身近な自然観察 晩秋初冬の樹木

 この時期の樹木の花、実が目立つ木を載せます。

サザンカの園芸種
 サザンカの園芸種(たぶん)が満開です。この季節にこれだけ華やかな景観を作ってくれています。ツバキとサザンカの見分けを参考にするとサザンカに近いと考えました。まず「花ごと」ではなく「花びら」が落ちていますし、よく見ないとわかりませんが、枝や葉柄に微かに小さな毛があるように見えます。また、雄蕊は分離しています。ただし、原種のサザンカは日本では四国、九州あたりが分布の北限のようですし、原種の花の色は淡い桃色~白ということなので、花の色と当地域(東海地方)にあることから園芸種と思われます。カンツバキは背が大きくならないので、少し違うかもしれません。
 サザンカは、キク類 ツツジ目 ツバキ科 Theaceae Theeae連ツバキ属 Camellia、学名はCamellia sasanqua Thunb.です。
Wikipedia「サザンカ」(※1)によると

「サザンカの名は山茶花の本来の読みである「サンサカ」が訛ったものといわれる。」
「野生の個体の花の色は部分的に淡い桃色を交えた白色であるのに対し、植栽される園芸品種の花の色は、赤色や白色やピンクなど様々である。」
「なお、ツバキ科の植物は熱帯から亜熱帯に自生しており、ツバキ、サザンカ、チャは温帯に適応した珍しい種であり、日本は自生地としては北限である。」
「サザンカには多くの栽培品種(園芸品種)があり、花の時期や花形などで3つの群に分けるのが一般的である。サザンカ群以外はツバキとの交雑である。(サザンカ群、カンツバキ群(サザンカとツバキの種間交雑園芸種群)、ハルツバキ群)」

Wikipedia「ツバキ科」(※2)によると

「ツバキ科の学名:Theaceaeはかつてこの科にあったチャ属(Thea L.)に由来する。チャ属は1970年代にツバキ属に統合された。 」

Wikipedia「ツバキ」(※3)によると、

「日本内外で近縁のユキツバキから作り出された数々の園芸品種、ワビスケ、中国・ベトナム産の原種や園芸品種などを総称的に「椿」と呼ぶが、同じツバキ属であってもサザンカ(学名: Camellia sasanqua)を椿と呼ぶことはあまりない。なお、漢字の「椿」は、中国では霊木の名で、ツバキという意味は日本での国訓である。」
「サザンカとの見分け方 
ツバキ(狭義のツバキ。ヤブツバキ)とサザンカはよく似ているが、ツバキは若い枝や葉柄、果実は無毛であるのでサザンカとか区別がつく。また次のことに着目すると見分けることができる。ただし、原種は見分けやすいが、園芸品種は多様性に富むので見分けにくい場合がある。
①ツバキは花弁が個々に散るのではなく萼と雌しべだけを木に残して丸ごと落ちるが(花弁がばらばらに散る園芸品種もある)、サザンカは花びらが個々に散る。
②ツバキは雄しべの花糸が下半分くらいくっついているが、サザンカは花糸がくっつかない。
③ツバキは、花は完全には平開しない(カップ状のことも多い)。サザンカは、ほとんど完全に平開する。
④ツバキの子房には毛がないが(ワビスケには子房に毛があるものもある)、サザンカ(カンツバキ・ハルサザンカを含む)の子房には毛がある。
⑤ツバキは葉柄に毛が生えない(ユキツバキの葉柄には毛がある)。サザンカは葉柄に毛が生える。
⑥ツバキの花期は早春に咲くのに対し、サザンカは晩秋から初冬(10 - 12月)にかけて咲く。」


↓サザンカ園芸種  2020/11/28 


↓サザンカ園芸種 枝、葉柄の毛、2020/12/4 

↓サザンカ園芸種 雄蕊 2020/12/4 

↓サザンカ園芸種 落下花びら 2020/12/4

↓サザンカ園芸種 全景 2020/12/4 



イチョウ
 以下、Wikipedia「イチョウ」(※4)の知識です。イチョウ属の学名 Ginkgo は、日本語「銀杏(ぎんきょう)」に由来しています。オランダ商館付きの医師で『日本誌』の著者エンゲルベルト・ケンペル(1651年9月16日~1716年11月2日)が最初に記しましたが、「g」はケンペル自身の誤記と言われます。これを引用したカール・フォン・リンネが1771年に著書に記載し、リンネの命名で学名が確定したとされます。分類上、門または綱レベルから単一の種で、裸子植物門(イチョウ植物門)、イチョウ綱、イチョウ目、イチョウ科、イチョウ属に属する唯一の「原生種」です。

 

