クラシック音楽館「ウィーンフィルニューイヤーコンサート2012」


 予告や番組表で見ずに、直前に内容を知り、こののクラシック音楽館(2020/7/5)を見ました。昨年末にお亡くなりになったマリス・ヤンソンスさん指揮によるニューイヤーコンサートです。当時リアルタイムでも見ていて記憶に残るコンサートでした。マリス・ヤンソンスさんによる2016年のニューイヤーコンサートよりも強く記憶に残っています。
 思いもよらずこの名演を見ることができたのは、新型コロナのために新しい演奏会ができなくなっているからということになります。各地の楽団を始めクラシック音楽の業界の皆さんが危機を乗り越えてくださることを祈るしかありません。

 今回の放送は、素晴らしいコンサートの再放送ですので、思わず鑑賞しました。

 まずは、トリッチ・トラッチ・ポルカ、鍛冶屋のポルカ、ピツィカート・ポルカ、うわごと、雷鳴と電光など馴染みのある曲が多く入っていて楽しめたことがあります。

 そして、挿入された映像の色彩に関するレビューはおそらくあまり無いと思いますので触れてみます。

 挿入される外の風景の映像は明るく、①ウィーン市庁舎やコーブルク宮殿の白い外観と青空の深いコバルトブルーによる鮮やかなビコロールであったり、②チロル地方のアーヘンゼーSL鉄道の車両の鮮やかな赤系の黄赤ときなり色によるビコロールと自然の緑や青空の美しい配色、③ワルツ「人生を楽しめ」(ベルヴェデーレ宮殿内)でのダンサーのオレンジ色の衣装と同系の黄赤系の床の色(慣用色名でローシェンナやバーントシェンナ)であったり(暖かみのある完璧なドミナントカラー)、④ポルカ「燃える恋」ではダンサーのやや赤みのあるベージュ(近い色は慣用色名でサーモンピンク)の衣装と同系で淡い色の床と壁によるパステル調のドミナントカラーの取りあわせ、途中で部屋を移って大きなスカーレットの額縁に入ったクリムトの「接吻」を背景に黄赤系の床との暖かみのあるドミナントカラーに近いトーン・オン・トーン配色(淡いパステル調の部屋と濃厚な暖色の部屋と衣装がどちらにもマッチし、その行き来による対比も素晴らしい)、⑤ワルツ「美しく青きドナウ」ではダンサーの青い(コバルトブルーの)衣装と白い床や壁との清らかなビコロール配色であったり(最初の建物と空の配色と同じ)、部屋を移って青の衣装と赤系の茶色の床とのトーン・イン・トーンによる落ち着いた配色になったり(アンリマティスの「ダンス」の色彩(裸で踊る人々の肌の黄赤と背景の青、緑)の逆パターンでダンサーの濃青の衣装に対し補色の橙の両隣近傍として赤系の床、黄赤系の色が混じる壁というスプリットコンプレメンタリー(分裂補色)的な配色にもなっていると思います)、とにかく色彩の演出も凝っていると感じ魅了されました。そして、明るい気分になり元気が出ました。
 おそらく、どういう色彩をテーマにするか計画するとともに、実演する部屋それぞれの色彩に合わせて衣装の色を緻密に練って決めたのではないかと想像します。ダンサーの衣装は複雑なデザインではなく、色は単色か白との2色またはカマイユに近いトーン・オン・トーンの2色というシンプルなもので、部屋の色彩との調和を考え、絵画のように構成したとしか思えません。
 

 選曲は、明るい曲調の聴きやすいものが多かったことや、ニューイヤー初登場のチャイコフスキー「眠りの森の美女」があったり、素晴らしかったです。
 2012年に見ていたので、「そうだった。そうだった。」と懐かしく思う場面もあり、もう8年も経ったのかという感慨や、マリス・ヤンソンスさんはお亡くなりになってしまわれたのかという寂しい気持ちであったり、いろんな思いになりました。

 トリッチ・トラッチ・ポルカと鍛冶屋のポルカはウィーン少年合唱団が入るバージョンでした。そして鍛冶屋のポルカではヤンソンスさんが金床をキンコンキンコン叩いていました。(そうだった。そうだった。)
 ピツィカート・ポルカの冒頭が普通と違い、バンと大きな音が鳴りました(終止でも)。中間でも打楽器が登場。Wikipedia(※1)にもありますが、打楽器も加わる原典版の演奏はニューイヤー史上初でした。そして、ヤンソンスさん、曲に入る前にずいぶん時間をとりハンカチで汗を拭っていました。(そうだった。そうだった。)
 ポルカ「燃える恋」では、ダンサーの映像の最初と最後がクリムトの絵画「接吻」と同じになるという凝った演出でした。(そうだった。そうだった。)
 「美しく青きドナウ」の映像は、若いカップルがベルヴェデーレ宮殿を訪れるところから始まり、女性の想像の中で、青い衣装のダンサーによるダンスに移り変わります。曲が終わりに近づくと女性は想像から醒めてカップルは宮殿を出ますが、女性が宮殿を振り返ると青い衣装のダンサーがふっと現れて消え、女性が微笑むという終わり。この少しカジュアルでドラマのような演出も印象的で好きでした。(そうだった。そうだった。)

 ニューイヤーの気分を思い出し、清々しい気持ちになり元気が出ました。改めて振り返ると選曲から演出までとても魅力的な素晴らしいコンサートでした。そしてマリス・ヤンソンスさんは、改めて素敵な指揮者だったと思いました。

 2012年に中継で見ていた当時は、幕間にスタジオで解説などがありましたが、オーボエ奏者の茂木大輔さんが、普通のオーボエとウィンナオーボエで「こうもり序曲」のソロの部分の吹き比べを披露されたことを思い出します。そして、憂いに満ちたメロディーとウィンナオーボエの繊細な音に聴き入ったことをついこの間のことのように思い出します。今回の放送では、幕間のスタジオは当然ありません。ピッタリ2時間で全曲収まっていました。


出典※1:「ピツィカート・ポルカ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/2/22 13:55 UTC 版)/


以下、BARKS(ジャパン・ミュージック・ネットワーク(株)運営)の記事「ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート、視聴率64%」2012.1.7 15:12 https://www.barks.jp/news/?id=1000076042より抜粋引用
現地の音楽評論家・山田亜希子によるレポートの文章からの抜粋、「2011年12月28日に行なわれた記者会見でヤンソンスは「新年の始まりに音楽の殿堂で、ウィーン・フィルという素晴らしいオーケストラが信じられないほど美しい音楽を演奏することは、この上ないポジティブなエネルギーの発信であり、世界へ希望をもたらします。私にとってシュトラウスの作品は娯楽音楽ではありません。ワルツは人生の中の出来事のようであり、音によるポエムです。どの曲もいろいろなことを連想させてくれます。これらを指揮するのはとても大きな喜びです」と語った。さらに「私は世界中の人々がこのコンサートを楽しめること、そして2006年よりも悪くないコンサートになることを願っています」とはにかみながらコメントした。演奏会はその言葉以上に運び大歓声が巻き起こった。」引用終わり

なかなか色彩は再現できません。




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