・もう一つは、市場の情報です。どういう商品がどんな値段で売られているかという情報が、一般の人にもどんどん取りやすくなっています。たとえば、不動産の価格です。これまでは、どんな土地がいくらで売り買いされているかという情報は、普通の人には全く取れませんでした。専門家だとわかっていて、その専門知識を生かして利益を出していたわけです。けれどもAIがビッグデータを収集・分析することで、誰にでも使えるようになってきています。
・法曹界はどうでしょうか。弁護士は、裁判記録など膨大な資料を読まなければいけません。人間ですから、忘れたり眠くなって理解が浅くなったりします。そこでいまは、機械で検索し、機械で読み取り、機械で要約までできるようになっています。
製造業では、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入することで、工場での作業を非常に効率化できます。人間の数を減らすことによって、製造コストが格段に下がります。たくさんの情報を集めることで、たとえばどの自動車がどこで売れているのか、その理由は何かがすぐにわかるので、生産計画などに効果的に応用できます。
・技術革新には、プロセス・イノベーションと、プロダクト(商品)イノベーションがあります。プロセス・イノベーションとは、新しい技術を利用して、従来の商品を安く作れるようにすること。プロダクト・イノベーションは、新しい技術を使って、全く違う商品を作ることです。たとえばスマートフォンは、それまでに存在した携帯電話とは全然違います。これまでなかった商品の製造を可能にする技術の下では、雇用が増えます。
プロセス・イノベーションは逆に、合理化によって雇用を減らすと言えます。
・我々が今後どうやってAIを使うのかと考えれば、新しい仕事が生まれて増えた雇用に対して、これまでと同じ仕事の仕方では対応できないということです。すなわち、新しい技術の恩恵を受けるには、学び直しと働き方改革が必要です。
<Q3 ナビゲーションシステムと深層学習(ディープラーニング)の活用>
・ナビゲーションシステムの良いところは、得られる情報量が増え、情報の非対称性が減少する点です。情報を持っている人と持っていない人がいるとき、持っている人たちはそれを利用することで市場力を持ち、儲けることができました。ナビゲーションシステムの登場によって、そうした優位性はなくなりました。
<日本人の働き方を未来型に>
<Q1 長時間労働はなぜ改善されないのか>
・日本は、1991年には年間2000時間でした。誇るべきではないトップです。それが次第に減ってきて、2000年には各国の平均と同じ1800時間程度になります。その後も減り続けて、2018年には1700時間を下回りました。
OECDの平均も、1750時間くらいまで減っています。アメリカも減ってはいますが、日本より長い1800時間弱程度です。
日本は長時間労働の国だと思っていたのに、このデータを見る限り、そうとは言えません。解釈には、いくつかの仮説が成り立ちます。
① 残業代の制度と必要性が変わった。
② 社会の構造が変わった。
③ 資本装備率が上がって、長く働かなくてすむようになった。
④ パートタイム労働者が増えたために、正規労働者を含む全体の平均が下った。
・つまり、正解は④です。日本の平均労働時間が短くなったのは、「パートタイム労働者が多くなったため、全体として平均が下ったにすぎない」というのが正しい説明です。一般的なサラリーマンの労働時間は減っていないし、OECD加盟国の中でトップレベルを維持し続けているのです。
・なぜ減らないのかという質問に対する答えを考えましょう。雇い主からみて、労働者にかかるコストは2種類あります。ひとつは給料です。1時間当たりいくらの給料を払うか。もうひとつは固定コストです。採用にかかるコスト、オフィスの机や椅子などの設備費用、退職金などです。
