Eテレ「クラシック名演・名舞台2020」/東急ジルベスタ(大晦日のテレビ感想)

【Eテレ「クラシック名演・名舞台2020」】

 各地のオーケストラの演奏(2020「クラシック音楽館」で放送)から楽章での抜粋によるベートーベンメドレー。途中、ルツェルン音楽祭からブロムシュテット、アルゲリッチによるベートーベン。
 2020年は、ヘルベルト・ブロムシュテットさんの来日はなかったので、やはりこの方の姿は見たかったという方はたくさんおられることでしょう。ご年齢が93歳ですので、この1年が本当に惜しかったですね。

 とても印象的で引き込まれた演奏が一つありました。
 エンニオ・モリコーネさんの「ガブリエルのオーボエ」のギター編曲版で村治佳織さんによる演奏。音楽は静けさの中に光を灯すようなものです。という感じでした。


N響第9 指揮 パブロ・エラス=カサド 2020年12月23日NHKホール
〇第1楽章
 重さはなく、編成が小さいこともあり歯切れのよい演奏。というより打楽器を叩いているような演奏でした。
〇第2楽章
 同じパブロだからという訳ではありませんが、ピカソの絵のような、指揮者がスペイン出身だからという訳ではありませんが、ジョアン・ミロの絵のような、絵に登場する者たちが次々現れるような、シュルレアリスムのような演奏でした。私の独特な感覚です。
〇第3楽章 
 ホルン「パッパッ、パッパッ」がはっきり聞こえたり、リズミカルで澱みや溜めが一切ない、ルバートもない、明瞭な演奏でした。この楽章にはリズミカルというイメージは一切ありませんでたしたが、そういう所がいくつもありました。普通は「バーバーバーーン(Es→Es↗B)、、ジャーーン(B)、、バーバーバーーン(B→B↗Es)、、ジャーーン(Es)、、」となるところが「パパパッ、バン、パパパッ、バン、」「本当はこんな音楽なのかもしれない」と思わされるくらい普通とは違う演奏でした。優しい歌がしみじみ聞こえてくる音楽とは違う演奏、湿り気がなくカラッとした演奏でした。ショッキングでどう感じたらいいかわかりません。変わった演奏にはそれなりの説得力がないと、ただ「変わった演奏」ということになってしまいます。しかし、ウェットなものを一切取り除いたこと以外に今一つわかりませんでした。
〇第4楽章
 やはり、溜めが一切ない潔すぎる演奏。
歓喜の歌までテンポが同じだったと感じるくらいです(快活)。最後フィナーレは煽らずにきっちり終わりました(先日聴いたラトルさんのよう)。
 
 全体を通して「快活」、ずーっと同じテンポ、ルバートも全くない感じで演奏されたかのような印象でした。「苦悩から歓喜へ」は一切なし(そういう形もありなのだろうと思います)。表現過多の要素一切なし。スッピンの第9とはこういうものなの?楽譜のテンポ記号で本当はもっと変化があるんじゃないの?という演奏でした。ピリオド系の演奏の感じとも違います。古楽器ティンパニーというわけでもありませんでした。オーブンでカリカリに焼いた第9とでもいいましょうか。やはりちょっと変わった演奏で保守的な方にはおそらく受け入れ難いものだったと思います。だから第9の放送時間がいつもと違ったのかもしれないですね。
 「余計なものを一切そぎ落とし無意識の中から普遍的なものを取り出すシュルレアリスムのような演奏(さすがはピカソやミロの国の人)」「快活の一言に尽きる演奏」というのが私の感想です。


【東急ジルベスタ】

指揮 沼尻竜典 東急フィル

 コンサートが開催されたこと自体、先ほどのN響第9もそうでしたが奇跡のようにありがたいことでした。

 沼尻さんの印象は、若い頃の外山雄三さんを彷彿とさせます。
 カウント・ダウンはベートーベン交響曲第5番第4楽章。カサドさんの第9のあとだったので、妙にしっくりきて故郷に帰ったような感じでした(味噌汁、お茶漬けの感じ)。見事ぴったり0:00で演奏終わり。
最後は、ストラビンスキーの「火の鳥」より「子守歌」と「終曲」、そしてラデツキー行進曲。以前も東急ジルベスタでやったような。
 そう言えば、12月25日に「風の谷のナウシカ」をみましたが(何度見ても色褪せません)、最後に砂の中の1本の植物の芽だけの映像になり音楽が弦のトレモロのクレッシェンドで終わるところで、私はよく思うのですが、そうです「火の鳥」のフィナーレみたいということです。前の日(12月30日)も思い出してそのことを考えていました。

 

【風の谷のナウシカ】(12月25日)
 せっかく「ナウシカ」が出ましたので、「ナウシカ」の感想です。自然との共生と対立が大きなテーマです。善悪が明確に分かれた単純なものとは少し違う、葛藤もあります。私が思うクライマックスは、王蟲(おうむ)の暴走を止めたナウシカに、婆様「伝説は本当じゃった。...その者、青き衣をまとい.... 」のところです。ここで涙が出そうになります。ここだけが少し宗教がかっていて、救世主の降臨、復活のような場面であり、その人はいつも優しく明るく皆を励まし、自然との共生という信念を貫く行動の人、「身近にいる人」だったというものです。しかも、天から降臨ではなく地面からすくい上げられてです。あなたの近くにもそのような方はいらっしゃるでしょうか。
 さらに話が飛びますが、中村哲さんもそのような方だったのだろうと思います。アニメの主人公に喩えるのはどうかとは思いますが、まさに神様のような高い精神、そして行動の方だったと思います。中村哲さんはプロテスタントのクリスチャンでした。中学在学中にバプテスト教会でバプテスマ(プロテスタントでの洗礼)を受け、所属した教会の最初期の生え抜き会員だったと言います。(※)
 

※:「中村哲(医師)」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/27  01:54 UTC 版)https://ja.wikipedia.orgEテレ「クラシック名演・名舞台2020」/東急ジルベスタ(大晦日のテレビ感想)