鳥の鳴き声の音程 アオバト キジバト カッコウ(周波数計測版)


 音源の(瞬間瞬間の)周波数成分を計測できるソフトを入手できたため、以前、鳥の鳴き声について「倍音列で鳴いている」可能性を書いていたことについて、確認してみることにしました。なお、計測した画面(分光光度計のように音について周波数成分のスペクトルを表すグラフ)についてはソフト開発者の著作権に関わると思われますので掲載しません。音源は自ら選んでおり、このプログラムによる出力データ自体はソフト開発者の著作権の対象外と考え(計算結果の帰属については言及がないため)、結果のみを利用させていただこうと思いました。画面(グラフ)を載せればイメージしやすいとは思いますが申し訳ありません。

 結果は以下のとおりで、周波数で計測しても倍音列で鳴いている証拠は見つからず、以前「聞きなした」音程も違う場合がありました。
 また、ここに取り上げた鳥の鳴き声自体が倍音を全く含まない音になっているということもわかりました(単一の周波数のピークと、音高が動く時にその中間の周波数成分があるだけで、高音側に全く倍音が出ていません。なお、人の声(自分のハミングの音やアカペラ合唱の音源)などでは高音側にいくつもの倍音のピークがあります。)。つまり、フルートやリコーダーのようなエアリードの管楽器は倍音が少ないと言われることを参考にすれば、人の声のような声帯を振動させる音と違う、エアリードのような発音の仕組みに近いのかもしれません。
2020/10/12 カッコウについて追加計測しました。リンクを参照してください。

 

 

●アオバト
 以前、増4(減5度)の音程と「聞きなし」ていましたが、その点はいくらか合っていました。ただし、倍音列の音程という証拠は出てきませんでした。

(例1)
 下の音が714.8Hzで上の音が1035.2Hzという音程(以前、Fis↗C↘Fisと聞きなしていました)で、
log(1035.2÷714.8)÷log(1.000577789506)=641.16cent
となり、増4(減5)度と完全5度の中間で、増4(減5)度寄りの音程です。以前の聞きなしはある程度合っていました。ただし、倍音列の音程ではありません。
 上がった音から再び下がるところでの下の周波数のピークに796.9Hzがあり、この間隔は
log(1035.2÷796.9)÷log(1.000577789506)=452.93cent
となり、長3度と完全4度のちょうど真ん中で倍音列にはない音程です。

(例2)同じ動画内で別の瞬間の鳴き声
 下の音が757.8Hzで上の音が1023.4Hzという音程で、 
log(1023.4÷757.8)÷log(1.000577789506)=520.18cent
となり、ほぼ完全4度に近く、少し増4(減5)度に寄った音程です。以前の聞きなしからはやや外れています。

(参考)倍音列の音程
〇(11、22、44倍音)(振動数比8対11)551.3179cent
〇(13、26、52倍音)(振動数比8対13)840.5277cent
〇(23、46倍音)(振動数比16対23)628.2743cent


●キジバト
 以前、増4(減5)度で鳴いている可能性を書きましたが、ここで取り上げた例では長3度となり、かなり違っていました。聴くと、ごくごく普通のキジバトの鳴き声ですから、例としては妥当だと思います。長3度ならそれはそれで倍音列の可能性はあるかもしれません。
 キジバトの「ホー↘ホー↗ホッホー」の第2音↗第3音の音が398.4Hzから503.5Hzという音程で、
log(503.5÷398.4)÷log(1.000577789506)=406.70cent
となり、ほぼ平均律の長3度の音程でした。以前予想していた増4(減5)度とはかなり異なります。そして厳密には倍音列とも違います。ただ、揺らぎと考えれば、倍音列による長3度と言えないこともないという程度ではあります。

 第1音↘第2音の音は433.8Hzから398.4Hzという音程(以前、半音の間隔と聞きなしていました)で、
log(433.8÷398.4)÷log(1.000577789506)=147.37cent
となり、半音(短2度)と全音(長2度)の中間の音程でした。倍音列の音程ではありません。

(参考)倍音列の音程
〇(5、10、20、40倍音)(振動数比4対5)386.3137cent


●カッコウ
 以前、ほぼ全部長3度(主にGis↘E)と聞きなしていましたが、周波数で計測するとそれとは異なり完全4度に近いことがわかりました。また、倍音列の音程ではありませんでした。

(例1) 
 第1音↘第2音の音が902.3Hzから683.6Hzという音程で、
log(902.3÷683.6)÷log(1.000577789506)=480.55cent
となり、ほぼ完全4度に近く、少しだけ長3度に寄った音程です。

(例2)
 第1音↘第2音の音が929.7Hzから698.2Hzという音程で、
log(929.7÷698.2)÷log(1.000577789506)=495.75cent
となり、ほぼ完全4度で、音高はほぼAis↘Fです。倍音列の音程ではありません。


(参照音源)
(キジバトは明瞭な方のみを上記で採用)
〇カッコウ
https://youtu.be/2mjd5WntHtk
〇カッコウ
https://youtu.be/BToFuGGSF1o
〇キジバト
https://youtu.be/O60BWqfOFWw
〇キジバト
https://youtu.be/98KIsuru2QA
〇アオバト
https://youtu.be/9TgH6Y7vtyA

 

(用語説明)

以下、以前自分でまとめた記述から


【倍音列について】 
 ある音に対してその振動数の整数倍の振動数の音のことで、楽器の音や声でも倍音がいろんなパターンで含まれていて音色を特徴づけています(整数倍でないものも含めた基音より高い周波数成分を上音と言います。一番低い周波数成分(1倍音)は「基音」と言い、似た言葉の「根音」は、音程や和音のベースになる音を指します。)。倍音列の音程の振動数比は、(2のべき乗)対(それより大きい整数)というパターンになりますが(オクターブの1対2を除く)、振動数比4対5(5倍音)は長3度(例えばド↗ミ)、2対3(3倍音)は完全5度(例えばド↗ソ)のように、ドミソの和音はドの音の低次の整数倍音列の音でできており、基音であり根音でもあるドの音に内包されるような親和性があり強い響きを持っています。低次倍音ということは、その倍(オクターブ上)、さらに倍...と可聴域の範囲にいくつも倍音を聴けることを意味します。
【音程のcent(セント)値】
 cent(セント)とは、12平均律の半音の振動数比の対数を100とする条件で2音間の振動数比の対数をとったものです。オクターブは1200となります。フェヒナーの法則により、刺激量の対数は人間の感覚的な距離感とよく一致します。
【音程のcent値の計算方法】
 一般的な計算式とは異なるかもしれませんが結果は間違いありません。 12平均律の半音の振動数比は  2の12根=1.059463094359... logx(2の12乗根)=100となる時のlogの底をXとすると、X=(2の12乗根)の100分の1乗  X=1.000577789506.... Xを底とする対数をlogxとし、単にlogとした場合は底を10とします(電卓アプリの都合)。求めたい音程の振動数比をPとすると、cent値は次の式の右辺で求まります。  logx P=log P/log X 例えば完全5度は log(3÷2) ÷ log(1.000577789506)=701.95500....centとなります。