固定コストが高いほど、採用できる人数は少なくなります。おのずと、採用した労働者を長く働かせたほうが安上がりになります。日本の労働市場では、採用コストと退職コストが高いために、なるべく長く働かせたほうがいいのです。多くの人を雇って給料を払うよりも、少ない人数を長く働かせたほうが企業にとって経済的だという現実が、長時間労働の減らない原因の一つです。そして大企業ほど、採用コストと退職コストは高くなります。
・労働市場が柔軟になれば固定コストが下がり、より多くの人をより短い時間で働かせることが可能になります。高い時給を払うことも可能になります。働き方改革がなぜ失敗したかというと、固定コストを上げたためです。結果として平均の時給が下るので、労働時間の短縮にはつながりません。
<Q2 雇用システムや環境はなぜよくならないのか>
・新卒一括採用は、日本固有のシステムです。この制度は、労働者の交渉力を弱め、交渉力の弱い若者には、さらに損をさせる結果をもたらします。
・次に、一括採用の弊害を考えてみます。
① 労働市場の流動性を下げてしまう
② 若者の好奇心を薄れさせる
③ 転職が難しくなるため、スキルを取得する動機が薄れてしまう
④ 壁のない刑務所に閉じ込められてしまう
・もう一つ大きな弊害は、一括採用の網からこぼれると、アウトサイダーの市場に入ってしまう人が多くなることです。新卒の年に就職が上手くいかないと、非正規の労働者になりがちです。そうなると、正規労働者になることが難しい。これは個人の能力に関係しない問題で、社会全体の問題であり損害でもあります。
・この状態が変わらないのは、経団連に所属するような大企業と厚労省の人たちが、自分たちの経験とインセンティブを背景に作っているルールだからです。労働行政は交渉する人の考える「正義」「公正」だけではなく、制度全体のインセンティブと成長効果を踏まえて、ゼロベースから制度を作り直すべきです。
<Q3 なぜ女性管理職は生まれにくいのか>
・性差別は、日本だけの問題ではありません。社会で実績を上げる女性が増える前は、「女性エコノミスト」とか「女医」と言っていました。しかし私は、「男性エコノミストです」と名乗ったことは一度もありません。エコノミストの仕事に、男女の違いはないはずです。
アメリカでも、男女平等の実現は簡単なことではありません。
・当時はそれくらい、国務省にも極めてはっきりした男女差別が存在したのです。
1976年になっても、昇格やポストが不平等だとして、国務省の女性職員が訴訟を起こしています。今後はなくしますという約束で、ようやく和解が成立したのは、1990年のことでした。
<Q4 外国人は日本で働いて幸せなの?>
・外国人が日本に住みたいと思う理由は、観光客が日本に魅力を感じるのと同じ理由です。ひと言でいえば、日本人の意識の高さです。治安がいい。街がきれい。いろいろな点で便利。たとえば日本とニューヨークの地下鉄を比較すると、雲泥の差です。
・外国人が日本に住むことによって日本が得する点は2つあります。ひとつは労働力不足の解消です。介護や清掃、建設現場やコンビニなど、労働集約的で人手が足りない仕事をすることです。
役割のもうひとつは、多様性をもたらすことです。
・なぜ私みたいな外国人が、内閣や中央官庁の方々に意見を聞かれるかというと、外の目から見て、村社会の解毒剤という役割を果たすからです。これは、日本社会の知恵だと思います。
アメリカでは、外国からどう見られているか気にする人は少数です。
・外国人に働いてほしいけれども、住みつかれるのは困る、というのが現状です。いっそのこと期間限定の外国人労働者という位置づけはやめて、移民という資格を作るべきです。
・次の障壁は、所得と給料です。現状では、特に高いスキルを持つ外国人ほど、海外に比べて給料が低すぎるのです。たとえばAIの専門家です。
・給料の次は、税金の問題です。まず、日本の所得税は非常に高いのです。
・さらに日本の税制では、外国人が母国に帰っても10年間は相続税の支払い義務があります。日本で5年以上働いてから帰国して、10年以内に死んだ場合、その人の家族が日本に相続税を納めないといけないのです。
