから知られている。また、タンニンには組織細胞を引き締める収斂作用があり、腫物などの炎症を鎮める消炎薬に用いられている

 スイバの葉は基部が矢じりのようになっているが、ギシギシの葉は基部が丸みを帯びているので区別ができる。また、スイバの葉は赤みを帯びていて上部は茎を抱くが、ギシギシの葉は鮮やかな緑色をしていて茎を抱かない。

 


Wikipedia「スイバ」(※3)より、

 

 花期は初夏から夏にかけて(5 - 8月)。雌雄異株で、雄株は黄色っぽい淡紫色の小花、雌株は淡紅紫色の小花を穂状に咲いて目立つ。茎の先に総状花序を円錐状に出して、直径3ミリメートル (mm) ほどの小花がたくさんつく。雄株にある雄花は風で花粉を運ぶ風媒花で、大きな雄しべがぶら下がっていて、風に揺れながら花粉を飛ばす。一方、雌株の雌花に見られる房状のものは柱頭で、花粉を受け止めるために細く分かれている縮れた感じの雌しべを花の外に出している。食用にもされる若葉のころには、雄なのか雌なのか、株を見分けることはできない。
 花が終わると、雌株には団扇を連想させる小さな果実を多数つける。果実の団扇のような翼状のものは、内萼片(ないがくへん)が大きくなったものである。果実はピンク色を帯びていて、3個の翼状の萼がつく。

 1923年に木原均と小野知夫によって、X染色体とY染色体を持つことが報告された。これは種子植物に性染色体があることを初めて示した発見の一つである。スイバの性決定は、ショウジョウバエなどと同じく、X染色体と常染色体の比によって決定されている。

 ヨーロッパでは古くから葉菜として利用され、野菜としての栽培品種はソレルやオゼイユと呼ばれる。利用法は主にスープの実、サラダ、肉料理の副菜や付け合わせで、スイバを単体で調理するだけでなく、ホウレンソウやその他の葉菜類と混ぜて用いることもある。


岐阜県(環境企画課)サイト
https://www.pref.gifu.lg.jp/page/5043.html
から、

ノダイオウ RumexlongifoliusDC. 絶滅危惧II類
(環境省:絶滅危惧II類)
大部分の生育地で生育条件が明らかに悪化しつつあり、個体数が大幅に減少している。 写真を拡大表示します
〇形態の特徴 高さ1m以上になる大型の多年草。5mm程度の小さな花がたくさん集まり、茎の先にまばらな穂状になってつく。花の色は淡紅緑色。葉は大きく長卵円型、長さ30cm程度になる。
生育環境 丘陵帯から山地帯にかけての平野部の湿った草地に生育。河川敷や田畑の路傍などに見られる。
〇生活史 開花時期は6〜8月頃である。
〇分布状況 北海道、中部以北の本州に分布。国外では北半球に広く分布。県内では飛騨地方の久々野町、美濃地方の羽島市、各務原市、海津町などに確認記録がある。
〇減少要因 本種の生育環境となる草地はかつて農道の路傍や用排水路周辺にあった、定期的な草刈りにより維持されてきた二次草地であると考えられる。しかし、こうした場所は耕地整理などにより立地が乾性化したり、その立地自体が減少している。

 

 拙い記事をお読みくださりありがとうごさいました。今日(明日)よい一日でありますように。


(出典)
※1:「Rumex crispus(ナガバギシギシ)」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)(英語版)』 (2021/4/29  06:13 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※2:「ギシギシ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/2/19  05:44 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※3:「スイバ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/4/16  19:11 UTC 版)https://ja.wikipedia.org