「新美の巨人たち『日比谷公園』」。NHK「旅するユーロ」シリーズ。


 こんにちは。さて、テレビ東京の「新美の巨人たち」についてなのですが、今年4月以降になり数回見ました。そして、7月4日は「日比谷公園」でした。2019年3月に永年親しんだ小林薫さんのナレーションによる「美の巨人たち」が終わってしまい、コンセプトも芸能人が作品について語る内容に変わり、ナレーションも馴染めず、内容が全く入って来ないため、耐えられず、すっかり見なくなっていたのです。
 最近になって毎回ナレーターが交替するようになったようで、コンセプトも以前のもの(作品にまつわる物語を中心に構成)に寄せているような印象もあり、昨年度より聞きやすく話も入ってくるようになったと思います(個人的感想です)。「開運なんでも鑑定団」と共通するものがあると思うのですが、それは銀河万丈さんのナレーションによる解説や鑑定士の解説の部分(作品、作者にまつわる物語)で、そこに惹かれる人は多いだろうと思います。
 今回のナレーションはシシド・カフカさんでした。NHKのドラマ「ハムラアキラ」は見ましたし、「鶴瓶の家族に乾杯」のカフカさんゲストの回を見ましたが、人柄がすごく気持ちのいい方という印象を持ち、すっかり好きになりました。NHKばかりになりますが、「旅するスペイン語」の2019年度後期(2020年度前期再放送)でも旅人としてアルゼンチンでのロケの内容が毎回放送され活躍されています。ご自身が関わりのあった国でもあり、旅人としては珍しく対象の言語(スペイン語)もかなり流暢で、それでもやはり「気持ちがいい」と感じました。最後のほうの回で、関わった方々へスペイン語で思いを語った際は、心が伝わってくるような話し方だと感じました。

 NHKの「旅するユーロ」のシリーズでは、語学の勉強としての要素がこのシリーズ以前よりかなり簡素化し、半分旅番組となりましたが、これはこれででとても楽しめます。ドイツ語もフランス語もイタリア語も見ています。
 記憶に残るのは、バイオリニストの古澤巌さんが旅人だった「旅するイタリア語」です。アマルフィ海岸の崖の上の家に一人で暮らすお婆さんを訪ね、確かワインをご馳走になって、そのお礼に、真っ青な美しい海の遠景をバックにエンニオ・モリコーネの「ニューシネマパラダイス」を演奏されました(録音されたピアノの伴奏を小さな機器で再生しながら)。古澤さん名物というか、短いチェロの弓での演奏です。お婆さんよりも案内人のマッテオさんのほうが演奏を聴きながら目に涙を浮かべ感極まった感じでした(後のまとめの回では、この後、涙が止まらなくなって困っているマッテオさんの様子も映りました。)。そして、演奏の終わりとともに無音のまま画面が白くフェードアウトし無音で「fin」が出て終わりました。語学番組なのにほろっときました。こんなことは初めてです。古澤巌さんも好きになりましたし、この番組のシリーズで忘れられない回になりました。もはや語学番組とは別物かもしれません。
 同じ年度の「旅するスペイン語」での旅人の狂言師・茂山逸平さんと案内人のジンさんとのコンビによる南スペインの旅も、二人の友情を感じてとても良かったです。さらに「旅するフランス語」は常盤貴子さんによる南フランスの旅で、訪れる場所が、ゴッホとかカミュとかジャン・コクトーなど芸術家に関わる土地への旅で楽しく見ることができました。この年はそれぞれ「南」への旅になっていたようです。その1期前の「旅するドイツ語」では別所哲也さんによる音楽の都ウィーンの旅で、ベートーベンの足跡に触れたりとてもとても楽しめました。このあたりの年は個人的には「当たり」だったと思います。語学番組というより「旅」のほうの意味です。

 さて、例によって話が脱線し放題で前置きがずいぶん長くなりました。日比谷公園ですが、私は東京の人ではなく行ったことはありません。昔若い頃、仕事で国立オリンピック記念青少年総合センターでの行事(全国の林業クラブの発表会)の発表者に同行した際(発表者とは直接関わりがなく、ほんとに同行しただけで、帰ってから発表会全体の内容を自分の所属に報告する仕事でした。ここまで書くと、わかる人には職種がわかります。)、代々木公園に足を踏み入れて、大都会の中にありながら周りのビルが見えない公園の大きさに驚いた記憶があります。
 日比谷公園は、また違う趣きなのだろうとは思いますが東京の都市公園のスケールの大きさではきっと同じではないでしょうか。設計者は本多静六です。日本の歴史に残る人物で「林学者」という肩書きで呼ばれる唯一の人ではないかと思います。前々回の身近な自然観察の回で少し触れた「明治神宮の森」の設計にも携わり、植生の遷移、天然更新に委ねることで自律的永続的に維持される多層構造の多様な樹種による森を企図された方です。そして、日本の「公園の父」と呼ばれる方です。
 今回「新美の巨人たち」の番組内容によれば、日比谷公園については、ドイツ留学で西洋の公園を見たことがある程度の「公園について素人」だった本多静六が、公園建設が決定したものの設計が決まらず悩んでいた辰野金吾に意見し、設計を頼まれたという経緯があったということです。コンセプトの一つは、3つの西洋的な楽しみの提供で、花卉園芸、野外音楽堂、洋食(文化サロン)でした。もう一つは、やはり100年、150年続く森です。総延長7キロの園路は都会にいることを忘れるような癒しの空間だろうと思います。クラシック音楽好きとしては、音楽堂というのは素敵だなと思います。
 カフカさんの声が聞けて、癒しの公園を感じることができ、本多静六の話も聞けて、改訂後の「新美の巨人たち」としては、個人的に満足の回でした。

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