・もうひとつ、大きな障壁が人権問題です。特に外国人の技能実習生は、パスポートを取り上げられ、安い給料で長時間働かされるなど、人権の阻害が指摘されてきました。アメリカにも、不法移民などに関して問題があります。
<Q5 移民をどう受け入れたら明るい未来になるのか>
・アメリカのワシントンにある「CGDEV.ORG(世界開発センター)」という民間シンクタンクが、各国の移民制度を評価しています。評価の基準は3つあります。まず、受け入れの積極性。「来てください」とアピールしているかどうかです。次に、移民の同化。うまく溶け込める体制を整えているかどうか。3つ目は、さまざまな国際協定や条約や規定に、国として参加しているかどうかです。
この基準で各国の移民制度を比較評価すると、日本はかなり低いほうです。
・日本は、受け入れの積極性については問題ないと思います。永住権を取得する手続きは結構簡単です。ただし最近は、申請後9カ月から1年ほど時間がかかるようです。申請件数と審査体制のバランスが取れていないことが理由です。それでも世界の基準からすると取得しやすいので、来てほしいという姿勢には問題ないと思います。
社会に溶け込ませる体制は、前述したようにまだまだです。
・今後、移民や難民はますます増えると予想されます。環境と移民の関係を調査した結果、2050年までに世界で2億人が、新しく住む場所を探して移動すると言っています。これまでの倍の人数です。
<Q6 移民政策によってどんな社会になるのか>
・日本人労働者は減り続け、2030年までに約10%減少します。外国人労働者のシェアは増え続け、現在の約2%から約5%まで上昇します。しかし、労働者の総数が減少するのをカバーするには至りません。したがって、10年たっても労働力不足は解消されない、というのが結論です。
では、現在の日本人の職は、彼らに奪われてしまうのか。これも答えはノーです。奪われません。
・つまり、移民を排除さえすれば、自分がいい仕事に就けたり高い給料がもらえると考えるのは間違い。移民が入ってくるのは怖いと怯えるのも大きな間違いです。職を失わないためには、自分自身のスキル獲得以外に手段はないのです。
・では、社会政策として機能する雇用政策は何か。繰り返しになりますが、次の3点が有効だと考えます。
① 再教育とリカレント教育。新しい技術が使えるスキルを育てること。
② 労働市場の流動性を阻む法律習慣、慣行を外すこと。終身雇用や新卒一括採用のことです。
③ 福祉の罠に陥ることがないように、福祉の制度と税制を一緒に改革すること。
・政府が全国民に対して、最低限の生活を送るのに必要な現金を支給する「ユニバーサルベーシックインカム(最低所得保障)」について、いろいろと議論があります。私は賛成ですが、手厚い福祉に流れすぎると労働のインセンティブが失われ、社会によい結果をもたらしません。福祉を向上させるときは、同時に税制もゼロベースから再設計すべきだと思います。税制と社会保障がバッティングしないことがポイントです。
<Q7 移民政策と治安の問題>
・外国人が増えると治安が悪くなるという声を聞きますが、事実でしょうか。刑法犯と特別法犯(道路交通法、覚せい剤取締法、売春防止法などの違反者)を合わせた来日外国人犯罪の検挙件数は、2005年の4万7865件をピークに下がり続け、2012年以降は1万4000件~1万7000件で横ばいです。検挙人数も、2004年の2万1842人から減り続け、ここ数年は1万人前後で推移しています。
日本で起きている犯罪の97.5%は、日本人によるものです。
・もちろん犯罪の問題は軽視できませんし、治安のよさは日本の大きな長所です。しかし、犯罪が増えるから移民は認めませんという意見は、短絡的すぎると言えるでしょう。
<未来を豊かにする社会保障改革>
<Q1 国の財政再建のために必要なこととは?>
・14兆円にせよ36兆円にせよ、目を瞠るような経済成長がない限り、捻出するには選択肢は2つしかありません。歳出削減か、増税です。日本の法人税と所得税は他国に比べてかなり高いので、増税するなら消費税しかないでしょう。
