戦線高校に通う竹中は男子高校生だ。朝、彼は自分のクラスである2年3組にチャイムがなる10分前に登校してきた。そして、自分の席に座ると、となりの席である。学友、三吉に挨拶を交わした。
「三吉、おはよう」
「おはよう、竹中」
挨拶を交わすと竹中は三吉が菓子を食べていることに気がついた。
「まさか、君はきのこ派か?」
竹中は三吉の食べている菓子がきのこの山を食べているため嗜好のものがそれかと疑問に思った。
「俺は、きのこ派だが。もしや君はたけのこ派か?」
三吉は当たり前のように答え、竹中に同じように質問した。
「当たり前だろたけのこ派に決まっている。現に今日だって」竹中は学校カバンに手を突っ込むと、たけのこの里を取り出し
「ほら、このように所持している」みよしにたけのこの里を三吉に見せた。
「君は、何も分かっていない。きのこの山こそ最高の菓子だ。チョコと、スティック上のクラッカーが絶妙のハーモニーをかもしているではないか。たけのこの里なんて、ただのチョコクッキーではないか。そんなものは市場にいくらでも出回っている」
三吉は竹中に皮肉げに言った。
「君の方こそ分かっていない。きのこの山はクラッカーにチョコをくっつけただけではないか。さらに、形が卑猥だ。そんなものを食べるなんて、人としてどうかしているぞ」
「形が卑猥だって?それは、君の頭が悶々としているだけではないか」
「なんだと!」
竹中と三吉はにらみ合った。そして、二人の後ろから声がした。
「クックックッ…。滑稽だな。」
三吉の後ろの席である、石田が嘲笑っていた。
「なにがだ」
竹中と三吉は同時に石田に向かい発した。
「貴様らの争いは滑稽だと言ったんだ」
「では君は何派だ!?」
竹中がそう言うと、石田は自身の机に手を入れ何かを取り出し
「俺は、これだ」と言って机の上に菓子を置いた。
「それは、ヤンヤンつけボーじゃないか」
三吉は、その菓子を知っていた。いやむしろ、それはきのこの山を凌駕するもののように感じていた。
「そうだ、ヤンヤンつけボーだよ。三吉どうやら君は知っているようだな。こいつは君の好きな、きのこの山を超えるものなんだよ」
竹中は、その存在を知らなかった。
だが、三吉の表情がこわばっているの見てこの菓子が三吉を恐怖させるほど恐ろしい菓子だと理解した。
そして、石田はヤンヤンつけボーの蓋を開けた。竹中がその中を覗くと驚きの表情を見せた。
「こっこれは…」そして、すぐに三吉の顔見るとその顔は青冷めていた。
その中身は、三つに仕切られた場所にスティック状のクラッカーとチョコクリームとカラフルな砂糖のようなものが入っていた。
「驚いたか竹中。これが、ヤンヤンつけボーだ。さらに」石田は、スティックを取り出し竹中に見せた。
「これには、豆知識が書いてあるんだよ」
竹中は、驚愕した。これはきのこの山を超越している。お腹を満たすだけではなく。頭も満たすというのか。
「三吉一つ食べてもいいんだぞ」
石田はスティックを三吉に差し出し、受け取るように促した。
「結構だ。おっ俺はきのこの山が好きなんでな」
三吉は、きのこの山を一つ取り出すと口に入れた。だが、その手は恐怖からなのか震えていた。
それを見ていたは石田は、三吉に近づき、
「一つもらうぞ」きのこの山を一つ取ると、チョコの部分を咥えて、チョコだけを床に吐き捨てた。
「なにをする」
三吉は席から立ち上がり、石田を睨みつけた。
「そう声を荒げるなよ。まあ見てな」
石田は、そのチョコの無くなったきのこの山のクラッカーにヤンヤンつけボーのチョコクリームをつけだした。
「どれくらいの量がいい?たっぷりつけてやるよ」
「なにをする気だ!?」
三吉は声を荒げて言った。そしてすぐさま石田は、チョコクリームを付けるのをやめ、強引に三吉の口に入れた。
「どうだ、うまいか~?」
石田は三吉に問いかけた。三吉は何とも言えない顔をしていた。それが、うまいからなのか屈辱からなのか目を半開きにしてピクピクさせていた。そして、数秒後に気絶した。
