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チャイコフスキー「花のワルツ」カラヤンVPO 『音楽の泉』

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『音楽の泉』
ラジオ第1 毎週日曜 午前8時05分
FM 再放送 毎週月曜 午前5時
12月14日月曜NHKFM 午前5時00分~ 午前5時50分
音楽の泉 ▽チャイコフスキーのくるみ割り人形
「組曲「くるみ割り人形」作品71a」
チャイコフスキー:作曲
(管弦楽)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、(指揮)ヘルベルト・フォン・カラヤン
(21分46秒)
<ユニバーサル UCCD-4401>

 月曜日の早朝、『音楽の泉』の再放送を聴きました。皆川達夫さんの後を引き継がれて半年以上が経ち、奥田佳道さんも『音楽の泉』の顔になってきたように感じます。
 今回聴いた中で、私の好きなチャイコフスキーの「花のワルツ」、久々に聴きました。カラヤンとウィーンフィルによる1961年録音のものでしたが、瑞々しく温度を感じる演奏で心が暖かくなりました。
 カラヤンが好きでないという方の理由としてよくあるのが、表面的な美しさだとかレガート奏法の一本調子などではないかと思いますが、この演奏は全くそんなことはないと思いました。また、カラヤンの粘着性のある演奏がチャイコフスキーとマッチするのかもしれません。脂の乗った50代前半、演奏も、ベルリンフィルではなくウィーンフィルです。
 この曲の好きなところの一つは、何と言っても冒頭です。ハープの音にうっとりします。ほんとに素晴らしい作品をチャイコフスキーは残してくれました。ニ長調なのでとても華やかです。「花のワルツ」という内容にピッタリです。
 それから、細かいですが、中間のメロディーで、165小節、173小節、181小節、189小節、229小節、235小節からの6回ある旋律(YouTubeのピアノ版スコア付き動画で確認しました)についてです。歌い始めが、「音名:D↗Dis↗│E↘A(階名:ド↗♯ド↗│レー↘ソ)」という音の動きですが、アウフタクトで始まるメロディーで、6回のうち奇数回目でテヌートというかテンポ・ルバートというかアウフタクトの2音に少し「溜め」をつけたりしますが、カラヤン、ウィーンフィルによるこの演奏の溜めは絶妙でした。やり過ぎでなく、さりげなく心地良くちょうど良いルバートです。おそらくカラヤンとベルリンフィルによる録音をラジオなどで何回か聴いているはずですが、こんなに鮮やかなルバートだったろうかとラジオで聴きながら感じ魅了されました。
 ユニバーサルミュージックによるCDが放送の音源でしたが、もとの録音はデッカ・レコードのようです。レコード会社の変遷はややこしいです。以下にWikipediaからの抜粋を載せました。

(昨日の追加)
 昨日の記事のベートーベン交響曲第5番の調性のことで、ふと思った点があったので追加します。
 ベートーベンが活躍した頃は、ピアノの調律が今のような12平均律の普及した状況ではなく、例えば、キルンベルガー第1調律法、第2調律法などでは12平均律にはない純正な(振動数比が整数比でうなりがない)音程がたくさんある(純正のほうが耳で調律できてやりやすいと言います)反面、そのしわ寄せで、特定の音程にズレが集中しました。それがD-Aの5度で、そのうなりから「ウルフの5度」と言われます。1オクターブを12個の音に分ける起源は純正な完全5度をたどって作るピタゴラス音律で、純正完全5度(振動数比2対3)を何回重ね(掛け合わせ)てもオクターブ系列(2のべき乗倍)にはならず、つまり12音一巡しても出発点の音のオクターブ列ぴったりには戻りません(半音の4分の1程度のズレで、ピタゴラスコンマと言います)。このズレの処理の工夫が音律、調律法の歴史になりました。12音を維持しつつ、これらに近い自然倍音列(振動数比が2のべき乗対〇〇)やその他の単純な整数比の音程に置き換えた音律も現れ、代表的なものが完全5度の次の自然倍音である長3度でした。12平均律は全ての半音の間隔を均等に2の12乗根倍(無理数なので整数比にはならない)にしたもので、長3度はやや自然倍音列からずれ、完全4度(ただし単純な整数比には合致)、増4度、増5度、短7度は自然倍音列とは完全に異なる音程で、これらを除くと自然倍音列と非常に良く一致する音律です。
 さて、前置きが長くなりましたが、例えば♭系の調では♭3個以上ならA音に♭がついていて、ウルフのD-Aが回避できます。♯系だと♯4個目以降にD音に♯がつき、♯5個目以降にA音に♯がつき同様にD-Aを回避できます。
 それで、ベートーベンの交響曲第5番では第1楽章がハ短調(中間で平行調の変ホ長調)、第2楽章が変イ長調、第3楽章がハ短調ですが、ハ短調と平行調の変ホ長調は♭3個、ハ短調の平行調の下属調の変イ長調は♭4個です。ピアノソナタ第8番も同じ調の構成でした。D-Aを回避する調になっています。
 長い説明になってしまいましたが、作品の調を選ぶ際に当時の音律、ピアノの調律法の影響を受けていたのではないかということでした。
 第4楽章のハ長調では、基本的に長調なのでそれほどD-Aの音程は出てきませんが、昨日同様YouTubeのピアノ版スコア付きの動画で確認すると数小節現れる箇所が何箇所か(10箇所もないくらい)ありました。しかし、第4楽章は和音をじっくり聴くというより勢いがある楽章なので、おそらくそれほど気にならないでしょう。
 なお、ベートーベンのピアノ協奏曲第5番では調性は第1楽章は変ホ長調(♭3個)、第2楽章はロ長調(♯5個)、第3楽章は変ホ長調(♭3個)でで、ピアノ協奏曲第3番では、第1楽章はハ短調(♭3個)、第2楽章はホ長調(♯4個)、第3楽章はハ短調~ハ長調(途中の主題で変ホ長調、変イ長調、変ニ長調(♭5個))とD-A回避は当てはまります。しかし、ピアノ協奏曲第4番はト長調とホ長調で♯1個なので外れています。
 結論としては、それらしい気もするけれど、異なる例もあるので、なんとも言えないということになります。簡単に答えが出ないからこそ、考える価値があるとも言えます。