・年金の支給と、医療費の自己負担が軽減される社会保険制度を、20年後まで維持し続けるには、財政を持続させることが肝心です。そのためには、研究開発費や教育費に国のお金をもっと使い、経済の生産性を上げなければなりません。さらにそのためには、借金を返し、PB(プライマリーバランス)を正す必要があるわけです。選択肢は、歳出削減か、消費税アップか。
どういうやり方がフェアか、最後に決めるのは国民です。税金を払いながら選挙権がない私の意見としては、大半は歳出削減がいいと思っています。
<Q2 年金がもらえるのか不安で仕方がない>
・したがって私の提案は、2041年までに基準退職年齢を76歳にすることです。3年ごとに2歳ずつ、段階的に引き上げていけば年金勘定が合います。
・しかも、日本の年金は決して贅沢なものではありません。年金歳出額の対GDP比を見ると、日本は高齢化が進んでいるかわりに、他国より実は低いです。打つ手はあるでしょうか。
<Q3 歳を取っても働かななければいけないのか>
・問題は、制度の改革です。どのくらいのペースで定年年齢を引き上げるべきか、ということです。2025年から、基準退職年齢が65歳になります。2031年に76歳にしましょうということなら、2020年から毎年1.83歳ずつ上げなければいけません。無理です。3年で1歳ずつだと、76歳になるのは2057年です。遅すぎます。3年で2歳ずつ上げれば2041年に76歳になるので、このペースがベストというのが私の結論です。
労働市場は、高齢者がいっそう働きやすいようにしなければいけません。年齢ではなく、成果と脳力で評価される市場を作らないといけないのです。
<Q4 医療制度はどうあるべきか>
・社会保障に関する私の提案をまとめると、次の通りです。
財政再建については、まず決断です。何割を増税で補い、何割を歳出カットで捻出するのか。
年金改革は、冷静、公正、持続性をもって行うこと。2040年までに退職年齢を76歳まで段階的に引き上げ、年金の支出額を抑えることです。
医療改革では4つあります。
第1に技術の選択です。安全性、有効性、経済性の基準で決めること
第2に公的医療歳出の対GDP比率の上限を設定すること。
第3には、健康保険制度の歪みを正すこと。IT、AIを活用して、現在の組織保険組合からマイ保険口座への移行を進めます。
第4は、医療審議会などいろいろな審議会を小さくし、多様化して、さらに情報開示を徹底すべきです。
<2030年の地方再生>
・国の将来に少子化が避けられない以上、都市への一極集中は地方の人口がさらに減っていくことを意味します。地方の再生は、人口を減らさず、産業を衰退させないためにも必須です。
<地方の農業を活性化するため>
・しかも、日本の農産品には充分競争力があります。なのに、チャンスを掴めずにいます。それは、6つの大きな理由があるからです。
チャンスを逃している理由①農地法が時代遅れ
チャンスを逃している理由②農業人口の減少と高齢化
チャンスを逃している理由③技術の普及が遅い
チャンスを逃している理由④農業資本が劣化している
チャンスを逃している理由⑤流通における農協の独占力
チャンスを逃している理由⑥農業と金融がごちゃ混ぜ
<ポスト・コロナの日本経済>
<コロナ後の日本経済はどうなる?>
・では回復の速さは、どれぐらいでしょうか。モルガン・スタンレーの正式予測(7月4日現在)では、日本のGDPがコロナ危機以前の水準に戻るのは2021年末です。
<世界経済が向かう先は?>
・世界経済の展望を正確に明らかにする要因は、新しい治療法や新薬、ワクチンの開発です。
・しかし専門家の見通しでは、ワクチンが開発されて世界中へ供給されるには、12から18カ月が必要だそうです。開発に成功しても医療従事者から分配すべきですから、一般に行き渡るにはかなり時間がかかるでしょう。
① 企業はレジリエンシー(復元力)が問われる