「種小名の biloba はラテン語による造語で、「2つの裂片 (two lobes)」の意味であり、葉が大きく2浅裂することに由っている。」
「自生地は確認されていないが中国原産とされる。中国でも10世紀以前に記録はなく、古い記録としては、欧陽脩が『欧陽文忠公集』(1054年)に書き記した珍しい果実のエピソードが確実性の高いものとして知られる。それに先立ち、現在の中国安徽省宣城市付近に自生していたものが、11世紀初めに当時の北宋王朝の都があった開封に植栽されたという李和文による記録があり、中国でイチョウが広くみられるようになったのは、それ以降であるという説が有力である。」
「その後、仏教寺院などに盛んに植えられ、日本にも薬種などとして伝来したとみられるが、年代には古墳・飛鳥時代説、奈良・平安時代説、鎌倉時代説、室町時代説など諸説あるものの、憶測や風説でしかないものも混じっている。六国史や平安時代の王朝文学にも記載がなく、鶴岡八幡宮の大銀杏(「隠れイチョウ」)を根拠とする説も根拠性には乏しいため、1200年代までにはイチョウは日本に伝来していなかったと考えられている。」
「ヨーロッパには1692年、ケンペルが長崎から持ち帰った種子から始まり、オランダのユトレヒトやイギリスのキュー植物園で栽培され、開花したという。1730年ごろには生樹がヨーロッパに導入され、(略)」

 これを読むと、今あるイチョウは1000年ほど前に中国のごく限られた場所にあったものが、人の手で次第に世界に広がったということになります。分類上、イチョウ植物門以下で単一の種という特殊な植物と言えますが、イチョウ属で唯一の「原生種」とあります。Wikipediaにはイギリスで産出したジュラ紀のイチョウ属の植物の化石、アメリカの始新世ヤプレシアンの地層て産出したイチョウそのものの化石が紹介されていました。イチョウ植物門のうち原生のイチョウ以外の種、原生のイチョウも中国の特定地域以外のものは絶滅していたということになります。似た話としては、1946年に中国四川省(現在の湖北省利川市)で現存していることが確認されたメタセコイア(※9)がありますが、その後、日本全国の公園、並木道、校庭などに植えられています。これも中国発でした。

 絶滅に瀕した大型動物などを復活させるのは容易なことではありませんが(種内の社会性や生態系ごと必要となる)、人の関与により植物ではそれが比較的容易に可能になるということがわかります(ただし、生態系への依存性が高いと困難だと思いますし、自律的に繁殖しない場合は自然な状態の復活とは言えないかもしれません)。
 雌雄異株で、裸子植物なので受粉様式は被子植物と異なります。「精子」があります。

「1895年、帝国大学(現、東京大学)理科大学植物学教室の助手平瀬作五郎が、種子植物として初めて鞭毛をもって遊泳するイチョウの精子を発見した。平瀬は当時、ギンナンの内部にあった生物らしきものを寄生虫と考えたが、当時助教授であった池野成一郎に見せたところ、池野は精子であると直感したという。その後の観察で、精子が花粉管を出て動き回ることを確認し、平勢は1896年(明治29年)10月20日に発行された『植物学雑誌』第10巻第116号に「いてふノ精虫ニ就テ」という論文を発表した。裸子植物であるイチョウが被子植物と同じように胚珠(種子)を進化させながら、同時に雄性生殖細胞として原始的な精子を持つということは、進化的に見てシダ植物と種子植物の中間的な位置にあるということを示している。この業績は1868年の明治維新以降、欧米に学んで近代科学を発展させようとした黎明期において、世界に誇る研究として国際的にも高く評価された。」

 とあります。若い頃、イチョウの精子が泳ぐと聞いて、動物のようだと思った記憶がありますが、イチョウは日本が関わるエピソードに事欠かない上、そこに日本が世界に誇る業績も含まれています。
 木材や街路樹など利用の話、銀杏(ぎんなん)の話、イチョウ葉の薬理効果について、本多静六による日比谷公園内の首かけイチョウの話、文化との関わりの話などは省略します。とにかく話題のありすぎるすごい植物です。
↓イチョウ 2020/11/28 

↓イチョウ 2020/12/4

 

 

 

センダン
 APG体系で真正バラ類II ムクロジ目 センダン科 センダン属 Melia です。Wikipedia「センダン」(※5 )によると、

「ヒマラヤ、中国、台湾、朝鮮半島南部と日本[12]の熱帯・亜熱帯域に自生する。日本では、本州(伊豆半島以西)、伊豆諸島、四国、九州、沖縄に分布する。温暖な地域の、海岸近くや森林辺縁に多く自生する。庭木や公園、寺院、街路樹にも植えられていて、しばしば植えられたものが野生化もしている。」
「果実は 生薬の苦楝子(くれんし)もしくは川楝子(せんれんし)と称して、ひび、あかぎれ、しもやけに外用し、整腸薬、鎮痛剤として煎じて内服した。樹皮は生薬の苦楝皮(くれんぴ)と称して、駆虫剤(虫下し)として煎液を内服した。樹皮には苦味成分があり、漁に使う魚毒にも使われた。葉は強い除虫効果を持つため、かつては農家において除虫に用いられていた。沖縄県に自生するセンダンの抽出成分が、インフルエンザウイルスを不活化させることが報告された。」