 稚拙な考察、文章をお読みくださりありとうございました。

 

(デッカ・レコード)(※1)
デッカ・レコード(Decca Records)は、イギリスのレコード会社。アメリカ合衆国にも子会社を設立したが、第二次世界大戦の混乱の中で両社の資本関係は切れ、その後は各々が独自の道を歩むことになった。しかし、1990年代の世界的な音楽業界の再編によって、現在は両社共にユニバーサル ミュージック グループの一部となっている。
(中略)
1980年にポリグラムによって買収された後、デッカはポップスから手を引き、クラシック音楽のレーベルとしてのみ残った。現在はユニバーサルミュージック内のユニバーサルクラシックスの一部門という位置づけられているが、ジャズ部門においてはヴァーヴ・レコードから発売されている。更に、2007年からは、フィリップス・レコードのクラシック部門が、自社グループの傘下に入った。
日本での配給はキングレコードが1953年頃から行っていたが、本体がポリグラム傘下となった結果、1982年にポリドールの完全子会社として新たに設立されたロンドンレコード株式会社に移った。ただし、1970年代前半までのタイトル(主にクラシック作品)は英デッカの意向によりキングレコードから引き続き発売されたものもあった。これはユニバーサルミュージック傘下となった2000年まで続いた。なお、ロンドンレコードは1984年に親会社のポリドールに吸収合併された。

(ドイツ・グラモフォン)(※2)
1941年、シーメンス(Siemens & Halske)が英グラモフォンの資本を取得し、ドイツ資本の会社となる。1962年、オランダのフィリップスの音楽部門であるフィリップス・レコード(フォノグラム)と業務提携し、DGG/PPIグループを形成。 1971年に米コロムビア・英EMIなどの競合会社に対抗するため、シーメンス・フィリップス両者合弁の持ち株会社としてポリグラムを設立、フォノグラムとともに同社の傘下に入る。 1980年代、ポリグラムの事業拡張の失敗で、グラモフォンは苦境に陥るが、フィリップスがソニーとともに開発したコンパクトディスク(CD)の市場拡大とともに業績を回復する。ハノーファーのCD工場は当時世界最大で、その製品の高い品質でも評価された。

1987年、シーメンスは事業再構築の一環として、ポリグラムへの出資をフィリップスに売却、音楽事業から撤退した。 1999年、グラモフォンはポリグラムともどもシーグラム社に買われ、ユニバーサル ミュージックの一部門として再編され、2000年にはさらにヴィヴェンディに売却され、現在は同社の傘下にある。

グラモフォンが擁するレーベルはドイツ・グラモフォン(DGG)のほか、デッカ・レコード(「ロンドン」)、オワゾリール、アルヒーフ(バロック音楽を中心とする古楽の専門レーベル)など。ポリグラム傘下にあったフィリップス・クラシックスとECMも同じくユニバーサル ミュージック グループ内で活動している。

日本では、ポリドール・レコードが小売をしていたが、ビクターエンタテインメントを経て1999年以後はフィリップス(フォノグラム)レコードとともに、ユニバーサルミュージックが販売している。


※1:「デッカ・レコード」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/4  23:15 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※2:「ドイツ・グラモフォン」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/4/8  20:44 UTC 版)https://ja.wikipedia.org