・人の移動や物流の制限によってグローバル化がストップし、世界は内向きになって「自国ファースト」が加速するのではいかという見方があります。マスクひとつとっても、ほとんど中国製だから、輸入が滞ると品薄になってしまう。こんなことが起こらないように、生産をどこまで国内に戻すべきでしょうか。
② インフレはやってくるか。
・インフレが再燃するという仮説があります。感染が収束すれば、政府の経済政策の効果も出て、民間の需要は徐々に戻ります。設備投資も、回復スピードの問題はあるにせよ、確実に戻っていきます。
・現時点ではインフレ気味になっていくという予測ですが、注視は必要です。
③ 脱化石燃料が加速する。
・原油価格は、この10年ほど乱高下しています。2020年4月には、1日だけですが、史上初のマイナス価格になりました。
・一方で再生エネルギーは、技術の進歩によって生産コストが大きく下がっています。投資額もさほど大きくないので、安定して高いリターンを得られるのです。原油はコロナによって需要が減ったため、なおさらです。よってコロナ後は、脱化石燃料がさらに加速します。
④ 労働と教育のインセンティブが強まる。
・コロナ前でも所得格差は大きくなっていましたが、コロナによって生活を直撃されたのは低所得層の人たちです。
・生活の基礎となる仕事に就いている人ほど、低賃金なのはおかしい、所得配分の是正をしなければいけないという意見が、この先の共通認識になるでしょう。そして賃金コストが上昇すると、より高いスキルが求められます。スキルを獲得すればさらに給料が上がるので、生涯教育のインセンティブが上がる、という望ましい流れになるでしょう。
⑤ 何でもデジタルの世界になる
・これは結論です。コロナは思いもよらない危機でした。各国の政府も企業も国民も、自分たちの弱点を知りました。役所の仕事の遅さに比べて民間の対応は速いので、新しい技術を利用して創意工夫ができます。
・コロナがもたらすのは、Digital Everything。何でもデジタルという世界です。もたらすと言うより、加速させると言うほうが正しいでしょう。世界のトレンドが変わったわけではありません。「社会にすでに存在した問題の解決を、加速させよ」というのが、コロナから課された宿題だと思います。
<日本の国力はまだまだ高く、科学をはじめとするさまざまな分野で、世界に貢献しています。>
・一方で日本はいま、さまざまな難問に直面しています。人口動態は芳しい状況にありませんし、制度的な疲労も、教育が抱える問題も、世界の技術進歩についていけないという問題もあります。米中の貿易摩擦や、コロナのような予測がつかない問題も重なってきます。
この本は、こうした問題を解決する糸口を見つけることが目的です。ただし、動かなければジリ貧です。一刻も早く、農業にしても医療の分野にしても、新しい技術をビジネスに変えていくことが必要です。その結果として生まれてくるお金で日本及び世界を支えることが、この本の究極の目的です。特に地球温暖化は、時間の猶予がありません。
『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ』
15歳から始める生き残るための社会学
響堂雪乃 白馬社 2017/3/3
<君たちはニホンという国ができて以来、最も過酷な時代を生きなくてはならないのだ>
<本書の特性とは反証が極めて困難な点にある>
・また201の概説全てが学術用語で括られているとおり、それらは筆者の臆見や私見ではなく、多くの碩学や研究者の思考によって濾された精度の高い仮説群である。
・「君たちが対峙する脅威とは、外国資本の傀儡と化した自国政府であり、生存権すら無効とする壮絶な搾取であり、永劫に収束することのない原発事故であり、正常な思考を奪う報道機関であり、人間性の一切を破壊する学校教育であり、貿易協定に偽装した植民地主義であり、戦争国家のもたらす全体主義である」
<読書しなければ人間になれない>
・このように読書によってのみ獲得できる分析や、批判や、内省や、洞察などの営為を「深い処理」と言います。
<繋がることよりも繋がらない価値>
