新型コロナと気温(7)気温変化と気温の影響、陽性者数の見通し(個人的仮説を含みます)

↓新型コロナに関する私の新しい記事です。仮説の変更もあります。(2021/10/17追記)
「感染急減の謎 強い変異株を生めず失速か拡大と収束の既定のリズムか 2021-10-06 12:30:43」
 第5波の結果も踏まえた内容で、接触等不明者の新たな流行への影響は否定されました。温度の影響は不明です。「既定の山」説ではない「既定のリズム」説も。

 


(本文)

 このテーマについて「新型コロナ陽性者数変化をロジスティック方程式で理解する」という内容に帰結し、気温との関係については、気温変化の影響と気温そのものの影響があるのではないかと思われました。整理してみます。


 生物の個体数の変化などに適用される成長曲線として代表的なロジスティック曲線のもとである微分方程式 dN/dt=r・N(1-N/K)(ロジスティック方程式)が適用できるのではないかと考え、N(個体数)を「東京都の累計陽性者数」として横軸(時間軸(均等な日付順)ではない点に注意)、dN/dt(成長速度)をその累計陽性者数の時の「東京都の新規陽性者数の7日間移動平均」として縦軸にしてグラフ化した結果(前回までに掲載したFig.4を下に再掲します)、複数の放物線の山の連なり、dN/dt=dN1/dT1+dN2/dT2+dN3/dT3+・・+dNi/dTi(Ni、Tiはiが異なれば別の変数)ではないかと考えました。rは内的自然増加率と言われるものです。個々の放物線は、環境収容力Kという上限で成長速度が頭打ち(新規陽性者数0)になり定常状態になりますが、放物線の山の重ね合わせ(放物線の山が交錯する期間は足し算となる)により、放物線の規模が次々大になればグラフが正の傾きの直線dNi/dTi=m・Ni のような形にもなります(mは定数)。つまり、マルサス・モデルによる「感染爆発」のような状況も起こり得ることになります(現在それに似た状況です)。

(Fig.1~Fig.3は前回までの記事に掲載)


 2020年6月から12月末までのグラフ(Fig.4)から目視で存在を仮定した放物線は次のとおりです(2021年1月始めの情報も追記 2021/1/9)。規模の( )内は累計陽性者数。

 

① ピーク 8月5日頃、ピーク時の新規陽性者数350人/日(7日間移動平均)、規模1.65万人(0.6~2.25万)、始まり 6/10頃、関連 5/21前後の4日間の日最低気温10~13℃
② ピーク 9月15日頃、ピーク時の新規陽性者数180人/日(7日間移動平均)、規模0.5万人(2.1~2.6万)
③ ピーク 9月25日頃、ピーク時の新規陽性者数40人/日(7日間移動平均)、規模0.25万人(2.45~2.7万) 
④ ピーク 10月15日頃、ピーク時の新規陽性者数190人/日(7日間移動平均)、規模0.7万人(2.45~3.15万)
⑤ ピーク 11月12日頃、ピーク時の新規陽性者数270人/日(7日間移動平均)、規模0.9万人(2.95~3.85万) 
⑥ ピーク 11月26日頃、ピーク時の新規陽性者数40人/日(7日間移動平均)、規模0.35万人(3.7~4.05万)  
⑦ ピーク 12月3日頃、ピーク時の新規陽性者数468人/日(7日間移動平均)、規模1.85万人(3.4~5.25万)、始まり 11/12頃、関連 10/20前後の日最低気温10~12℃ 
⑧ ピーク 12月29日頃、ピーク時の新規陽性者数740人/日(7日間移動平均)、規模2.5万人(4.5万~)、始まり 12/8頃、関連 11/15の7.5℃
⑨ ピーク 不明/規模 不明(5.7万~)、始まり 12/29頃、関連 12/6前後の日最低気温4℃台

⑩ ピーク 不明/規模 不明(6.5万~)、始まり 1/5頃、関連 12/15から日最低気温2℃以下

 