「鬼畜がー!」
竹中は石田に向かって叫んでいた。
「君も一つどうだ?」
石田は、ヤンヤンつけボーのスティックを取り出すと、チョコに付けて竹中に差し出した。
「俺は、そんなものに屈指はしない」
竹中は、石田が差し出したそれをはらい地面に落ちた。
「俺のヤンヤンつけボーがーッ!」
石田は竹中を睨んでいた。すると、
「クラッカーだとかクッキーだとかチョコだとかお前らの争いはレベルが低いな」
二人が声の主を見るとその男は長谷部だった。
長谷部はいつもロリポップ(棒付きアメ)を舐めている。二人は確信したこいつはロリポップ派だと。
「菓子で最強はこのロリポップよ。いろんな味が選べ、長時間幸せが続く。お前らのはもっても10秒もすれば口の中からは消える。レベルが低いお菓子なんだよッ!」
そういうと長谷部はエナメル鞄からロリポップが大量に刺さった箱を取り出した。
「どれでも好きなのを選びな!」
しかし、二人は動かない。なぜなら、興味が全くないからだ。
「いらないね、そんなガキが食べるモノ。それに、俺はアメは噛む派だ。」
石田は力強く長谷部に言った。
「そうかならしょうがない。喰らわせるまでよ」
長谷部は箱からロリポップを引き抜き封をとき強引に石田の口に突っ込んだ。
「どうだ、さっきお前が三吉にしたことだ。文句は言えんよな!だがこれでは終わらない。お前は言ったよな。“アメは噛む派”だと」
そういうと、長谷部はロリポップを石田の奥歯に入れ直し、
「さあ、存分に味わえ」
石田の顎に向かってアッパをくらわせた。
教室に鈍い音が鳴った。石田は、床に倒れ気絶した。二人目の犠牲者が出た。
「石田ー!」
竹中は叫ぶ。長谷部は石田を見下しドヤ顔。この戦争はここで終わったかのように思えた。しかし、新たな刺客がそれを見ていた。長谷部の横の席に座る、西園寺だった。
「君たち庶民の争いは醜いね。実に醜い。そして、暴力に訴え掛けるなどもってのほかだ」
西園寺はいわゆる金持ちの家系に生まれた。金持ちが出すお菓子はいったいどんなものなのか竹中と長谷部は興味を持った。
「なら西園寺、君は何派か?」
西園寺はニヤリと笑い、机の中から白い箱を取り出した。
竹中達はその白い箱を覗いた。西園寺はその箱を開けた。
竹中はその箱の中身を見て目を丸くした。その箱の中身はホールのショートケーキだった。
そしてすぐ、竹中は右腕を振り上げた。その手は西園寺の後頭部を掴み、
「ケーキでホールってもはや主食レベルだろうがッ!!!!」西園寺の顔をケーキにうずめた。
「ママーッ!!!」
西園寺はケーキに埋められ、叫びながら気絶した。
「これで俺とお前の二人だな」
長谷部は、壁にもたれながら竹中を横目に見て言った。二人をビリビリとした空気がまとった。
ピシャン。突然、教室のドアが開いた。それに驚き二人はドアの方を見た。
「おっはよー」
元気な声で挨拶する女子生徒、笹森由佳だった。
「あれー甘い匂いがするなー。クンクン」
笹森は、目を瞑り、鼻をヒクつかせながら竹中達の方にやってきた。
「西園寺くん、朝からケーキに顔を突っ込んで食べるなんて、さすが御曹司は庶民とは違うね。」
笹森は、西園寺の後頭部をちょんちょんとつついていた。
「あ~お菓子がいっぱいあるじゃん。食べていい?」
笹森は、ぐったり竹中に要求した。「ど、どうぞ」、竹中がどもりながら答えると笹森は手当たり次第にお菓子を貪った。
彼らは女子と話しをあまりしたことがないため、ただ笹森がお菓子を食べる姿を見るだけしかできなかった。
「ほいいあっあ。おあいあおう」、口いっぱいにお菓子を入れながら、笹森は竹中達に何かを言った。そして、手を振って友達の女子生徒の元へ行った。
立ち尽くす竹中達。この戦争は笹森の一人勝ちとなった。
3人の犠牲者を出しながら、最終的には「お菓子で争うことでもなかったなぁ」、と窓を見ながら竹中はつぶやいた。
お菓子戦争終結!