・ラインやSNSで誰かと繋がっていることよりも、孤独の時間のほうがずっと大事なのです。
・このように一人作業の中で黙々と自身の内実を豊かにすることを「創造的孤独」と言います。
<ツイッターやフェイスブックは致命傷になる>
・マイナンバー制度が始まり、国民は番号によって管理されることになりました。
・このように生活の全般に浸透した情報機器によって、国民の言動を監視しようとする社会を「電子パノプティコン」と言います。
<政治や社会に関心のない馬鹿者のふりをする>
・このようにいったん自由な言論を奨励して、後から一斉に弾圧することを、毛沢東の政治になぞらえ、「百家争鳴」と言います。
<信じるのは自由だが、依存してはならない>
・今の時代のように社会が荒廃すると、人間は目に見えない力に救いを求めるようになります。だから占いや、霊媒や、宗教や、プラス思考が産業になるほど流行るのです。このように合理的に考えることを拒否し、神秘的なことに溺れてしまうことを「スピリチュアル・アディクション」と言います。
<ニホンの未来はアメリカの今であるという学説>
・これから何が起きるのかを予測することは難しくありません。ニホンはアメリカの(事実上の)保護領であるため、いずれ制度や法律がそれに規準(従って成立)したものになるのです。だからアメリカの今を観察すれば、やがてニホンでも貧困が蔓延し、医療が崩壊し、言論の自由が消え、国民が監視され、戦争がずっと続くだろうと予測できるのです。このようにアメリカで起こったことが後にニホンで起きるとする考えを「日本社会20年遅延説」と言います。
<必ず遭遇する「敵」を理解しておく>
・心理学者のマーサ・スタウトは人格障害者(人間性に大きな問題をもった人)が、だいたい25人に1人の割合で存在すると主張しています。
・このように社会の全域に生息する良心に欠けた者たちを「ソシオパス」と言います。
<意思の疎通ができないのは当たり前である理由>
・このように知識の格差によって現実の共有ができなくなることを「共約不可能性」と言います。
<知識の砂浜を歩く君の知識はコップ一杯程度>
・私たちは何かを知っているようで何も知りません。
・このように“自分の知らない事実が無限にある”という前提で世界と人間に向き合い、謙虚に思考を深めて行こうとする考え方を「無知の知」と言います。
<死ぬまで学び続けること>
・このように知識や情報は常に不完全なものであり、それを刷新するための学びに終わりのない様相を「オープンエンド」と言います。
<生命を授かると同時に残酷を授かった>
・このように自分の人生でありながら、時として自分以外の存在が自分の生を決定するにもかかわらず、それでも生きていかなくてはならないという本質的な人間の在り方を「被投性」と言います。
<悪意と暴力と矛盾の中で可能性を模索する>
・しかしそれでも私たちは逆境を克服し、それぞれの可能性を追及しなければなりません。このような世界の中においてすら自分を信じてより良く生きようとする決意を「投企」と言います。
<国会議員が作る法律は2割もない>
・このようにあたかも選挙に選ばれた者が法律を作っているかのようにみせかける場を「形式的な認証機関」と言います。
<法律は資本家によって作られる>
・国会に提出される法律の原案は、公務員が国内外の資本家と相談しながら作ったものです。
・このように資本家が国会を私物化し、都合のよい法律を作るという考え方を「政治の投資理論」と言います。
<言われたとおりに法律を作るとおカネがもらえる仕組み>
・このように政治がおカネ儲けの手段として私的に運営されているという捉え方を「公共選択理論」と言います。
<政治家はゾンビであるという意味>
・政治家の仕事は資本家からおカネをもらって法律を作ることです。だから国民のことを考えたり心配する人は政治家になれないのです。また内閣の約半分は世襲議員といって、お爺さんやお父さんから仕事を受け継ぎ、楽をして政治家になった人たちばかりです。このように口では立派なことを言いながら、他人の痛みや気持ちが実感として分からない者を「哲学的ゾンビ」と言います。