「気温変化」の影響と「気温」の影響 
 ①の放物線の山は一般的に第2波と言われているものです。前回までの記事で「東京都の陽性者数の7日間移動平均の日毎変化率」と「東京都の日最低気温の7日間移動平均」の推移を日付順のグラフにしましたが、

「7日間移動平均で0.5℃(週3.5℃)程度以上の日最低気温の変化(上昇、下降)により、2~2.5週後の新規陽性者数の変化率を0.96倍程度以下か、1.04倍程度以上にする(仮説)」

 という関係が見られました。しかし、この「気温の変化」は今回の放物線を多少歪にしたり移動を早めたり遅らせたりするものの、山自体の大きさ(規模)は変わらないと考えました。
 しかし、ロジスティック方程式による放物線の山の大きさ(規模)に対しては「気温変化」ではなく「気温」そのものが影響している可能性は考えられました。(以下、気温関係のグラフ等はここにはつけていないので申し訳ありません。文章による言及のみで判断してください。気温データは気象庁のサイトで東京都の日最低気温を参照しました。以下の考えに至った理由は、夏にあった第2波の流行中の気温が高かったことから、「流行中の気温」では、一般に低温で流行すると言われることに対して説明がつかず別の可能性を考えたからです。)

 第2波(ピーク8月5日頃の①の放物線の山)は、5月21日前後に日最低気温が10℃~13℃程度の日が4日間ほどあったことと関係(第2波の始まりをロジスティック方程式のグラフから6月10日頃と考えその約3週前)するのではないか、ピーク12月3日頃の⑦の放物線の山も同様に、その始まり(11月12日頃)の約3週前の10月20日前後に日最低気温が10℃~12℃程度の日が5日ほどあったことと関係するのではないか、ピーク12月29日頃の⑧の山はさらに11月15日の7.5℃現在進行を始めた⑨の山12月6日前後の4℃台と関係し、逆にピーク9月15日頃の②の放物線の山、ピーク10月15日頃の④の放物線の山は8月下旬から9月上旬の高温期に発生し規模が小さいのではないかと考えました。ピーク9月15日頃の②の山の始まりが遅れた理由は7月下旬と8月上旬の気温上昇の影響かもしれません。

 気温の影響が顕在化するまで、放物線の山の始まりまで約3週間、さらに山の大きさ(規模)が大きいほど山裾の幅が広いためピークまで日数がかかります。テレビ等では「冬だから」程度しか言っていませんが、もしもこの仮説が正しければ、これだけ離れた時期の気温が影響するのは意外なことだと思います。山が大きいとピークから2か月以上前の気温ということになります。
 まとめると、

「10℃程度以下で発生したウイルスには強い拡散力(適応力)があり、さらに低温になるほど大きな陽性者の山を作り、高温期に発生したウイルスは拡散力がやや強くないのではないか。この気温の影響が顕在化するには少なくとも3週間以上かかり流行中の気温は関係ないのではないか。(仮説)」

 ということです。
 もし仮説どおりなら、当面、低温期での発生が続き拡散力は強いことになるため、簡単に新規陽性者数は下がらないと思います。また、次の夏の前に10℃程度の日が数日間続くことがある場合、その時に感染拡散防止に注意しなければ夏に感染の山ができる可能性があります。

 感染するということは、たとえ無症状でも、ウイルスに変異のチャンスを与え、拡散源にされ、ウイルスに利用されるということでもあります。「うつさない」「うつされない」を徹底し、拡散を断ち切り、新規陽性者数ゼロまで下げないと、市中に残っていれば再び拡散し、陽性者の山ができます。

 

