NHKFMクラシックカフェ ドヴォルザーク交響曲第8番

 昨日は、再びクラシックカフェを部分的に聴くことができました。第2楽章のあたりからでしたが、とても好きなドヴォルザークの交響曲第8番でした。この曲を聴くと、特に第1楽章ではちょうど今のような初秋の景色のイメージが浮かんできます。そして第2楽章は秋の風が吹いてくるようです。
 第3楽章は有名ですが、第4楽章が一番好きです。中盤からの鳥のさえずりのようなフルートの旋律があり、これがたまりません。このあたりからじわじわと涙が流れそうになります。テンポを落とし穏やかで温かな弦の歌が波のように繰り返されていき、もう一度鳥の声が少し鳴り、温かさに包まれ涙が溢れます。メロディーメーカーのドヴォルザークならではで、口ずさみたくなる音楽があります。そして、最後は、一気に賑やかに駆け抜けるように終わります。
 ドヴォルザークの大きめの曲の人気曲は、ほかに第9番「新世界より」やチェロ協奏曲、弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」、弦楽四重奏曲のための「糸杉」などがありますが(小品、小品集ならユモレスク、母が教えてくれた歌、スラブ舞曲集第1集、第2集、歌劇「ルサルカ」から「月に寄せる歌」など)、全部大好きです。マイナーな曲だと思いますが、学生の時、「リトアニア民謡の歌詞による5つの男声合唱曲作品27 B.87」を歌ったので、これも好きです(歌いたくなる時があります)。
 第8番の最後の展開は、5年くらい後に完成したチェロ協奏曲のコーダと少し似ていますが、チェロ協奏曲のコーダにはエピソードがあります。片思いの初恋の女性の訃報を聴き、完成していたチェロ協奏曲の最後に長大な美しいコーダを書き足したといいます(ドヴォルザークはその女性の妹と結婚しているのですが)。そもそも、彼女が重病との知らせを聞き第2楽章には彼女が気に入ってくれた自身の歌曲「一人にして」作品82-1(B.157-1)のメロディーを入れていますし、第1楽章で優しさに満ちた第2主題を最初に奏でるホルンは、まるでブラームスが第1交響曲第4楽章の中でクララ・シューマンに捧げるホルンの旋律を入れたのを真似たかのようです(これは私の感想です)。もう最初から彼女に捧げるために書かれたチェロ協奏曲だったとしかいいようがありません。チェロ協奏曲のコーダは泣けます。何度も泣きました。まるで彼女の昇天を表現しているかのようです(静かになり鼓動がかすかに鳴って止まりそうな感じのところからチェロの音が単独ですっーと伸び一気にクレッシェンドし、オーケストラ、金管が加わり嵐のように曲が締めくくられます。嵐のように天に登っていく感じです。)。ドヴォルザークのとても個人的な思いが、最も愛されるチェロ協奏曲の屈指の名曲になりました。
 チェロ協奏曲の場合はエピソードのことも含めて、ドヴォルザークの強過ぎる思いが伝わってくるフィナーレですが、交響曲第8番の第4楽章の終盤のほうは鳥の囀りと優しいメロディーに包まれ穏やかでじわーっと温かい気持ちになり、最後は、爽やかな秋風に包まれ、そして賑やかに終わります。
 ドヴォルザークと言えば、という感じで一つの定番になっているノイマンとチェコフィルによる演奏です。このCDのダイレクトな詳しい情報が調べても出てきませんでしたが、どうも1971年録音盤の演奏のようです。久々に第8番を聴けて、演奏も伸びやかな感じで、終楽章ではやはり、じわーっとなりました。良かったです。

「交響曲 第8番」 ドボルザーク作曲
(37分28秒)
(管弦楽)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)ヴァーツラフ・ノイマン
<コロムビアミュージックエンタテインメント
20CO-2802>