<なぜニホン人のためではなく、外国人のために法律を作るのか>
・2001年に総理大臣に就任した小泉純一郎は、外国資本の企業が政治家に献金してはけないという法律を廃止しました。
・それ以来、外国人の利益を図ることが政治家にとって最も儲かる仕事になりました。このように自国の資産や企業を外国に売り飛ばす人々を「買弁」と言います。
<総理大臣はコンビニの店長のようなもの>
・現実として政治資金報告書には、それを証明するおカネの流れが記されているのです。このように権力の後ろにさらに大きな権力があり、それが本当の権力である様子を「王の背後には王より偉大な何かが存在する」と言います。
<国会議員に世の中を動かす力などない>
・いろいろな出来事を注意深く観察すると、ニホンの社会で権力を握っているのは選挙で選ばれた議員たちではなく、外国資本と公務員とマスコミであることがわかります。繰り返しますが国会議員によって作られる法律など、せいぜい全体の2割程度にすぎないのです。このように内政や外交や経済など最も重要なことを動かす三者を「鼎談」と言います。
<野党でないのに野党のふりをする人々>
・このように野党でないのに野党を偽装して国民を騙す集団を「衛星政党」と言います。
<政党の役割とは政治が存在すると錯覚をさせること>
・ニホンには与党(政権をもっている政党)も野党(政権を攻撃する政党)もありません。
・このように国民が政治的な選択肢を持たない状態を「パラ・ポリティクス」と言います。
<アメリカでもニホンでも資本が国家を操る>
・このように資本と政治が癒着し国民無視の政治を進める体制を「コーポラティズム」と言います。
<議会も政治も国家も無いということ>
・作家の矢部宏治さんの調査により、ニホンの重要な法律は日米合同委員会で決定されることがわかりました。この会合は毎月ニュー山王ホテルで開催され、アメリカ側からは在日米軍の幹部、そして日本側からは官庁の局長などが出席します。そしてそこでアメリカ側から法案化すべきこと、改正すべきことが下されるというのです。このように極めて少数の者たちが勝手に国を運営することを「寡頭制」と言います。
<聖書の時代から変わらない仕組みがある>
・このように家畜を飼うように国民を支配しようとする考えを「パストラル」と言います。
<洗脳は生涯途切れない>
・学校に代わって企業とマスコミが私たちに規範を叩き込み、そうやって私たちはパストラル(司牧的統治)の中で「作られる」のです。このように連続的な洗脳を経て、最終的に家畜のような人間になることを「馴致」と言います。
<そもそも考える教育を受けていない>
・このように新聞テレビや政府の広報に頼らなければ、物事の意味が何も分からない状況を「イナーシア」と言います。
<生まれてから死ぬまで刷り込まれること>
・原発事故の被害が拡大し、放射線が原因とみられる多くの病気が報告され、そして自由貿易協定によって国民の主権が脅かされています。しかしなぜ大人は問題を共有して、議論を交わしたり、国に抗議したりしないのでしょうか? それは子供の頃から、自分の頭で考えないこと、言われたことだけを実行することが脳に刷り込まれているからです。このように社会全体が校則に従う子供のように振る舞うことを「学校化」と言います。
<企業が政府になる>
・東京、名古屋、大阪、福岡などの都市が「経済特区」になり、これまで労働者を守ってきた法律が廃止される見込みとなりました。つまり「経済特区構想」とはニホン全体を租界のように作り変えることなのです。このように自国の政府ではなく、外国の企業や金融機関などに統治を委ねようとする考えを「スープラナショナリズム」と言います。
<食料の自給が止まる>
・二国間協議が決定されると、アメリカ産の安い農産物や肉が入ってきます。
・実際にアメリカと貿易協定を結んだメキシコなどでは、農民の約60%が失業し、国内で安い食料を作ることができなくなりました。このように自国の経済を発展させるため、他国の市場を侵略しようとする考え方を「帝国主義」と言います。