陽性者数見通し

  以下は、1月5日までのグラフに基づいて予想を書いていましたが、1月5日から1月7日の新しいデータはさらに急な傾きを示し始めたため、別の感染の山が同時発生しているのではないかと思われます(ちょうど3週間前の2020年12月15日から日最低気温が2.0℃以下になった影響かもしれません。ここの仮説によれば小池知事が言われるクリスマスの影響ではありません。上の仮説どおりなら世代交代途中の山なのでFig.4の③、⑥のような小さな山であることを祈ります。現在の寒波の影響は1月末以降に出ます。より拡散力のあるものが生まれてアイドリングに入ったところなのかもしれません。人為的なコントロールはよほど徹底的にやらないとなかなか効果が現れない可能性があります。)(2021/1/8追記)。
 グラフ(Fig.4)の右端(スマホで右端が欠ける場合、クリックして全体を表示してください)を見ていただくとわかるとおり、現在の東京都は、正の傾きのほぼ直線になっており、感染爆発(マルサス・モデルによる増加)の状況です。掲載のグラフにはまだ載せていませんが、年明けの少なくとも1月5日までは一直線に連なっています。同じペースが続くとした場合の予想は簡単と思ったら、注意点もありそうです。現時点での計算を掲載します。

 

(1月5日までのグラフから)
 dNi/dTi=m・Ni
への当てはめだけです(が実際のグラフは原点を通らないため注意が要ります)。
まず、グラフで直線に見える線の傾きmを求めます。
「東京都の累計陽性者数[人]」と「東京都の新規陽性者数の7日間移動平均[人/日]」は、
2021/1/5 64752,    979.4
2020/12/29   57896,    787.7
2020/12/8     44343,    434.4
12/29~1/5の傾き=(979.4-787.7)/(64752-57896)=0.02796
12/8~1/5の傾き=(979.4-434.4)/(64752-44343)=0.02670
間をとらず新しいほうをとって、m=0.028[/日]とします。(12月8日からとっても、ほとんどぴったり傾きが一致し、ほぼ一直線に見えることがわかります。ただし、途中の僅かな凹凸から放物線の山が隠れていると考えたというのが、ここでの仮説です。)

原点を通らないため

dNi/dTi=m・Ni+A

2020/12/29 のN0=57896,    dN0/dT0=787.7, m=0.028[/日]を使い、A=-833

よって

dNi/dTi=m・Ni-833=0.028(Ni-29764)
次にこの微分方程式を変数分離で解くと
ln│N-29764│= m・t+C
N=(e∧C)・e∧(m・t)+29764
12/29をt=0 とし、57896[人]を初期値N0とすると、e∧C=57896-29764=28132となり、よって、

N=28132・e∧(0.028・t)+29764 (tの単位は[日])
となります(時間の関数であるロジスティック曲線)。

東京都の「累計陽性者数」の予想(1月5日までのグラフのままマルサス増加の場合)
2020/1/10はt=12で、N=69130[人]
2020/1/20はt=22で、N=81851[人]
2020/1/30はt=32で、N=98681[人]
2020/2/28はt=61で、N=184994[人]
2020/3/31はt=92で、N=399544[人]

 

 0.028が効いているのか、指数的な伸びというより月に2倍程度の伸びになっています(下も同じ)。まだ、どこかやり方計算が違うのでしょうか。ちなみに、1月5日、つまり、t=7 を入れるとN=63987となり(実際は64752)、実際とはかなりズレます。傾きの計算ではこの値を参照しましたが、「時間」については式の組み立てにデータを参照しておらず(微分方程式にはdtがあるのみなので)、微分積分が間接的に時間に関わるのみだからでしょう。そもそも、マルサス・モデルに定数項をつけて、グラフと辻褄を合わせたのがいけなかったのかとも思いましたが、d(N-P)/dt= m(N-P)としたところで、結果は同じことになるので、これはこれで一つのアプローチと考えます。一般的には指数的なものは、対数グラフでlogN=R・t+Qの形で回帰させるのが普通なので、そちらでもやってみようとしましたが、今度はせっかく微分方程式のグラフで明瞭に現れた直線を無視することになります。12月29日から1月5日について、累計陽性者数の自然対数をとって関係を見ましたが、やはりmに相当するものが0.0153から0.0195などとなってばらつきがあり、0.028とも全く異なります。時系列による後者のような一般的なやり方をされる方が殆どと思われますので、感染爆発といいながら明確な予測値がでてこないのはこのためではないかと思います。ひとまず、ここに書いた方法を現状での予測と考えます。また、何かわかれば、追記または新たに記事にします。