「栴檀は双葉より芳(かんば)し」ということわざのせんだんは別種のビャクダンです。
 実はヒヨドリなどの鳥に食べられて散布されます。身近でもアカメガシワ、クワ、エノキほどではありませんが、道端で見かけることがあります。上の写真は公園にある木で、下の写真は植栽か勝手に生えてきたものか判然としません(道路と私有地の中間)。
↓センダン 2020/11/28 

↓センダン 2020/11/25 〇4779 



トウネズミモチ
 初夏の白い花の時期に、ネズミモチ(在来種)かトウネズミモチ(外来種)か私の浅い知識では判別できず、その後10月頃の実を見てもまだ判別できず、この時期の黒い実になってようやくはっきりしました。実のつく枝のような部分の色が橙色で、実の形はネットの写真どおり丸みがあり、何より大量の実をつけており、間違いなくトウネズミモチです。
 APG体系で、真正キク類I シソ目 モクセイ科 オリーブ連 イボタノキ属 Ligustrum、学名は Ligustrum lucidum
Aiton、中国中南部原産、明治時代に確認された帰化植物です。
 外来生物法の生態系被害防止外来種になっており、分布拡大期、まん延期、重点対策とされます。 旧要注意外来生物です。環境省の付加情報によると、

「大量に熟す果実が鳥により散布され河川等に広く逸出。愛知県の条例では生態系に著しく悪影響をおよぼすおそれのある移入種と指定されてきる。」

 写真は公園にあったもので、植栽されたもののようですが沢山あります。なんで、問題のあるものを植えてしまうのだろうと素直に疑問を感じます。
↓トウネズミモチ 2020/11/26 



クスノキ
 クスノキ科ニッケイ属で、セイロンニッケイ(シナモン)は近縁種です。英名がJapanese Cinnamonのヤブニッケイもあります。クスノキ科には、タブノキ属、クロモジ属などもあります。
 Wikipedia「クスノキ」(※6)によると、

「世界的には、台湾、中国、朝鮮の済州島、ベトナムといった暖地に分布し、それらの地域から日本に進出した。(史前帰化植物)」
「人の手の入らない森林では見かけることが少なく、人里近くに多い。かつては天然樟脳を採取するため、日本各地にクスノキが植林されてきたが、合成樟脳ができるようになってからは、植林樹が放置されて野生化している。」

クスノキの葉には2つずつダニ室があると言い、

「クスノキの葉のダニ室はクスノキに病変を引き起こすフシダニの天敵の維持に役立っていると考えられている。それも片方では捕食性ダニのシェルターを提供することで、もう片方では捕食性ダニの餌になる植食性ダニを育て捕食性ダニを常駐させることでこれを行っているとみられる。この後者の方法はクスノキの研究で初めて発見されたものである。」

 利用は、街路樹、煙害対策用植栽、木材は古来から舟の材料になり、木部から採取される精油(樟脳)は特に有名です。実については特に利用はないようです。
 カラスやヒヨドリ、ムクドリなどに種子散布される(公益財団法人日本野鳥の会「野鳥により種子散布される樹25種」)ので、道路の脇で生えているものを見かけることがあります。
 アオスジアゲハの幼虫が、クスノキ科のクスノキやタブノキなどを食草としているため、これらの木の近くでアオスジアゲハを見たことがあります。
 ダニ室については、どれでもついているのでしょうか、観察したことがなくわかりません。一度観察してみたいです。
↓クスノキ実 2020/11/30 



マサキ
 APG体系で、真正バラ類I ニシキギ目 ニシキギ科 ニシキギ属 Euonymus、学名は Euonymus japonicus
Thunb.です。枝に翼はなく、しかも常緑樹ですがニシキギの仲間なんですね。以前(夏)、写真からでは判別できませんでしたが、もう迷いません。実がついていました。この後、さらに赤くなり割れて弾けるようです。庭木としての利用くらいしか、利用について情報がありません。(※7)
↓マサキ 2020/11/26 



マユミ
 判別したことがなかったのでよくわかりません。マユミだとすると、これもニシキギ科 ニシキギ属で、日本と中国の林に自生し、庭木として親しまれるとあります。雌雄異株ですが、雌木1本で実がなるとされます。やはり実は熟すると割れるということで、秋、冬にヒヨドリやメジロが実を食べにくるとそうです。材質が強い上によくしなる為、古来から弓の材料となり、名前の由来になりました。(※8)
 写真は高速道路の外側の法面です。夕方のため、あまり鮮明に撮れませんでした。
↓マユミ? 2020/11/30 



お読みくださりありがとうございました。

 
※1:「サザンカ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/23  07:43 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※2:「ツバキ科」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/7/7  02:04 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※3:「ツバキ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/10  00:02 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※4:「イチョウ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/2  16:18 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※5:「センダン」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/8/9  09:51 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※6:「クスノキ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/9/30  13:00 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※7:「マサキ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/9/19  12:10 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※8:「マユミ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/30  19:22 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※9:「メタセコイア」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/25  22:27 UTC 版)https://ja.wikipedia.org