 
東京都の「新規陽性者数の7日間移動平均」の予想(1月5日までのグラフのままマルサス増加の場合)
dNi/dTi=m・Ni-833により、上の各Nから、
2020/1/10は、1103[人/日]
2020/1/20は、1459[人/日]
2020/1/30は、1930[人/日]
2020/2/28は、4346[人/日]
2020/3/31は、10354[人/日]

 

 7日間移動平均ですので、実際の新規陽性者数は曜日次第で多かったり少なかったりあると思いますし、増加途上のため実際のほうが多い可能性が高いでしょう。2月末で1日当たりの東京都の新規陽性者数の平均が約4300人になります。

 これより大幅に少なくなれば、今の感染爆発のペースを回避できていることになります。逆に大幅に多くなれば、山の規模が大きいのか、別の山が同時発生している可能性があります。気温低下の度合いによって変わる可能性もあります。そもそも気温低下で無制限に拡散力が増強されるのかもわかりません(適温があるのか)。日最低気温で1~2℃、氷点下と、あと2段階程度の影響はあり得ます(影響の顕在化は1か月以上あと)。上の説明で成長速度の放物線の山がどんどん大きくなることで、あたかもマルサス・モデルのようになっているので、山を大きくする要素が頭打ちになれば拡散力も頭打ちになるでしょう(仮説どおりならですが)。

 

(↓2021/1/8追記)

(↓仮に1月5日から1月7日の傾きから計算すると・・新規の山が小さな山ならここまでにはなりません)
 dNi/dTi=m・Niへの当てはめ
まず、グラフで直線に見える線の傾きmを求めます。
「東京都の累計陽性者数[人]」と「東京都の新規陽性者数の7日間移動平均[人/日]」は、
2021/1/5 64752,    979.4
2021/1/6     66343,    1071.9
2021/1/7     68790,    1230.4 
1/5~1/6の傾き=(1071.9-979.4)/(66343-64752)=0.05814
1/5~1/7の傾き=(1230.4-979.4)/(68790-64752)=0.06216
よりきつい値に変化しており、仮に新しいほうをとって、m=0.062[/日]とします。
原点を通らないため
dNi/dTi=m・Ni+A
2021/1/5 のN0=64752,    dN0/dT0=979.4, m=0.062[/日]を使い、A=-3035
よって
dNi/dTi=m・Ni-3035=0.062(Ni-48952)
次にこの微分方程式を変数分離で解くと
ln│N-48952│= m・t+C
N=(e∧C)・e∧(m・t)+48952 
1/5をt=0 とし、64752[人]を初期値N0とすると、e∧C=64752-48952=15800となり、よって、
N=15800・e∧(0.062・t)+48952 (tの単位は[日])
となります(時間の関数であるロジスティック曲線)。
東京都の「累計陽性者数」の予想(1/5から1/7 のペース場合)
2020/1/15はt=10で、N=78323[人]
2020/1/20はt=15で、N=88997[人]
2020/1/30はt=25で、N=123393[人]
2020/2/10はt=36で、N=196184[人]
東京都の「新規陽性者数の7日間移動平均」の予想(1/5から1/7 のペース場合)
dNi/dTi=0.062・Ni-3035により、上の各Nから、
2020/1/15は、1821[人/日]
2020/1/20は、2483[人/日]
2020/1/30は、4615[人/日]
2020/2/10は、9128[人/日]
 7日間移動平均のため、実際の数字は曜日によりかなり異なります。


 お読みいただき、ありがとうございました。

以上の内容の一部は、公的機関にも送りました。

(以下、リンク)
「新型コロナと気温(6)ロジスティック方程式による解釈(2)」
「新型コロナと気温(5)ロジスティック方程式による解釈(恐い話)」

「新型コロナと気温(4)グラフの理解」